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先生が「教えない」ほうが学力は伸びる

奈良市立一条高校 藤原和博校長×都立両国高校 山本崇雄教諭(1)

2016年9月26日(月)

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藤原:僕はリクルートで20代のときに営業に配属されて、まず営業とプレゼン技術を磨きました。おそらく1万時間以上やったかな。27歳から37歳までマネジメントをやり、リクルート流のプレゼン術とマネジメントをマスターして、40歳で会社を辞めました。

 そんな中で47歳のときにチャンスが与えられ、東京都で義務教育初の民間校長をやった。その中で感じたのは、地域社会を学校教育にもっと入れていかないと義務教育は持たないということ。もう先生たちだけでやれる時代じゃない、と。

 もう1つ、アクティブ・ラーニングの原型である「よのなか科」を広めることもやってきました。この授業を受けた大人はみんな「こんな授業が自分の時代にもあったら、人生が変わっていた」と言います。広めるのには障害がいっぱいありました。結局、受験にどれほど効くのか、という尺度で見られ、そこが越えられない壁だった。

 でも実践を続けるしかないから、本命の高校で「よのなか科」をやりたいと思った。それで探していたら、奈良の一条高校の話が来たんです。様子を見せてもらったら、生徒たちが本当に素直で、あいさつも非常に自然で、ものすごく人柄がいい。先生たちも熱心な先生が多かったので、もしかしたらここでならできるかなと思ったんです。

 実際に「よのなか科」の授業を始めるまではいろいろ大変でしたが、今朝の授業にも情報の先生、国語の先生が見に来てくれましたよ。

一条高校の「よのなか科」とは

 一条高校で行っている「よのなか科」は、月2回ほど。土曜日の朝8時~9時半までの授業で、生徒と保護者らが教室に混ざって座り、課題について議論しながら授業を進める形式で行われる。保護者は自分の子供のそばには座らないのが原則。
 この日のテーマは「政治を考える」。藤原氏が基本的な授業の進め方と議論の仕方について解説するウォーミングアップをした後、高校2年生と3年生の男子生徒3人が前に立って先生役となり、授業を進めていった。
 「議員に求める条件」などテーマごとに生徒と保護者らによる数人のグループ内で意見を出し合う。
 その後、参加者は口頭のほか、スマートフォンを使って意見を発表する。スマホに打ち込んだ意見やアンケートの回答は、その場でプロジェクターで投影し、共有しながら議論を進めていく。

 山本さんは、実際に生徒たちの間に座って藤原さんの授業を受けられましたが、どんな感想をお持ちになりましたか。

山本:いや、僕がうれしかったのは、生徒目線になれたことです。これはすごく大事だと思います。

山本崇雄(やまもと・たかお)氏
1970年東京都生まれ。1994年より東京の公立中学校で英語教師として教壇に立つ。2006年東京都立両国高等学校に赴任。同年新設された附属中学校で英語を教え、現在に至る。検定教科書『New Crown English Series』(三省堂)編集委員。

藤原:一番前に座ってましたよね(笑)。

山本:一緒に議論した子たちはいい子たちで、とてもよかったです。正直、最初は授業のスピードに付いていけなかったですが。

 自分が生徒の立場になることにだんだん慣れてきてからは、相当意地悪なことを生徒に聞いてみたんですけれども、あの子たちはちゃんと自分の言葉で返してくれました。僕も自分の授業でやってみたくなりました。

生徒に題材を与えた後は「放して」しまいます

藤原:英語のコマ数が週に数コマあったとしたら、どれくらいの授業を「教えない授業」でやっているんですか。全部じゃないですよね。

「教えない授業」とは

山本氏が都立両国高校3年の英語の授業で実践している、生徒が主体になって学ぶ授業。例えば、生徒がペアになって発音の練習をしたり、分からないことを教え合ったりする。生徒のペアは、フォークダンスでペアを変えていくように順番に変えていく。学年の最後には、生徒が先生役になって授業内容を考え、実際に授業を行う。

山本:基本は学び方を教えるトレーニングの時間と、生徒を放っておく時間というのは明確に分けています。学び方、特にトレーニングの方法は徹底的に教えなきゃいけません。分からない単語や文法が出てきたり、文章の意味が分からなかったりしたときに、どうしたらいいのかについては中1から徹底的に学ばせています。

 そうすると、あるときから生徒が僕に質問しなくなってくる。そうしたら教師は生徒に題材を与えるだけで後は「放して」しまいます。教師が教えなくても、生徒たちが自分たちで学ぶようになるんです。

コメント6件コメント/レビュー

「何も教えなかったら学力は下がるだろうと思う。」なんて、
藤原さんもやっぱり20世紀の常識から離れられないのだなあと
読んでいて、不遜にも微笑ましく思ってしまいました。
同時に、事実(同僚の実践)をご存知の山本先生にはそこを指摘して頂きたかった。
そうすれば「よのなか」の前提(ルール)が変わったことをもっと多くの方に
気付いてもらえる記事になったと思うので。
期待いたしておる分、藤原さんには他の方のエビデンスにも目を向けて頂き、
奈良市立一条高校の生徒さんや地域の方の幸せな未来を実現してもらい、
そこから日本全国に幸せが広がることを、一教員として願っています。(2016/10/24 21:11)

「AI時代に「勝ち残る子」を育てる」のバックナンバー

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「先生が「教えない」ほうが学力は伸びる」の著者

藤原 和博

藤原 和博(ふじはら・かずひろ)

教育改革実践家

リクルートの敏腕営業担当から、都内で初めての民間出身の公立中学校の校長に転じた。斬新な手法で地域を挙げての教育体制を整え、校長退職後は全国にその手法を伝えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「何も教えなかったら学力は下がるだろうと思う。」なんて、
藤原さんもやっぱり20世紀の常識から離れられないのだなあと
読んでいて、不遜にも微笑ましく思ってしまいました。
同時に、事実(同僚の実践)をご存知の山本先生にはそこを指摘して頂きたかった。
そうすれば「よのなか」の前提(ルール)が変わったことをもっと多くの方に
気付いてもらえる記事になったと思うので。
期待いたしておる分、藤原さんには他の方のエビデンスにも目を向けて頂き、
奈良市立一条高校の生徒さんや地域の方の幸せな未来を実現してもらい、
そこから日本全国に幸せが広がることを、一教員として願っています。(2016/10/24 21:11)

> 現在の日本社会では,自分の意見を主張したり,正義を語ったり,不都合なことを指摘しようとしたりすると,除け者扱いされるような環境がありませんか.そのような環境を変えないままで,若者を都合よくカッコよく教育して,実は多くのことが許されない(制限された)社会に放り込んだら,それでお仕舞いということにならなければ良いと思います.

そのような社会を作っているのは、我々大人です。
我々大人も、変わるべきです。(2016/10/11 19:27)

事務作業や会計などは人間に変わりAIがやる時代はくると思う。人生を勝ち負けだけで考えるなら「勝ち残れる人」にならないと「負ける」人が増え続けるだけ。自分達の学生時代からこんな授業だったら良かったのになぁー…(2016/10/03 08:47)

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