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AIは特定分野の強みがないと生き残れない、ディープラーニングで医療・介護、製造、HRを攻めるーーエクサウィザーズ新社長・石山洸氏

2017.10.12市嶋 洋平

リクルートホールディングスのAI研究所を立ち上げた石山洸氏が人工知能(AI)による介護に取り組むベンチャー、デジタルセンセーションに転じたのは今春。それもつかの間、AIスタートアップのエクサインテリジェンスとの経営統合を発表し、10月1日付で新会社エクサウィザーズの代表取締役社長に就任した。AIベンチャーとスタートアップの経営統合の狙いはどこにあるのか、日本は米中のAI企業に勝ち目はあるのか聞いた。

 統合のシナジー効果を生かした新事業は考えているのか。

 もちろんだ。自分がリクルート出身であることから、人材や人事分野の「HR Tech」の案件をデジタルセンセーションでも受けていた経緯がある。また、エクサインテリジェンスにも内外のHR Techの分野に明るい人材が集まり始めていた。

できる人材の発見だけでは限界

 そこで新事業として、それぞれの人材の特徴をディープラーニングで分析して改善策をコーチングし、組織としての能力を底上げすることを考えている。これまでのHR Techでは、活躍している「ハイパフォーマー」の人材との比較で同様なプロフィルを持つ優秀な人材を見いだしたり、採用したりするというのが多かった。一方であまり成績が伸びない「ローパフォーマー」をどうするかというアプローチはあまりない。ローパフォーマーは相関からそれが数字として出てしまい、採用などで対象外にされてしまう。

 それでは人材の有効活用に限界があると思っている。そこでデジタルセンセーションの介護分野で磨いたAIコーチングのノウハウを活用することにした。活躍しない可能性が高いとされたローパフォーマーでも、適切にコーチングすればハイパフォーマーの能力に近づけていくというアプローチである。介護ではユマニチュードの手法を獲得するために映像利用のAIコーチングを活用しているが、それをHR Techに拡大し始めている。

 ユマニチュードは相手に対する見つめ方や話し方、手の触れ方や立ち方、その後の先導の仕方などについて、どのようにすれば介護される認知症などの方に受け入れられるのかを体系化したものだ。それに基づいて担当者が適切にケアすることで、反応が得られるようになるもので、AIを活用したコーチングを一部の病院や施設で実験的に運用し始めている。

 具体的にはどのように実装していくのか。

 ユマニチュード向けに構築した、映像を活用したAIコーチングのシステムを利用する。まず、ハイパフォーマーの接客や営業の場面の映像を撮影し、ディープラーニングなどでどのような特徴があるのかをデータで把握する。次にハイパフォーマーにお願いをして、何を考えてどのような動作をしたのかを教えてもらったり、ローパフォーマーの動きを見て何が問題かをデータとして入力してもらったりして学習をしていく。

 このようなアプローチで、ハイパフォーマーとローパフォーマーの差をAIで判定できるようにして、その結果を基にPDCAサイクルを回して改善していく。仮にハイパフォーマーが5割の確率で契約をとってこられるケースで、そうでない人材が2割だとする。この2割を3割や4割に引き上げることができれば業績の底上げにつながる。

 どの分野がターゲットか。

 営業だけでなく、製造現場、キャビンアテンダントやアナウンサーといった分野での活用も想定している。現在、3社で検証を始めたところだ。

 例えば、今後製造現場がAI化されていく。そうなると、AI同士が連携した巨大なシステムとなり、その製造現場が止まった際の復旧はコンピュータサイエンスのデバッグのようなものとなる。工場によっては1分の停止が1億円もの損失につながる場合もあり、早期復旧をAIで支援するだけでなく、AIコーチングによる人材の育成で対応できるようにしたい。

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