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「機械学習のデータはそもそも企業内にない、地道に整える企業が優位に立てる」、AI活用人材育成のキカガク吉崎社長

2017.10.20橋本 史郎=ライター

「我が社でもAIの活用を検討せよ」との経営者や上司の指示を受けて、身動きがとれなくなっている現場担当者も少なくない。経営者はどのように方針を決め、現場はどのようなスキルを持って準備すればいいのか。AIを実装する手法である機械学習やその応用である深層学習(ディープラーニング)のビジネス活用を支援しているスタートアップ、キカガク(東京都豊島区)の吉崎亮介代表取締役社長に、機械学習をビジネスで活用し、成果を出すために必要なことは何かを聞いた。

一般企業が機械学習やディープラーニングの活用に乗り出そうとした時、まずは何を準備すればいいのか。

 経営者と一番初めにすり合わせするのは、「結局御社は何をしたいのか」というゴール設定だ。

 AIという言葉が一人歩きして、何をしたいのかの「何」をAIが決めてくれると勘違いしている人も多い。まず目的を明確にすることが大切だ。次に考える必要があるのが費用対効果だ。例えば、事務作業を効率化したいといってAIの導入を検討したとしても、開発費用に1000万円、2000万円かけて費用対効果が出るとは考えづらい。ゴール設定と費用対効果。この二つをまず初めに経営者とはすり合わせすることになる。すると、10社のうち9社くらいは、「やらない方がいいですね」と言って帰って来ることになる。

キカガクの吉崎亮介代表取締役社長

 ゴールが明確になり、費用対効果も出るとなって、次はその企業の現場とのすり合わせとなる。AIの具体的な活用手法である機械学習では、「学習」のフェーズがあり、実現したいことに関連したデータをシステムに与える必要がある。例えば顔の写真判定でもこの写真は誰々という情報を入れて数百枚、数千枚のデータを投入して初めて判定できるようになる。初めからデータが揃っている会社はほとんどない。

データの指標化ができているか

 そうしたデータを集めるにしても、指標を定めることが重要だ。

 例えば人材系の会社で、求職者と会社とのマッチングがうまくいっているかどうかの判断をAIにやらせたいとしよう。この場合、どのようなマッチングであれば100点満点中何点だったかの「スコア計測」が必要になる。それには指標化が必要でそれができているかどうかを何度も確認することが少なくない。

 さらにそのデータが「フォーマット化」できているかどうかも重要なポイントだ。表計算ソフトのExcelを利用するのが一般的だが、各カラムに項目ごとのデータがきちんと入っているのが大前提。それで初めて解析ができるようになる。複数のExcelに異なるカラムが設定されていたり、数値の単位が異なっていたりといたりすると、まずはそこの整備から必要だ。

機械学習に使うデータがないという場合、どうすればいいのか。

 それは大きな問題ではない。企業内ですぐに活用できるようなデータは基本的にないもので、集めてくるものだと考えてほしい。

データは集めてくるもの

 機械学習を利用しよう、既に適切に活用しているという企業は実はそこに結構なお金をかけている。ウェブから自由に集めたり、必要なデータを買ったりできる。機械学習は人間の作業を模倣するものなので、社内の職人的な技術を持つプロフェッショナルの作業のデータに対して、どのような考えでその動作をしているのかラベルづけをしてあげるというケースも多い。こうした地道な取り組みがあるかないかが業界での優位性を左右するだろう。

 やはり技術があってもいいデータがなければ、高い精度などのいい結果は得られない。いいコックがいてもいい材料がなければ美味しい料理ができないのと一緒だ。使えるデータを持っている会社はそれほど多くない。今はデータを作ったり、指標を作ったりといった機械学習をする前の下準備をしている会社が多いという状況だ。

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