今月のビジュアライゼーション

今年の黄色はかわいい? 5900万件のアプリ行動データから読み解く流行色

2017.12.01後藤 亮介=VASILY

ビジュアライゼーション

ファッション分野でのデータ活用が進んでいる。インターネット経由で服を購入する人は年々増加しており、そうした購買者のデータが得られるからだ。最近は、ファッションに関するSNSの投稿やECサイトの購買データからファッショントレンドの予測をするという、ディープラーニング(深層学習)の応用研究も散見されるようになってきた。

 筆者は「IQON(アイコン)」という女性向けファッションアプリから利用者の行動を分析している。同アプリの特徴は、複数のECサイトで掲載される商品を横串で閲覧できることだ。ユーザーは約7200ブランド、約190万点の商品数に上るファッションアイテムの情報を見たり、アイテムを組み合わせてコーディネート画像を作成したりして楽しんでいる。IQONアプリから得られる行動ログの分析がどのような知見を与えてくれるのか、一例を紹介したい。

 IQONユーザーは、あるコーディネート画像が気に入れば「LIKE(お気に入り)」ボタンを押す。このLIKEの数5900万件から人気度が分かる。今回、ファッションにおける基本的な要素である「色」に着目して10の色について分析した。色と利用者の年齢、さらには時系列を軸にデータを見ていくと、年齢による好みの変化や、年ごとの流行色が存在するらしいと分かる。

30代後半から急に伸びるグレー

 図1はLIKEしたアイテムの色の割合をおおよそ3~4歳ごとに区切って示したものである。アイテムとはシャツやスカートなどを指し、いくつかの商品で構成するコーディネートの中でメインのものになる。どの年代でもLIKEされる色の上位3色はホワイト、グレー、ブラックで、全体の65〜70%を占める。この3色はファッションにおいて、基本的な色であるといえそうだ。

図1 年代別の好みの色。どの年代でも上位3色はホワイト、グレー、ブラックだ。ただし年齢が上がると、一番人気のホワイトの割合が減少し、グレーの割合が増えていく。30代後半からは順位が逆転し、グレーがもっとも多くのLIKEを集める色となる

 年齢が上がると、一番人気のホワイトの割合が減少し、グレーの割合が増えていくことが分かる。30代後半からは順位が逆転し、グレーがもっとも多くのLIKEを集める色となる。年代によって色の好みが異なるという一見当たり前に思える感覚を、データを使ってあらためて定量的に見ることができるだろう。

 図2は、LIKEされたアイテムの色の割合を月別に示したもの。色によって縦軸のスケールは異なるが、ここでは相対的な変化に注目していただきたい。大きく2つの傾向が見られる。

図2 月別でLIKEされた色。ホワイト、ブラック、イエロー、パープル、レッドなどの色は季節と結び付いて周期的に動く。一方、ピンク、ブルー、オレンジはそのような周期はなく、緩やかに割合が変化する。割合が高まる「大きな波」が流行色といえそうだ

 まず人々が「いい」と思う時期が周期的に訪れる色があることだ。グラフが波打っているので目立つ(ホワイト、ブラック、イエロー、パープル、レッドなど)。1年おきに波が来るため、季節の影響を受ける色らしい。暖かい時期にはホワイト、イエローなどの色、寒い時期にはグレー、ブラック、レッドなどの色の割合が増える。

 一方、時間がたつにつれ、割合が増加したり減少したりする色がある(ピンク、ブルー、オレンジなど)。1年以上長い期間にわたる大きな周期のトレンドを表しているといえるだろう。この大きな波が流行色だといえるかもしれない。

似たような黄色でも「今年の黄色」

 1つの色も細かく見ると大きな発見がある。図3は、図2でイエローとして扱ったデータをより細かいカラーコードで分けたものだ。3つのイエローは周期的な傾向を示すのに対し、1つだけ今年になって伸びてきた色が確認できる(一番上の山吹色に近い色)。流行に感度の高い知人女性に聞いたところ、確かにこの色は「今年の黄色」だとのこと。皆さんの周りでもこのような黄色は見られるだろうか。

図3 図2でイエローとして扱ったデータをより細かいカラーコードで分けたLIKEの割合。一番上の山吹色のような色だけが今年になって伸長したことが浮き彫りに

 ユーザーの目を通してLIKEされた色は、いわゆるトップデザイナーから始まるトップダウン式の流行というよりは、むしろ消費者から生まれるボトムアップ式の流行に近いものなのかもしれない。

 また、色のトレンドは、服だけでなくスマートフォンや財布など持ち物にも現れる可能性が高い。意外にも電化製品などファッションと離れた分野のカラーバリエーションの選択にも影響している可能性もある。今回得られた色のトレンドと、ファッション以外の製品の購買記録を組み合わせて分析すると思いもよらぬ面白い発見があるかもしれない。

 ファッションアイテムは色以外にも、形、サイズ、素材、ブランド、価格など様々な形式のデータを含む。これらのデータをユーザーの行動ログと組み合わせて分析することでより豊かな知見が得られる可能性を秘めている。

【調査概要】  ファッションアプリ「IQON」の主なユーザーはおしゃれに敏感な20代前半~30代後半の女性。ここではアイテムに対して付けられるLIKEを利用した。LIKEを付けるとコーディネート作成の際の参照や、セール情報の配信などの機能が使えるため活用するユーザーは多い。調査は2013年1月~17年9月までの5900万件のLIKEを抽出。10色について調べた。

後藤亮介 | Ryosuke GOTO
VASILYデータサイエンティストとしてファッションに関する機械学習システムの実装やデータ分析に従事

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