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金沢の回転寿司が愛される理由 最新機器、食べ放題、サイドメニューでは勝負しません!

文:カンパネラ編集部 / 写真:山岸 政仁 08.31.2017

東京―金沢間を最短2時間28分で結ぶ北陸新幹線の開通で、石川県金沢市は東京から日帰りが十分可能になった。首都圏と金沢が近くなったと感じるのは、そうした時間の問題だけではない。カレーの「ゴーゴーカレー」や「チャンカレ」、ラーメンの「神仙」などの地場チェーンの進出が急速に進んでいる。しかし、やはり金沢でチェーンと言えば“日本一”の回転寿司だろう。話題の金沢回転寿司の魅力に迫る(上写真は金沢の台所「近江町市場」)。

富士経済の調査によると、景気回復を受けてファストフード市場は2016年が前年比3.5%増えており、17年も同2.5%増と拡大を見込む。

その牽引役となっているのが回転寿司だ。国内市場規模は10年から16年までに約30%も拡大した。全国チェーンが幅を利かす業界で、今注目を浴びているのが石川県金沢市の回転寿司という。

金沢が“回転寿司日本一”の理由

実は金沢市は周辺自治体と合わせると50軒以上がひしめく“回転寿司激戦区”。人口に対する店数(集積度)では日本一だ。石川県の寿司(外食)への年間支出も1人当たり約2万円と全国平均の1万4000円を大きく上回り、全国トップ3に名を連ねる(総務省「家計調査2016年」による)。

地元の金沢港をはじめ、七尾港、隣県・富山の氷見港など良港を擁す金沢の寿司がおいしいのはもちろんだが、金沢周辺に回転寿司が飛躍的に普及した背景には、市内に本社を置く石野製作所の存在がある。同社は回転寿司コンベア機のトップメーカー。回転寿司店でよく見られる「自動給茶装置付き寿司コンベア」の開発などで知られ、業界シェアは60%に上る。

北陸3県を中心に発行するタウン情報誌「Clubism(クラビズム)」の編集長・丹羽麻理さんは、金沢独特の回転寿司事情をこう語る。

「数が多いからこそ、それぞれのお店が内装やメニュー、価格などで違いを出そうと常にしのぎを削っています。結果として個性的なお店が多くなり、次々と新しいメニューを工夫して進化し続けている。一方、金沢の人にとって回転寿司は手軽なファストフード。1000円前後のランチメニューがあるので、週2、週3の頻度で通っているビジネスパーソンもいます。自宅や会社の近くに行きつけのお店を持っている人も多く、ローカルだけに職人さんと顔なじみになるなんてこともしばしばです」

なぜ、全国チェーンが少ないのか

金沢周辺の回転寿司店は大半が地元チェーンか個人経営で、全国チェーンは数えるほどしかない。2013年に東京の人気チェーン「すしざんまい」が鳴り物入りで出店したが、3年と経たずに撤退したのは記憶に新しい。丹羽さんは、「地場の回転寿司店はあくまで寿司そのものの味や値段で勝負しています。食べる側も寿司への思い入れが強い。これに対し、最新機器で楽しませたりラーメンやうどんが置いてあったりする全国チェーンは、良い悪いは別にして、金沢っ子には“やはり、地元の回転寿司とは別物”という認識ではないでしょうか」と推測する。

近年は金沢で“御三家”と称される大手の「金沢まいもん寿司」や「もりもり寿し」が首都圏、名古屋圏、関西圏に進出して着々とファンを増やしており、今や金沢ブランドの回転寿司は全国区の人気を確立しつつある。人気の秘密を探るべく、夏休みで賑わう金沢を訪れた。向かった先は、前述の2社に「すし食いねぇ!」を加えた御三家に肉薄する地場の2つのチェーン店だ。

1日1000人が訪れる駅ナカ人気店

「駅ナカの回転寿司」として、10年以上前から旅行客や出張客の絶大なる支持を集めてきたのが「廻る富山湾 すし玉」金沢駅店。駅ビル「金沢百番街あんと」の2階に位置する店舗は、11時の開店から21時30分の閉店まで客足が途切れることがない。平均来店客数は平日で400人、土日祝日や繁忙期にはゆうに1000人を超える。

駅ナカの「廻る富山湾 すし玉」は旅行客や出張客に人気が高く、行列ができることもしばしば

すし玉の経営母体は創業70年を迎えた市内の老舗寿司店「金澤玉寿司」。玉寿司秘伝の合わせ酢や玉寿司と同じ醬油を使っており、「駅ナカなのでスピード感は大切ですが、一方で高級寿司店と変わらないクオリティ、接客を心がけています」(金沢駅店副店長・二宮裕幸さん)という。カウンターの中で寿司を握るのは、玉寿司で修業したキャリア10年以上のベテラン寿司職人。寿司ダネとなる地元の魚介類や寿司そのものにも精通しているとあって、リピーターの中には彼らとの会話を楽しみに立ち寄る人も少なくない。

県外からの客を意識してか、メニューの主役はやはり地魚。おすすめメニューからお得な3貫セット「金沢盛り」を頼んだら、この日はガンドブリ(ワラサ)、アオリイカ、ガスエビの握りだった。金沢名物のガスエビは足が早く、1日で色が変わってしまう。「アマエビよりももっと甘い」と評される希少なエビを、ぷりぷりした状態で堪能できるのは地元ならでは。二宮さんは、「初めて来店された方には、地魚中心のおすすめメニューを召し上がっていただきたい。おすすめメニューにはよほどのことがない限り、冷凍物は使いません。生で勝負していますから」と自信をのぞかせる。

すし玉の「富山盛り」(540円)。この日は左からシロエビ、ホタルイカ、ベニズワイの軍艦が

首都圏ではお目にかかれない珍しい地魚に舌鼓を打つ。巧みに空気を含ませて握ったシャリは、口の中でぱらりととほどける。回転寿司とは思えないこの上質感! 二宮さんに金沢の寿司と江戸前との違いを尋ねたら、「江戸前に慣れた方には、シャリがちょっと甘く感じられるかもしれません。金沢の寿司屋では“シャリは人肌程度に温かい”のが基本。当店でも極力握りたてを召し上がっていただくようにしています」と話してくれた。帰りの新幹線の時間の30分ほど前に駅に着き、ここで地元グルメの集大成を味わってから帰路につく。これぞ金沢旅の醍醐味だろう。

すし玉の「金沢盛り」(410円、季節によって内容が変わり、冬期限定版は540円)。左からガンドブリ、アオリイカ、ガスエビ
スーパードライ30周年