限界集落がブランド米産地へと飛躍した理由 高野誠鮮さんに聞く

無農薬、無肥料の自然栽培米で世界を狙う

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文:大塚 千春

01.26.2017

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限界集落で育てた米を、日本有数のブランド米にするのに成功した仕掛け人。それが立正大学客員教授の高野誠鮮さんだ。高野さんに、地方再生への道、そして日本の農業の未来を聞いた。

石川県能登半島の西側の付け根にある羽咋(はくい)市。その市内で高齢化率が54%に達していた限界集落の神子原(みこはら)地区で作った米を、日本有数のブランド米に育て上げたのが、羽咋市役所の元職員で現在は立正大学客員教授の高野誠鮮(たかのじょうせん)さんである。2016年12月半ばには、世界で初めて無農薬・無施肥のリンゴの栽培に成功した木村秋則さんとの共著による『日本農業再生論「自然栽培」革命で日本は世界一になる!』(講談社)を上梓した。

高野誠鮮(たかのじょうせん)さん

高野さんは2005年、羽咋市の橋中義憲(はしなか・よしのり)市長の命により、同市の中で最も人口減少が顕著で、高齢化率が54%にも達していた神子原地区の活性化と農作物をブランド化する「山彦計画」事業に携わることになった。ブランド化の目標期限はたったの1年で、高野さんが決めたプロジェクトのための予算は60万円。予算がないからできなかったなどという言い訳を作りたくなかったので、あえて自分を追い込んだのだという。

空いている家や耕作放棄地となった遊休農地を都市住民に貸し与える「空き農地・空き農家情報バンク制度」「棚田オーナー制度」、主に若者に農家に泊ってもらい農業体験をしてもらう制度を次々に立ち上げる中、特に羽咋の名を全国に知らしめることになったのが、同地の農作物のブランド化だ。高野さんは山彦計画をどのように成功させたのだろうか。そして、普及に力を入れる自然栽培の農作物にどんな可能性を見ているのだろうか。高野さんに話を伺った。

農業の「ど素人」ならではの着想

僕は農業をやったことがないし、田んぼにも畑にも入ったことはありませんでした。後で考えるとこれが良かったのでしょう。下手に農業の仕組みを知っていたら、手を出せなかったと思います。

(市役所の)農林課では、米価が毎年下がるなどという話を周りの職員から聞くので、「誰が決めているんですか」と聞くと、「おまえそんなことも知らないのか」と言われました。でも、今の流通がだめなら、単純に、じゃあ流通の変革をすればいいんだ、と考えたんです。ど素人だから見えることってあると思うんですよね。

それまで、神子原地区の米は農業協同組合(農協)を通して販売していた。ならば、農協に売らずに生産・流通・販売、すべて自分のところで行うシステムを作る、つまり直売所を作ればいいと考えました。でも、集落の集会所に169世帯の農家を集めて、自分たちで直売所を経営する会社を作って商品を売ってくださいと言ったら、賛成はわずか3世帯。売れ残ったら自殺行為 だという。農協に卸せば安くても引き取ってくれるからです。そんなに言うなら、まずは自分でやってみろ、と言われ、賛同してくれた3世帯からお米を預かり役所で売ることになりました。

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