IT活用した初心者が「農業の匠の技」を超えた

「農業を成長産業にする」ルートレック・ネットワークス佐々木社長語る

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文/写真:高下 義弘

03.21.2017

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食の未来を変えるテクノロジーに着目する本コラム。今回は、「農業に休日を」「農業を成長産業にする」を合言葉にした農業向けIT製品を取り上げる。それが「ゼロアグリ」。手がけるのはIT企業のルートレック・ネットワークス。2013年から販売開始し、50個所のハウス農園で稼働している。各農家の収量増加・品質アップの成果と、今後の展開を聞いた。

――農業を支援するIT製品の「ゼロアグリ」を導入した農家さんが、収量拡大、売上高アップなど、成果を享受し始めていると聞きました。まずはゼロアグリはどんな仕組みなのかを教えてください。

佐々木:ゼロアグリはITを使ってハウス内の作物に、水と液肥からなる培養液を自動で供給するシステムです。

明治大学黒川農場の内部。ここでゼロアグリを使ったトマト栽培の実験が行われている

基本的な構成としては、ハウスの中に、制御装置であるゼロアグリの本体を設置し、さらに土壌センサーと日射センサーを設置します。センサーでは、土壌の水分量や地温などのデータを取得します。いわば「土壌の見える化」をするわけです。

そのデータを「ゼロアグリクラウド」というサーバーコンピュータ側にネットワーク経由で送信します。ここに搭載したAI(人工知能)が作物の成長に合わせて土壌を最適な状態に保つよう考え、ゼロアグリの本体を介して自動で培養液を供給します。

培養液の供給には、ハウス内に設置した点滴チューブを使います。点滴灌(かん)水という手法ですね。作物は、肥料と水が混ざったこの培養液を吸って育つわけです。

これまでも農業設備の市場にはタイマー灌水の仕組みがあったのですが、細かい制御は難しかった。でもゼロアグリではAIを使って灌水と言われる水やりと、施肥と言われる肥料やりを細かく制御しつつ、完全に自動化できます。

1日2時間の作業量を完全に自動化

ゼロアグリの本体。明治大学黒川農場で稼働しているものを撮影

――水やりと肥料やりは、農家にとって結構な負担だと聞きました。

佐々木:はい、規模によって異なりますが、灌水と施肥という2つの作業で、だいたい2時間くらい必要だそうです。またそれ以前に、事前に天気予報をチェックしたり、作物の葉の状態をチェックしたりするわけですから、この2時間にプラスして1時間はかかっている。1日2~3時間が多いか少ないかという話ですが、農家さんは他の作業だってたくさんある。

それに最近の農家は、高齢化が進んでいます。だからこの水やりと肥料やりが削減できるだけで、農家さんの作業負担が大きく軽減し、効率化が進む。

自動化によって確保できた時間の余裕を、農業を手伝いに来た人や後継者の教育に充てたり、他のハウスを建てて規模を拡大するのに使ったりしていただければというのが我々の狙いです。ゼロアグリは「農業に休日を」「農業を成長産業に」をキャッチフレーズにしているのですが、そうした効果をうたったものです。

もう一つのポイントは、品質が安定することです。当社は明治大学と組んで農業へのIT適用の研究を進めてきました。最初に明治大学と一緒になっていろいろ調べたのですが、一番マニュアル化しにくい分野が、灌水と施肥だったんです。

これがゼロアグリで育てられているトマトの苗の様子

ほかの防虫や収穫はマニュアル化しやすくて、訓練すればパートさんでもできる業務内容です。でも、灌水と施肥は考慮すべき要素が多く、「勘と経験」「匠の技の世界」と言うべきものでした。

実際、多くの新規就農者は、最初の数年、灌水と施肥に慣れなくて、どうしても枯らしてしまうんです。耐えて10年くらい続けるとだいぶ分かってきて、うまくいくようになる。だから農業の世界では「水やり10年」などと言われているそうです。

それに最近は匠と言われるベテラン農家さんでも、灌水と施肥の調整は難しいとおっしゃています。というのは「ゲリラ豪雨」のような異常気象が続いているからです。いくらハウスなら気候の条件を緩和できると言っても、影響は受けますから。何よりも、やはり作物に付きっきりで灌水と施肥を調整するのは匠と言えど大変です。

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