フード&テクノロジー

ビッグデータが示した、東西の味付け比較

『クックパッドデータから読み解く食卓の科学』著者に聞く、データが見せた食の実態

文/写真:高下 義弘 04.04.2017

日本最大のレシピ検索・投稿サービス「クックパッド」。食関係の企業の間で、クックパッドが保有するデータが消費者の動向を把握するのに活用できると注目が集まっている。書籍『クックパッドデータから読み解く食卓の科学』(商業界)の主著者3人に、ビッグデータが示す「食の今」を聞いた。

──2017年2月に発売された書籍『クックパッドデータから読み解く食卓の科学』(商業界)が、食品製造業・流通業・小売業など食分野のビジネスパーソンを中心に話題を呼んでいます。膨大なレシピと検索データからなる、いわゆるビッグデータから見えた生活者の実態がいろいろと書かれていて、興味深く読めました。カンパネラ読者の皆さんに、主著者の皆さんから、データ分析結果のエッセンスを少し、ご紹介いただけますか。

主著者である、伊尾木将之氏(左)、佐々木健太氏(中央)、村上雅洋氏(右)。手にしているのは書籍『クックパッドデータから読み解く食卓の科学』(商業界)

佐々木:地域差のデータは面白い結果がたくさん出ています。一つご紹介すると、東京では「直伝」や「本格」というワードをタイトルに含むレシピが閲覧されやすい一方、大阪を中心とした関西都市圏では、「激うま」「秘密」「大人気」というキーワードをタイトルに含むレシピが閲覧されやすいという傾向があります。

──私は関東出身でして多少偏見があるかもしれませんが、関西のほうは大阪っぽいキーワードですね。

佐々木:傾向として読み取れるのは、東京のユーザーは自分ならではのこだわりを追い求める「自己追求型」、大阪のユーザーは他者の反響も柔軟に取り込む「他者共有型」、といったところでしょうか。

自己追求型という切り口で紹介しますと、いわゆるプレミアムビールを好んで飲むユーザーは食へのこだわりが強く、クックパッドのおつまみのレシピについて、かなり凝ったものを閲覧している傾向があると分かりました。

プレミアムビール購入者のレシピ閲覧傾向の例。プレミアムビール購入者は、「白菜のクリーム煮」など、比較的手の込んだレシピを閲覧する傾向が強いという(出所:クックパッド)

地域差はほかにもいろいろあります。例えば国民食とも言われているカレーですが、レシピの検索結果を見ると地域によってかなり相違が見られます。「バターチキンカレー」のレシピは関東圏で頻繁に閲覧されていますが、「牛すじカレー」になると関西が中心です。

また、雑煮の味付けに関する地域差もクックパッドのデータで改めて浮き彫りになりました。東側は澄まし汁が中心で、関西はみそを使ったりとバリエーションがあると言われていますが、ほぼそれと同じことを説明づける検索傾向が出ています。あと「京風」と言われる白味噌を使ったレシピが多く検索されるのは、やはり京都を中心としたエリアですね。

同じ汁物のジャンルで言えば、「ごぼう汁」の検索頻度は、九州と東北で特に高い傾向が見られます。

生活者のニーズがデータに如実に表れる

──このような分析結果は、商品の開発企画などにも役立てることができるというわけですね。

村上:食の地域差は、地域の観光資源を開発したり、思わぬご当地メニューを発見したりするきっかけにもなります。

クックパッドが保有するデータで特徴的なのは、ユーザーつまり生活者が「何かを食べたい、作りたい」といった関心の傾向が分析できることです。商品の販売状況の分析やアンケートなどの調査ももちろん有効ですが、それだけでは分かりにくい角度のニーズがデータで見えてきます。

佐々木:個々のユーザーの検索データを追っていけば、ユーザーがレシピを決めるまでにどう迷って、どう決定に至ったかという道程が見えてきます。例えば、「パスタ」で検索している前後に、「そば」や「うどん」でも検索していたり、といった具合です。こうした時系列的な分析も、マーケティングなどに活用できます。

伊尾木:もともと日本人はテクスチャ(食感)を表現する言葉を重視する傾向がある、と言われています。例えば「パリパリ」「サクサク」といった言葉ですね。今までは凄腕マーケターと言われるような人が経験と勘で顧客が好むであろう言葉を選び、それをマーケティング施策に反映させていたわけです。クックパッドのデータを使うと、言葉の検索ボリュームを通じて、それを定量的に把握できます。

食について「一般的にはおそらくこうであろう」と言われていたことが、クックパッドのビッグデータを使うと、改めて可視化できる。加えて、意外な側面が見えてくる。これが食分野のデータの面白さであり、データの強みなのだろうと思います。

村上:検索データは生活者のニーズの表れであり、日々投稿されるレシピデータには「簡単に作る」「おいしくする」といった生活者の工夫も盛り込まれています。業界全体の視点で考えますと、このようなデータを製造、流通など食関係の企業がうまく活用すれば、生活者のニーズに合った提案が可能になります。

(次ページに続く)

クックパッドのデータについて

クックパッドの月間利用者数は6300万人以上、投稿されているレシピ数は約260万品ある。それを元にクックパッドでは食品メーカーや流通業向けのデータ分析サービス「たべみる」を提供している(Webサイトはこちら)。クックパッドで検索された料理や食材などのキーワードのログから、生活者の検索動向を分析できる。

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