じぶんマネジメント研究所

あなたの組織は「疲れているクマ」ではないか?

組織を生態系として見る「関係性システム」からのヒント

文:高下 義弘 05.16.2017

いい仕事をしたいあなたに向けて、ヒューマン・マネジメントのヒントを送る本コラム。今回は、いい職場をつくるための考え方「関係性システム」について探る。なぜ、「できない部下」を排除しても、また同じタイプの部下がやってくるのか。打開のヒントは、この「関係性システム」にありそうだ。ビジネスパーソンや企業向けのコーチングサービスを提供するウエイクアップの佐藤扶由夫さんに聞いた。

これは、筆者の知人が教えてくれた話である。特定を避けるため、詳細は多少丸めてあることをお許しいただきたい。

その知人は、一時期あるIT企業に専門分野のアドバイザーとして1年ほど関わっていた。創業10年未満の新興企業で、社員数は派遣社員も含めて60人程度であった。

1年というとそれほど長い期間ではない。しかしそんな期間において、異様に感じたことがあったという。それは、うつ病で休む社員が一定人数いて、まるでローテーションするように“交代で休んで”いることだった。

その人物によれば、休む社員はいわゆる繊細そうな人ばかりではない。「この人がまさか」と思えるような、直前まで元気に働いていた社員もうつ病で休んだ。「不思議なことだが、あらかじめうつ病休職の枠が一定数に決まっているかのように見えた」(ある知人)。

社長は非常に頭が切れる人物だったという。この企業が数年間で大きく成長したのは、まさにこの経営トップの手腕によるものだった。ただ、いわゆるマイクロマネジメントが極端な人で、それゆえ社員は皆、社長の顔色をうかがいながら仕事をしていた。その知人が社長と個人的に話をすると、社長からは「あいつはなかなか変わってくれなくて」「彼は良い奴なんだけどなかなか動いてくれなくて」という社員に対する愚痴がしばしばこぼれていたという。

このケースを、ビジネスコーチングのサービスを提供するウエイクアップで「システム・コーチング」というコーチングサービスを手がけている佐藤扶由夫さんにぶつけてみた。

このようなケースを、どのように評価しますか。

佐藤:あり得ると思いますね。我々が提供しているシステム・コーチングは、組織およびチームを一つの「生態系」としてみなします。その生態系に何か不具合があると、ひずみとなる部分に問題が起きる。その問題が例えばメンバーの不調として表れるというケースは考えられます。そのひずみが解消されない限り、組織内では必ずだれかが不調になるという状態が続くわけです。

問題は、チームという「生態系」のひずみ

となると、この会社においてうつ病になって休む社員は、「弱い人」というよりは「生態系のひずみを表現している人」と言えそうですね。

佐藤:リーダーがどっぷり組織の渦(うず)に入り込んでいると、気づかないことが多々あるんです。そうして「あいつが悪い」とか「あいつは動かない」とメンバー個人の問題にして、それ以上見ないようにしてしまう。極端な話、その個人を排除しようとしてしまう。人間の性質として、ついついそういう考え方になってしまうものだと思います。

しかし、個人の問題だと押しつけていても、解決しない場合が多々あるわけですね。まさに私の知人が教えてくれたIT企業が示しているようにです。目の前の「できない部下」を排除しても、組織のあり方が変わらないと、また別の人が「できない部下」を演じてしまうこともある。

佐藤:組織を生態系と捉えて、「この生態系はどんな課題を抱えているのか」という新しい視点を取り入れると、目の前の現象に対して違う見方ができます。その違う見方が新しい発想につながり、根本的な解決法を導くという可能性は、十分にありえます。

チームの構成メンバーを「星座」に見立てる

「組織を生態系として見る」というのは、具体的にはどのようにしていくのでしょうか。

佐藤:システム・コーチングでは多くの場合、クライアント(顧客)となるチームおよび組織が「より良く成長する」とか「自走できる組織になる」といった目標を掲げて、我々のコーチングを受けることになります。ケースによって異なりますが、例えば半年間で6回、通常業務を離れてその日はコーチングに集中してもらうといった日程を組んで取り組みます。

本来はチーム全体にコーチングを行うのですが、ここではチームリーダーの方に焦点をあてたアプローチをご紹介します。例えば特徴的なものの1つに、リーダーがチームの構成メンバーを星座のように見立てて配置してみる手法があります。

リーダーは2つ、簡単な模式図を描きます。1つは、現在のチームについての図です。チームメンバーの配置を描いていくのですが、この際に、次のような具合に書きます。

チームで中心的な役割をしている人は、図の中心。そうでもないなと思える人は、図の端のほう。リーダーも含めて描き込みます。

メンバーの間は線で結びます。関係性が強いと思えば線を引き、薄いと思えば引きません。意見や考え方の食い違いなどで対立していると見られる人同士の間は、線を引いた上で、2重斜線で印をつけます。

仲が悪い場合は2重斜線、という意味ですか。

佐藤:システム・コーチングでは「対立も変化の兆候である」と見なします。つまり、なんらかの組織の改善すべき点を象徴していて、解決のヒントを提示しているという考え方です。ですから、ある特定の状態がポジティブだとか、これはネガティブだとか、そういう見方はしません。

この考え方は、アーノルド・ミンデル博士が開発した「プロセスワーク」に基づいています。プロセスワークとは個人や組織における課題を解決するための手段としても使われていて、海外では紛争地域における対立グループの課題解決などにも使われているんです。プロセスワークでは、「対立は気づいていない強いエネルギーの現れであり、そのエネルギーを適切に扱うと、人や組織をありたい姿に変えたり、新しい流れに乗せることができる」という考え方をしています。

描くもう1つの図は、理想的なチームを示した図です。一人ひとりのメンバーの特性を考慮しながら、同じような表記ルールに沿って描きます。

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