本田直之の「賛否両論=オリジナリティ」

人生100年時代をサバイバルしたかったら、「食のプロ」のオリジナリティに、学ぼう。

『オリジナリティ』著者 本田直之氏に訊く。

インタビュー:柳瀬 博一 / 構成:上阪 徹 11.24.2017

「梶谷農園」の梶谷ユズル氏へのインタビュー風景(写真:諸石 信)

「カンパネラ」から新しい書籍が誕生した。大好評をいただいている連載、本田直之氏が15人の食のプロフェッショナルにインタビューしてきた「本田直之の『賛否両論=オリジナリティ』」がこのたび1冊の本にまとまった。

本書に登場するのは、さまざまな食の分野の若きプロたち。彼らはいずれも、マスマーケティングを否定し、自分の創造性をとぎすまし、日本はもちろん世界で評価される地位を築きつつある。

その生き方に、本田氏は、人生100年時代のサバイバルの仕方を見て取った。読者はこの本から、そして食のプロたちから何を「盗みとれば」いいのだろうか?

本田氏に、訊く。

出版社:日経BP社
単行本:376ページ
価格:1500円+税
発売日:2017/11/23

「オリジナリティ 全員に好かれることを目指す時代は終わった」
著者 本田 直之

批判上等! 鮨さいとう、新政酒造、よろにく……超人気店がやっている閉塞感から抜け出すための51の信条

◆オリジナリティのない人は、生き残れない時代が来る!◆

『ミシュランガイド』で星付きの飲食店、日本酒の蔵元、高級レストランに野菜を卸している農家、といった食の世界のプロフェッショナル15人に、大ベストセラー「レバレッジ」シリーズの著者、本田直之氏がインタビュー! これからのすべてのビジネスパーソンにとって、未来の生き方の大きな指針である「オリジナリティ」を突き詰めるためのヒントが詰まっている一冊です。

「かけがえのない存在」にならないと、人は機械に負ける。

──『ミシュランガイド』で星付きの鮨、日本料理、焼肉、フレンチなどの飲食店、若い人にも強い支持を得ている日本酒の蔵元、高級レストランに野菜を卸している農家など、食の世界のプロフェッショナル15人に取材して生まれたのが、新刊『オリジナリティ』です。どうして、この本を作ろうと思われたのでしょうか?

本田直之氏(以下、本田):まずお伝えしておきたいのは、この本は飲食店の経営の仕方の本でもなければ、レストランガイドでもない、ということです。もちろん、飲食の世界の人にも読んでもらえたら経営や仕事に大いに役に立つと思いますし、おいしいものが好きな人がこの本を読むと、行くお店の料理やお酒はよりおいしいものに間違いなくなると思います。

でも、僕はもっといろんな世界の人に読んでもらいたいんです。それこそ、普通の会社に勤めている、普通のビジネスパーソンにこそ、読んでもらいたい。なぜなら、飲食の世界には、未来の働き方、未来の生き方の大きなヒントが詰まっているからです。そして、そのキーワードが『オリジナリティ』なんです。

左は鮨とかみの前総料理長の佐藤博之氏(写真提供:本田直之氏)

──飲食のプロフェッショナルの話が、一般のビジネスパーソンの未来の生き方のヒントになるとは、どういうことでしょうか?

本田:今、AI=人工知能が注目されていますよね。これから10年、20年すると、AIに人間の仕事が奪われてしまうのではないかと言われている。どんどん仕事がなくなっていくということです。

実際、これまで高給が約束されてきていた金融の世界で、すでに人員の大幅削減が起きています。米投資銀行最大手のゴールドマン・サックスは、株式トレーダー600人をAIを使った自動株式売買プログラムに置き換え、今や2人しかいなくなりました。日本のメガバンクでも同様のことが起きつつあります。三菱東京UFJ銀行やみずほフィナンシャルグループでは、店舗の統廃合やデジタル化した無人店の設置、IT化による業務見直しを進めることで、国内従業員の3割分の業務を削減する計画です。

僕も驚きましたが、すでに日本経済新聞やウォールストリートジャーナルの一部の記事は、AIで書かれていたりするわけです。ホワイトカラーが頭を使ってやることだと思われていた象徴的な仕事が、機械にできてしまう。これが今のリアルです。10年後には、いったいどうなっているか。恐ろしいことになっているんじゃないでしょうか。

一方で人間の寿命は延びていて、100歳まで生きるのが当たり前になる時代が来る。こうなれば、年金だけで、あるいは若いときの蓄えだけで暮らすというのは現実的ではないでしょう。ずっと働かないといけなくなる。

今や定年は実質的に65歳まで伸びていますが、70歳まで引き上げられても、まだ30年もあるわけです。おそらく80歳を過ぎても働かないといけなくなるでしょう。それこそ一生働き続けないと生活もできなくなるかもしれない。

考えないといけないのは、どうしたら機械に仕事を取られずに済むか、ということ。さらにはずっと働き続けられるか、なんですよ。では、そのためには何が必要になるのか。これこそが、オリジナリティだと僕は思っているんです。

オリジナリティのある人は、機械に取って代わられない。あまり会社に依存せずに済むから定年もない。そして、ずっと仕事のニーズがある。AIがさらに進化し、長寿がさらに進むこれからの時代にも、生き残っていけるということ。逆に、オリジナリティがないと、人生は困ったことになっていく可能性が高いということです。

右は「傳」の長谷川在佑氏(写真:鈴木 愛子)

──本田さんはこれまでも、『パーソナル・マーケティング』をはじめ、新しい生き方や新しい働き方に強い関心を示されて、たくさんの著作を出されています。年功序列、終身雇用で60歳まで働いて、それから悠々自適の老後が待っている、と誰もが考えていた時代に、早くから警鐘を鳴らされていました。今まさに時代が変わってきています。思いの原点には、どのようなものがあるのでしょうか。

本田:もう30年以上前になりますが、20代でアメリカに留学したときに実感したことがあったんです。個の力で生きている人たちが、とても多かったことです。会社に所属しているという感覚があまりない。会社に所属しているように見えて、実は契約ベースで仕事をしていたり。

悪い意味ではなくて、いい意味で契約的にプロジェクトに関わったりしている人たちが、ものすごくたくさんいたんですね。エンジニアだったり、コンサルタントだったり、営業的な仕事をしている人もいたし、いろんな仕事の人がすでにいた。

当時の僕にしてみると、この人たちはもっと会社にコミットしなくていいのかな、と思ったんですが、一方でもしかすると日本もいずれ似たようなことになるんじゃないか、と感じました。そうしたら、日本も明らかにその方向に変わり始めたわけです。それこそ、パーソナルブランディングなんて言葉は、今や当たり前になっちゃいましたし。