鉄道フォトジャーナリスト・櫻井 寛の “口福”の出張駅弁

郡山で“日本一うまいのり弁”を発見!

第2回 「海苔のりべん」・郡山駅(東北新幹線/東北本線/水郡線/磐越東線/磐越西線)

文:川岸 徹(ジャムセッション) / 写真:櫻井 寛、福豆屋、スタジオキャスパー 05.18.2017

出張時の楽しみの1つが駅弁や空弁だ。慌ただしいスケジュールの中で、手軽にお腹を満たしてくれる便利なアイテムであると共に、地元の食材を使ったその土地ならではの味わいは、張り詰めた心をほっと和ませてくれる。
鉄道フォトジャーナリストの櫻井寛さんセレクトによる、ビジネスパーソンの利用が多い新幹線停車駅の駅弁を紹介する本コラム「“口福”の出張駅弁」。櫻井さん最近のイチ押しだという第2回の駅弁は?

「第2回で取り上げるのは、福島・郡山駅の『海苔(のり)のりべん』です。のり弁当(以下、のり弁)は日本では昔からおなじみの弁当ですが、この海苔のりべんはコンビニやスーパーののり弁とはレベルが違う。私は、これぞ“日本一うまいのり弁”だと思っています」(櫻井さん)

シンプルなのり弁がなぜ大人気?

海苔のりべんを製造・販売しているのは、福島県郡山市の仕出し料理屋「福豆屋」(写真は女将の小林文紀さん)。駅弁のほか、宅配弁当や宴会用の料理などを製造しており、地方色豊かな家庭的な味わいが評判だ。特に海苔のりべんは、「マツコの知らない世界」(TBS系)をはじめテレビで紹介される機会が増え、幾つかの番組では人気駅弁ランキング1位になるなど今注目の品。なぜ、一見シンプルなのり弁がこれほどの人気を集めているのだろう。

「まずは、ごはんのうまさ。加えて、この駅弁はとにかく手間暇かけて作られています。お弁当箱にごはんを入れ、その上に昆布の佃煮(つくだに)を載せ、海苔を敷き詰めます。そして、さらにごはんを載せ、おかかを載せ、一番上に再び海苔を敷く。つまり、ごはん、昆布佃煮、海苔、ごはん、おかか、海苔と、6層の構造になっているのです。この構造が、一度食べたら忘れられない深い味わいを生み出しています」(櫻井さん)

その味わい深さを支えているのが、素材選びと丁寧な味付け。福豆屋は、「米は地元産の『あさか舞コシヒカリ』、海苔は宮城県の南三陸沿岸など東北寒流海域で生産された『みちのく寒流海苔』。これらを厳選して使っています。寒流海苔は安定した品質が特徴で、通年販売する駅弁に最適なのです。おかかには、自家製のそばたれを使って味付けします。時間をかけて、丁寧に炒りつけるのです」と話す。

料亭風、極上の玉子焼きや焼き鮭

海苔のりべんは、ごはんとおかずの相性も抜群だ。「コンビニなどで売っているのり弁のおかずは、魚のフライやコロッケなど、油ものが多いでしょう? でも、この駅弁には揚げ物が一切ない。家庭的な体にやさしいおかずばかりだから、最後まで胃もたれすることなく、おいしく食べられるんです」(櫻井さん)

だしが利いた特大の玉子焼き(厚さ2.5cm)、焼きかまぼこ、焼き鮭、赤かぶ漬、えびいもとにんじんの煮っころがし。そして、ごんぼ炒り(きんぴらごぼう)。「ごんぼ炒りは、太めのごぼうをピリッと辛めに味付けした、この地方の家庭料理。甘辛い風味が6層ののりべんと絶妙に合うんですよ」と福豆屋。

櫻井さんは、おかずの中では焼き鮭が一番のお気に入りだという。「お弁当の鮭は、冷めてパサパサになったものが多いんです。でも、この焼き鮭はしっとりしていて、とても口当たりがいい。聞けばぜいたくに鮭の腹身のみを使っているそうで、ほどよい塩加減と脂の乗り具合が楽しめます」(櫻井さん)

「あえて難点を挙げるとすれば、すぐに売り切れてしまうので入手が困難なこと」と櫻井さん。郡山駅で運よく海苔のりべんに遭遇できたなら、迷う前に即座に手に取ることをお勧めしたい。

「海苔のりべん」・郡山駅(東北新幹線/東北本線/水郡線/磐越東線/磐越西線)
製造元:福豆屋
価格:950円

櫻井 寛(さくらい・かん)
鉄道フォトジャーナリスト
1954年、長野県生まれ。昭和鉄道高校を経て日本大学芸術学部写真学科を卒業。世界文化社写真部勤務の後、フリーに転身。趣味は「乗り鉄」、仕事は「撮り鉄」、好物は「駅弁」という鉄道ひと筋の人生を送る。著作は90冊以上、コミック『駅弁ひとり旅』(双葉社)の監修も。年間250日以上は取材旅行で各地を飛び回っている。東京交通短期大学客員教授。
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