今夜も噂の酒場をHOPPING

二足のわらじは履いていない。全部ひっくるめて僕らの人生

アナログレコードとおいしいお酒、東京・渋谷のロックバー「shhGarage」(後編)

取材・文:荒濱 一 / 写真:大槻 純一 04.17.2018

酒場はときにはオーナー(経営者)の人生そのものを映し出す。例えば、東京・渋谷にあるアナログレコードだけをかけるロックバー「shhGarage」。オーナーは、昼にも仕事を持ちパラレルワークを実践する男女3人。もともとは、「いい音楽とおいしいお酒を楽しみながらみんなで盛り上がりたい」という思いから、民家のガレージを借りて始めたホームパーティーがルーツの店だ。恵比寿で2年活動した後、より広いスペースを求めて五反田に移ったが、わずか1年で店の存続の危機に直面する。彼らはどうやってその困難を乗り越えたのか。(文中敬称略)

前編)から続く

「shhGarage」の五反田でのいわば「間借り」は、わずか1年で幕を閉じようとしていた。ひとつにはキャパシティの問題。さらに、「音」についても、より自分たちのこだわりを追求したかった。

「ここから出て、自分たちの思い通りにやれるバーを持ちたい」。彼らは思い切った手に出る。クラウドファンディングで開店資金を集めることにしたのだ。目標は300万円。

クラウドファンディングで渋谷移転のための費用を募る

「クラウドファンディングで資金を募ることにしたのは、おカネがなかったのが最大の理由だけど、それによって僕らだけじゃなく、来てくれる『みんなの店』になるんじゃないか、そうなったら素敵だなと思ったのもあります」と芹沢。ただし正直、本当に目標金額が集まるか不安だったという。

「もう毎日胃が痛くて。おカネが集まらないと移転できず、Garageがなくなっちゃうわけだから。銀行などから借金までしてやるつもりはありませんでした。そうなると、ちょっと方向性が変わってきちゃうし」と、当時の心境を打ち明ける。

結果、クラウドファンディングでは目標を大きく上回る512万5000円を調達。これによって、渋谷に自分たちの思い描いたとおりの店を出すという念願が叶えられることになった。資金提供に応じたパトロンは183名にものぼる。

「心の底からホッとしました(笑)。うれしかったですよね。人生のうれしかったことトップ3に入るくらい。やっぱり渋谷に移って、『みんなのバー』になったという思いは強いですよ。よりお客さんとの『いっしょ感』が出たというか。来る人もみんな、それを感じてくれているんじゃないかな」と芹沢。パトロンたちの名前は、紙に書いて店の壁に貼られている。

クラウドファンディングによって開店資金の提供に応じたパトロンは183人。今も店の壁にパトロンたちの名前を書いた紙が貼られている