ナウい飲みニケーション!

“ビアテスト”で価値観を確かめ、飲み会でレッテルの固定化を防ぐ/ココナラ

第3回 ココナラ(個人スキルのフリマアプリ運営)

文:皆本 類 / 写真:菊池 くらげ 06.14.2017

何かと嫌われがちな会社での飲み会。ところが今や、最先端のスタートアップ企業ほど「飲みニケーション」に力を入れています。そんな21世紀型の「ナウい飲みニケーション」の現場に足を運び、その実態をレポートするこのコラム。第3回は個人のスキルを売買するオンラインフリマサービスの開発・運営を手がけるココナラをリポート。もうすぐ創業5年を迎える同社には、飛躍的に成長を遂げたベンチャー企業ならではの「飲み」についての並々ならぬこだわりがありました。

「ビアテスト」──。ココナラの南章行代表取締役は、人材採用の際、最終面接の前に、採用候補者とちょっとしたお店で飲むことにしており、それを“ビアテスト”と呼んでいるそうです。

「会社の会議室で話されることは、やはり面接用に考えられたトークです。実際には1対1の面接ではわからないことが多いですよね。応募してきた側も、面接だけではこの会社がどういう文化なのか、本当のところはわかりません。私が面接で、いかにフラットでオープンな会社ですと言っても、飲み会の場でメンバーが僕に平伏していたら『うそじゃないか』と思うわけですよね。でもお酒を飲みながら話していくと、お互い次第に緊張も解けて本音を話し出す。その時にテンポが合うか合わないかを重要視しています」(南さん)

ココナラ代表取締役の南章行さん(左)

ビアテストといってももちろん、お酒が飲めるかどうかが問題ではなく、飲み会というカジュアルな状況での振る舞い方をお互いの判断材料にしよういうことです。「大企業できっちりと新卒を育てていけるんだとしたら違うでしょう。しかし、社員全員の顔が見える50人弱規模のベンチャー企業で、みんなそれなりに人生を賭けているわけです。お互い一緒に楽しめないような人と働きたくないよなと、シンプルに思うわけです」(南さん)。そこでココナラでは、「採用」の段階から飲みニケーションの効能を積極的に取り入れつつ、月1回の定例飲み会で社員同士のコミュニケーションをさらに高めよう、と考えているわけです。

ココナラは、個人のスキルを売買できるオンラインフリーマーケットサービスを手がける企業。キャッチコピー、ロゴ、イラストなどの作成から恋愛相談や占いまで、個人の得意な知識やスキルや経験を気軽な価格で販売できるようになっています。モノではなく各種のサービスをCtoC(Customer to Customer)でやり取りできる点に、大きな特徴があります。

2012年に3人で創業した同社は、2017年6月時点で社員約50人。事業の急成長に伴う社員増により、数回にわたりオフィスを移転しました。いまは、このコラムで紹介したVASILYやノオトと同じ東京・五反田に本社を構えています。オフィスの所在地が変わっても、創業以来、社員みんなで定期的に飲む機会を設けてきました。

定期飲み会では、屋形船を借りたり、社員の家族を交えてバーベキューをしたりすることもあるそうです。オフィスで飲むときには、「ウゴウゴルーガ」のDVDを見たり、昔懐かしい「ボンバーマン」というゲームの大会を開催したりと、ときに趣向を凝らして楽しんでいます。

すべてに共通するのは、会社としてオフィシャルな行事であり、基本的には全員が集まる飲み会だということ。単に職場で飲みニケーションを活性化させるなら、個別に社員同士飲みに行くだけでも十分そうですが、そこにはどんな飲みニケーションへのこだわりがあるのでしょうか?

こだわり1:徹底的にオープンな空間にする

今回カンパネラ編集部が参加したのは、月末金曜日の20時から、同社内の共有スペースで開催された定期飲みでした。この日は、半年間かけて開発してきたハンドメイドの商品を販売するマーケットのローンチを祝って、南代表取締役の音頭のもとで乾杯することから始まりました。

参加者はひと仕事終えた社員はもちろん、来月から入社する社員、そして日ごろ業務を提携している会社の代表とその友人たちも招かれていました。このように同社の定期飲みには、社員との縁がある社外の人も歓迎されます。外のお店ではない、気取らないスペースに様々な人が出入りしながら自由に飲食を楽しむ様子は、さながら外部に開かれたオープンなホームパーティーのようです。

飲食店の場合は、立食スタイルでもない限りテーブルが一緒の人としかなかなか話せなかったり、ついつい社内で仲のいいメンバーで固まっていつもと同じ話に終始してしまったりすることがあります。それでは社内全体のコミュニケーションが活性化するどころか、“政治”が生まれてしまうことさえあると南さんは指摘します。

「会社の中で飲むと、お店と違って時間も気にしなくていいし、テーブルや席に縛られず移動も楽。『あっちで面白い話をしているぞ』と思ったら、ひょいと行って話を聞くことができます。お店ほどは騒がしくなく、社内でリラックスして飲めるから、時間が深くなるにしたがって、ホームパーティーというか“合宿の夜”のような妙にストイックで熱い雰囲気になることもあります。前回の定期飲みなんか、午前3時まで残って会社の未来やプライベート恋愛話について語り込んでいる面々もいました」(南さん)

こだわり2:とことんフラットに楽しむ

定期飲みが始まってしばらく経つと用事がある人は帰ったり、仕事が残っている人は自分の席に戻って作業したりといろいろで、会社のオフィシャルな行事といえど強制感はありません。かと思うと、時間が経ってくると、間接照明で浮かび上がる同社のロゴの下で、まるでバーカウンターのような雰囲気が生まれ、そこで、南さんをはじめとする同社社員、そして業務提携を行っている同社の取引先の企業の人たちが話し込み始めました。この日も、実体験を基に恋愛話を熱く語る方も……。

仕事に戻られる方もおられました

一見して、誰が社長で誰が部下か、誰が取引先で誰が社内の人かまったく分からないほど。このような印象を受けたことを南さんに伝えたところ、「うちはこんな感じで常にフラットですよ。例えば僕が『社長』というのはある種の役割に過ぎません」と南さんは話します。

この定期飲みで最後まで残ったメンバーには、この日で試用期間が終了したばかりのデザイナー部門の女性と、ほぼ同時期に入社したマーケティング部門の女性もいました。入社して間もない社員もすっかりなじんでいる様子。新しいメンバーも分け隔てなく仲間として扱うという点にも、同社のフラットな雰囲気を感じ取りました。

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