塩見なゆの「都境酒場」案内

小岩「元咲 (げんき)」:酒場だけが酒の店でなし。讃岐うどん店でゆったり飲もう

文/写真:塩見 なゆ 06.14.2018

料理の味だけでなく、店主さんやお客さんと触れ合うことができ、古き良き時代の雰囲気を味わえる大衆酒場が人気です。しかも、なぜか東京都とその隣接する県の東京都側の街、すなわち「都境の街」にある酒場は老若男女を惹きつけます。「都境酒場」案内人の塩見なゆさんが紹介するこのコラム、今回ご紹介するのは江戸川区の小岩にある「元咲(げんき)」です。

昭和27 年(1952年)、全長1733メートルのアーケードが完成し、「雨が降っても傘のいらない横のデパート」と呼ばれました。そのアーケード通りが現在のフラワーロードの原型。小岩駅南口から伸びる約800メートル、道の両側を合わせると総全長1773メートルの商店街は江戸川区で最大です。100年以上の歴史をもつ老舗の練り物屋や昭和レトロが魅力の喫茶店など、個人店がずらりと並びます。

本格的な讃岐うどんのお店が居酒屋?

「元咲」もそのひとつで、東京では珍しい讃岐うどんの専門店です。本場香川でさぬきうどんの修行を6年されたご主人が始めたお店で、店内で打つ自家製のうどんは本場に負けないとの評判です。

うどん専門店は珍しいですが、さらにここに小岩要素が加わります。

「お店を続けているうちに、お客さんの要望でじわじわとうどん以外の料理が増えていき、酒場のメニューや飲み物が加わっていった」と話すご主人。そう、ここは本格讃岐うどんのお店でありながら、なんと完全に居酒屋となっているのです。しかも、営業時間は午前11時から通しでやっています。

それでは最初に乾杯!

「明るい時間から飲みにいらっしゃる方も多いです」と話をうかがっている横で、常連さんはチューハイで飲んだあとのシメのうどんをオーダーされていました。

今日が休みの人、夜勤明けの人、老後の余暇を楽しむ人──。様々なリズムで生活をする人がゆったりとくつろぐ街、それが小岩でしょう。まだ明るい時間でも、モツ鍋を囲んで盛り上がっているグループもあり、そんな自由な雰囲気に都心にはない癒やしを感じます。

「おつまみうどん」って、なんですか?

私も皆さんに合わせて、まずはビールから。看板のうどんはぶっかけを筆頭に20種類ほどありますが、ここはおつまみの数のほうがその倍ほどもあります。うどんのトッピングの定番「天ぷら」はキス天でも130円とお手頃価格。小袋刺しから豚なんこつ塩焼き、馬刺しまで肉類も豊富です。

熱々の鍋でグツグツと音をたててやってきたアスパラバター。もう一品は、ご主人の関西経験を活かしたどて焼きを頼みました。どて焼きは1本100円とこれまた庶民的。関西の酒場で食べるそれと同じ。味噌味で甘く味付けされ、ビールやチューハイが進みます。

熱々の鍋に入ったアスパラバター。量はたっぷりです
どて焼きは1本100円! 七味唐辛子をかけて、いただきます!

そろそろシメのうどんを食べようかというところで、品書きから不思議なものを発見。なんですか? 「おつまみうどん」って。しかも時間がかかりますという注釈付き。お椀に入った小さなシメうどんかと聞けばそうではないらしく、頼んでみることに。

「お時間かかります おつまみうどん」とは??

なんと、茹でる前のうどんをカリカリに素揚げしたものでした。ここにカレーやチーズをふりかけて味を調え完成。さぬきうどん特有のコシは揚げた姿になっても不思議と感じられます。

これが「おつまみうどん」の正体。茹でる前のうどんの素揚げでした

広くゆとりのある席配置。小上がりでのんびりくつろぐもよし、テーブルで飲んで摘んで楽しむもよし。小岩らしい自由な雰囲気に癒やされ元気をもらえる「元咲」でした。

座席の配置は広くてゆとりがあります


次回は小岩のもつ焼きの「登運とん」をご紹介します。

店名:元咲(げんき)
住所:東京都江戸川区南小岩6-25-15
電話:03-5693-1527
営業時間:金〜水 11:00〜23:30(ラストオーダー)、日曜営業
定休日:木曜
予算:2000円
塩見 なゆ
酒場案内人。1984年、東京都杉並区荻窪生まれ。新宿ゴールデン街に通った作家の両親を持つ。幼いころより中央線沿線の飲み屋へ連れて行かれ、物書きの大人と瓶ビールに囲まれて成長する。会社員として広報・宣伝畑を経て独立。趣味だった飲み屋巡りを本業とし、飲食専門のライターとなる。酒場に恋して年間2,000軒を巡る。