ロジックよりマジック

ラスコー展観るべし。人類はクリエイティブから始まった

2万年前に、すでに人類は野生の思考という高度な能力をもっていた

文:関橋 英作 03.02.2017

摩擦を起こさないように、ただ無難に生きている。そんな人生、面白いですか? もっと枠を外れた生き方をしたいビジネスパーソンに贈るこのコラム。今回は、「ラスコー展」にみるクリエーティビティの原点と、現代人にも応用できる見方・考え方について。

約2万年前の人間と、21世紀の人間。何が違うと思いますか? 頭脳、知識、体力? 2万年前の人間の体力は今より勝っていたかもわかりませんが、知能的にはほとんど同じ能力を備えていたと言われています。原始人などという呼び方は、まさに偏見ですね。

人類は、現生人類と言われるホモ・サピエンスが約10万年前に誕生したとき、脳に劇的な変化が起こったと言われています。ニューロンの接合部にあるシナプスがその主人公。そこで、人類が獲得したものが「アナロジー」、類推です。分類したり、何かに喩(たと)えたりする能力。たとえば、シイとカシは常緑広葉樹という分類。また、女性は花のようだと喩えるのは、比喩(メタファー)。帆でヨットを表現するのが、換喩(メトニミー)。

おわかりのように、現代人は毎日このアナロジーのごやっかいになっています。それどころか、アイデアを生みだすクリエーターは、アナロジーなくして作品はつくれないかも知れません。科学者もまったく同じです。つまり、人類はずっと同じ思考で生き続けてきたということになります。変わったのは、社会のカタチだけ。

そんなことを再確認したのは、東京の国立科学博物館で開催されていた特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」を観たときです。ご存じのように、フランス南西部にある洞窟壁画。バイソン、ウシ、ウマなどの壁画を見たことがあると思います。旧石器時代の最高の芸術として有名です。

そこから急につながったのが、レヴィ=ストロースの「野生の思考」。1960年代のベストセラーにもなった考え方です。未開人とか原始人というのは,現代人の思い込み。彼らは、自然の中から記号を見つけ出し、それらを構造化していったのです。

天文学は占星術から。数学は錬金術から。感覚を総動員しながら、世界を知的に認識し、文化の要素と自然的な要素を一体にし、文化のシステムをつくっていったのです。

つまり、人間の思考は自然がつくりだしたもの。産業革命以来、歴史と進歩のみを標ぼうしてやってきた思考法は、わずか200年そこらしかありません。その思考法にかげりが出始めているのは,ご存じの通りです。そろそろ、思考法を変えるときに来ているのかもしれませんね。

今回のラスコー展のすごさは、2万年前にタイムスリップして、クロマニョン人に触れたような感覚に襲われること。洞窟にラクラク侵入した研究者の気分です。というのも、発見後、多くの観光客が押し寄せ壁画が劣化してしまったのです。それで、研究者といえども簡単には入れなくなったそうです。

しかし、一目見たいのは心情。そのために、一大プロジェクトが始まりました。美術館等でいかにリアルに再現できるか。

集められたのは、多くのアーティスト。3次元レーザースキャンなど現代の最新技術を利用しながら、膨大な時間をかけ、手作業で精密に復元したのです。実物大で。

きっと、そのアーティストたちがいちばん野生の思考を体感したことでしょう。ちょっと羨ましいですね。

実際は,ご自分の目と感覚で体感していただくのがいいと思います。東京は終わってしまいましたが、3月25日からは東北歴史博物館、7月11日からは九州国立博物館で開催予定です。

とはいえ、気になったものをいくつかご紹介します。

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