食文化・萩原社長のお薦め

暑い夏、身体が喜ぶ「夏の鍋」

まさに夏が旬! 秋田の「じゅんさい鍋」文化

文:萩原章史/写真:八木澤芳彦 07.19.2016

全国の生産者から自慢の食材・食品を厳選して販売する「うまいもんドットコム」や、東京中央卸売市場(築地青果市場)と提携して全国の特選フルーツや野菜を宅配する「築地市場ドットコム」を運営する企業「食文化」。同社の萩原章史社長が、お薦めの「うまいもん」を紹介する新コラム第1回のテーマは、「夏の鍋」。鍋は、冬だけの料理ではないのです。暑い夏にこそ、アツアツの鍋をおいしくいただき、汗をたっぷりかいて暑気払い! 今回はそうした夏の鍋、秋田の「じゅんさい鍋」を紹介します。

私が初めて、じゅんさい鍋を食べたのは9年前の今ごろ。場所は、秋田県三種町の森岳温泉の、色白のおばあさんが切り盛りする郷土料理の店でした。じゅんさいは、淡水に生息する水草の一種で、春から夏にかけて出てくる新芽は透明なプルプルとしたヌメリで覆われ、その歯ごたえ(シャリ感)は少し優しく、かんだ瞬間にすっと飲み込みたくなる感じです。そして、旬の生のじゅんさいは、鍋で食すのが一番といわれているのです。

摘みたてのじゅんさいは、プルップル!

じゅんさい鍋といえば、定番は、生じゅんさい、比内地鶏、山菜のミズ、だまこ(炊いたうるち米をつきつぶして丸めたもの)などを甘辛のスープで食べるのですが、森岳温泉の店で食べたのは、強烈な印象の3種類の鍋でした。

(1)味噌仕立てのじゅんさい鍋=ネマガリダケと木綿豆腐とミズとキノコ類
(2)土手鍋風の汁が少ないじゅんさい鍋=タニシと細ネギとキノコ類
(3)「鯨の貝焼き(かやき)」風のじゅんさい鍋=いさじゃ(秋田・八郎潟で獲れる淡水のアミ=小エビ)の塩辛味 塩鯨とナスとミズとキノコ類

どれも秋田の初夏の味覚の食材を、じゅんさいと一緒に堪能する鍋です。じゅんさいは、えも言われぬおいしさを生み出しますが、メインにするには少々力不足なので、いぶし銀の準主役たちが主役を押しやるような鍋になるというわけです。

味噌仕立てのネマガリダケの鍋は、他県の人にも受ける味

実際、じゅんさいの季節はネマガリダケの旬でもあるので、これが実にうまい! 少し味噌だしで煮込むと、タケノコに味が浸みてなお良いです。

ネマガリダケには味噌が合う。たっぷりの生じゅんさいが絡んで美味!

秋田県民は「食べる前日に味噌を溶いただしに、下ごしらえしたネマガリダケを漬けておく」という話を聞いたことありますが、確かに、やってみると味が染みて美味。ネマガリダケは、産地でクマの被害が相次いだこともあって入手がますます難しくなりそうですが、それでも東北の雪深い山に芽吹くネマガリダケは、太くて柔らかで実に美味です。

そして、このネマガリダケのポリポリ感、山菜のミズのシャキシャキ感、それに、じゅんさいのトロトロ感の3つの食感の合わせ技で、この鍋は実に楽しいものになります。その汁を吸った木綿豆腐もうまい! シンプルに素材が同居するだけで、こんなにうまい鍋になるのがすごい。

味噌仕立てで、ネマガリダケとの相性は抜群
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