BAR CAMPANELLA

息子には「ゲ-ムばかりしていなさい」と教育してきました――カドカワ浜村弘一氏

『週刊ファミ通』元名物編集長が、ゲームと社会の未来を予測

 05.26.2016

「BAR CAMPANELLA」――ここは東京・表参道の青山通り付近にあるバー。エグゼクティブなビジネスパーソンや各方面のスペシャリストたちが夜な夜な集い、「大人の会話」を楽しんでいる。毎週木曜日にこの店に通い、時代の最先端を行く人たちの刺激的な話を聞くべく、今回はカンパネラ編集長の瀬川明秀がカウンターの席に着いた。今宵のゲストは、ゲーム総合誌『週刊ファミ通』の元名物編集長で、現在はカドカワ取締役、ファミ通グループ代表を務める浜村弘一氏。1986年の『週刊ファミ通』(当時は『ファミコン通信』)創刊から30年、日本の家庭用ゲームの歴史とともに歩んできたゲーム業界の生き証人が未来を予測する。浜村氏が考える未来のエンタテインメントに、瀬川が迫る。

息子と一緒にゲームができるお父さん……

瀬川:今日は、ゲーム総合誌『週刊ファミ通』でらつ腕を振るわれてきた浜村さんに、ゲームから読み解く過去と未来ということで、これまでのご経験をもとに、いろいろお話を伺っていければと思っています。それでまずは飲み物を注文ということで、何を飲まれますか?

浜村:「余市」がいいですね。ロックで水もください。実は、北海道の余市にあるニッカウヰスキーの工場に行ったことあるんですよ。趣深くてすてきな工場ですよね。

瀬川:カンパネラでも何度か紹介しているんですが、いいところですよね。浜村さんは、お酒は何でも飲まれるんですか?

浜村:はい、わりと何でも好きですね。

浜村弘一さん(カドカワ株式会社 取締役、ファミ通グループ代表)
1986年のゲーム総合誌『週刊ファミ通』(当時は『ファミコン通信』)創刊から携わる。 『週刊ファミ通』の編集長に就任したのち、株式会社エンターブレイン 代表取締役社長、 株式会社KADOKAWA 取締役を経て、現職。 現在もファミ通グループ代表として、さまざまな角度からゲーム業界の動向を分析し、 コラムの執筆なども手掛ける。 著書に『ゲームばっかりしてなさい。−12歳の息子を育ててくれたゲームたち−』、 『ゲーム産業で何が起こったか?』、『浜村通信 ゲーム業界を読み解く』。

瀬川:でも今の時代、24時間ほぼメールのやりとりがあったりしますが、マネジメントのお立場で休む時間というものは、あるんですか?

浜村:そうですね、ネットワークインフラが整い、携帯電話が登場したことで、いろいろなことが劇的に変わりましたよね。昔なら京都まで任天堂の取材に行った帰りは、必ず新幹線でビールを飲みながら帰ってきたんですけど、今は帰りの新幹線の中ではメールをしたり、決裁したりという作業が増えてしまったので、仕事が濃密になってきた感じがしますね。でも、確かに忙しいんですけど、ゲームをやる時間はきちんとつくっていますよ。

瀬川:えっ? 今も本格的にゲームをやっているんですか?

浜村:もちろんやりますよ。仕事だからっていうわけではなく、好きでやってます(笑)。

瀬川:ゲームはコンソールゲームですか、それともスマホで?

浜村:何でもやりますね。それこそ時間が少しとれる土曜日とか日曜日にはインターネットに接続して、最近ではPS4で「ファイナルファンタジーXIV」をやっています。もちろんサーバーの中にみんなで集まって、パーティーを組んで敵を倒して。非常に楽しいですよ。

瀬川:休日って何時ごろから始めるんですか?

浜村:だいたい日曜日の午前9時半くらいから12時までですね。モニター2台で、息子と一緒にパーティーを組んで敵をせっせと倒しています(笑)。

瀬川:そうなんですか、息子さんと一緒にゲームができるお父さんなんて、ちょっとうらやましいです。

浜村:スカイプをつないで、ほかの仲間と話をしながら役回りを決めてやっていますよ。息子が回復魔法を使うヒーラー役で、僕は敵のターゲットをこちらに向かせる盾役で、あとの人たちがアタッカー役で敵を倒していく。

「BAR CAMPANELLA」のホスト・瀬川

瀬川:息子さんはおいくつなんですか?

浜村:今22歳ですけど、彼が小学校4年生のときから一緒にやってますね。そのときは「ファイナルファンタジーXI」でしたけど。ゲームのやり方から息子の成長が感じられて非常に面白いですよ。例えば、最初は気づかいなく、ただ自分のやりたいようにやっていたのが、だんだん周りの人への配慮ができるようになっていくのが分かるんです。

瀬川:ゲームで息子の成長を感じる……。何か、新しい絆ができそうな親子関係ですね。

浜村:ゲームが共通の話題になるし、第三者が介入するから、それを通じて息子の人柄や成長が分かる。だから、うちでは「ゲームばかりしていなさい」っていう教育でしたね(笑)。

瀬川:一般的にはネットでゲームばかりしていると、現実世界では飲み会とかコミュニケーションが難しくなってしまう……みたいな議論があります。それはどう感じていますか?

浜村:今のゲームは本当に人とのつながりがあって、誰かと何かを共同でやったりするから、実際には人間関係が深まると思っています。私は毎年、ゲームで知り合った10人くらいの仲間と一緒に、花見やビアガーデンに行っています。例えば、ゴルフや麻雀で人が集まったりすることと同じように、仲間で集まる。ゲームをやる人が増えているだけで、ゴルフとか麻雀とか、そうした媒介が変わっただけだと思うんですよね。

瀬川:なるほど。そう考えれば、コミュニケーションの機会というかきっかけは増えていると。

浜村:そう思いますね。「おひとりさま」って最近よく聞きますが、まさにうちの息子も1人でよく食事なんかに行くんですよ。でも、彼らはSNSなどでいつも誰かとつながっていて、1人だとは感じていない。友達は別のところにいても、常に一緒にいる感覚でコミュニケーションしているんですよ。まあ、煩わしいから1人で食事や買い物に行っている人もいると思いますが。でも、いつでも人とつながろうと思えばつながれるから、どこに行っても寂しくない。その感覚が今は誰にでもあって、特に若い人たちには顕著になっていると思いますね。

瀬川:そして、かつては電車の中でスポーツ新聞を読んでいた人たちは、みんなスマホを見ているという状況になっている。

浜村:そうですね(笑)。

瀬川:雑誌などの紙媒体にとっては深刻な状況です。ネットメディアにも彼らの時間にどう割り込むかっていう課題があります。それについてはどうお考えですか?

浜村:我々も同じ立場ではあるんですけど、実は手段が増えただけだと思いますね。昔は紙で伝えるしか方法がなかっただけで、スマホでいつでもニュースが見られるようになって、僕らが取材して書いた夕方のニュースが、あっという間に拡散される時代になった。動画の生放送中にコメントが寄せられて、その内容さえ、またすぐに拡散される。 だから、我々は紙だけじゃなくWebも動画もやる。動画での人気者を集めてイベントもやる。あらゆることをやらなきゃいけないと思うんです。会社では、「何かを伝えるのが役目。記者もプロデューサーになれ」ということをよく言っています。