BAR CAMPANELLA

あの高梨沙羅が憧れた「スキージャンプの女王」様と出会った

第1回:山田いずみさん(スキージャンプ女子日本代表コーチ)

text by 津田智志/photo by 鎌田雅洋 07.30.2015

「BAR CAMPANELLA」――ここは東京・表参道の青山通り付近にあるバー。エグゼクティブなビジネスパーソンや各方面のスペシャリストたちが夜な夜な集い、「大人の会話」を楽しんでいる。毎週木曜日、雑誌の発行人を務める高柳正盛はこの店に通い、時代の最先端を行く人物たちの刺激的な話に耳を傾ける。今宵も1人の女性が、高柳と共に店を訪れた…。

 今夜の「BAR CAMPANELLA」、ゲストはスキージャンプ女子日本代表コーチの山田いずみである。彼女は日本女子スキージャンプのパイオニア的存在だ。2013年、日本代表コーチに就任したが、現役当時はその圧倒的な強さから「ジャンプの女王」と呼ばれた。高梨沙羅が圧倒的な「女王」として存在するはるか前に、女王は存在していたのである。美しく、そして誰よりも強かった山田は、高梨の憧れの人だった。

 女子ジャンプが競技種目として認められていなかった時代から男子に交じって競技し、日本女子で初めてノーマルヒル飛行に挑むなど、女子ジャンプの将来を一身に背負い、その道を切り拓いてきた。

日本初のスキージャンプ女子日本代表コーチ山田いずみさん(左)、「BAR CAMPANELLA」のホスト役・高柳(右)

伝え方が違っても、目指すゴールは1つです

高柳:昨日(6月14日)、スロベニアから帰ってきたばかりなんですって?

山田:そうなんですよ。で、さっき北海道から東京に着いたばかり。

高柳:それはハードだわ。あ、このインタビューのせいですね、失礼しました。スロベニアは海外合宿ですか?

山田:今回は高梨沙羅の合宿に同行してきました。

高柳:よく、マラソンとかで酸素の薄い高地でトレーニングを積むといった話は聞きますけど、スキージャンプの場合はどんな目的で海外に行くんですか?

山田:まずは、練習に集中したいんです。おかげさまで高梨はとてもたくさんの方々に応援していただいています。でも、その一方でどこに行っても注目されてしまう。うれしい限りなのですが、なかなか落ち着いて練習できないという面があるのも否定できません。なので、海外でジャンプだけに集中できる環境を作るんです。

 もう1つは「本場」に慣れることです。日本のジャンプ台は飛距離が出やすい向かい風が吹く場所に設置されていることが多いのですが、欧州では追い風になりやすいジャンプ台が圧倒的に多い。追い風の方が距離が出ませんから、当然難しいのです。タフな条件下にある欧州のジャンプ台に慣れておくことは必要なんですね。

高柳:なるほど。競技は違いますが、例えばゴルフの全英オープンや全米オープンなどをテレビ中継で観ていると、日本に比べてハードだなあと思います。ジャンプでも似たようなことがあるんですね。日本は何もかも整い過ぎている。だから、日本で練習しただけでいきなり本場の試合に参戦すると、本来の力を発揮できない、こんなはずじゃなかったなんていうことが起きてしまうんだ。

山田:そうなんです。試合では、やはり経験がものを言うんです。

山田いずみさん(スキージャンプ女子日本代表コーチ)
日本女子スキージャンプのパイオニア的存在。2009年の引退試合を優勝で締めくくり、国内ではその圧倒的な強さから「女王」と呼ばれた。引退後、女子スキージャンプの普及・認知拡大のため様々な場所で講演・イベント出演を行う一方、女子スキージャンプ応援冊子『美翔女』を自ら編集長となって発行。

高柳:ところで、山田さんは2年前まで現役選手だったわけですが、女性コーチはいなかった。「いてくれれば、いいなあ」と思ったことはありませんでした?

山田:いないことが当たり前だったから(笑)。でも、もしいたとしたら、もう少し精神面で楽に過ごせたのではないかと思うことはあります。歳の離れた男性コーチだけだったので、遠慮して言いたいことがなかなか言えませんでしたからね。

高柳:やっぱり女性のコーチの方がいい?

山田:男性には男性の素晴らしい面がたくさんあります。なにせ、私は男性のコーチに教えてもらって強くなりましたし(笑)。でも、女子選手の精神状態を理解するという点では、女性コーチが付くメリットもあるのかなと感じます。

 スキージャンプはメンタルが大きく結果を左右するスポーツです。何より気持ち良くジャンプ台に向かうことが一番大切なんです。だから選手が言いたいことを遠慮なく口にして、心を落ち着かせることができるならば、それがいい。私の大きな役割は、選手たちの話を聞くことにあると思っています。

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