コラム名:めがねの旅

フランスで見た、3DプリンタとiPadによる眼鏡づくり

眼鏡スタイリスト・藤裕美が贈る、めがね愛に満ちたエピソード:第5回

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文/写真:藤 裕美

12.15.2016

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世間を騒がせているデジタル技術。この眼鏡業界も、3DプリンターやiPadなどの応用により、これまでになかった大変化が起きそうです。秋にフランスで開催された眼鏡の総合展示会「SILMO」から、注目のデジタル技術をご紹介します。

眼鏡業界では、新型の眼鏡は通例年に2回、春と秋に催される大型展示会に合わせて発表されます。

特に注目度が高いのは、春にイタリア・ミラノで開催される「MIDO」と、秋にフランスで開催される「SILMO」の2つ。展示会は世界各国で毎月のように開催されていますが、ほとんどのブランドがこのMIDOとSILMOに合わせて、新型を発表しています。

眼鏡スタイリストという肩書きで活動している私は、世界の眼鏡業界の動きをチェックするために、この2つの展示会には毎年取材で訪れています。

今回は9月の終わりにフランスで催された展示会・SILMOで出会った眼鏡のお話です。

デジタル技術で眼鏡業界が変わる

今年、眼鏡のトレンドよりも興味深く感じたのが、業界の変化の兆しです。

*眼鏡のトレンドについてのレポートは12月14日発売のアイウエアマガジン「モードオプティーク」(ワールドフォトプレス)でも紹介しています。

今回、私が展示会で注目したのは、タブレット端末です。

さて、これは何をしていると思いますか?

実はこれ、iPadを使用して、顔をスキャンしています。カメラ機能を使って顔をスキャンして、顔幅、鼻幅、耳までの距離などを計測。その人の顔の特徴に合わせたセミオーダーの眼鏡を、3Dプリンターを使用し製作するという新しい眼鏡の販売方法なのです。

手順をご紹介すると、
(1)顔を専用の機械で3Dスキャン
(2)ブランドがデザインしているベースの眼鏡の形(デザイン)を選ぶ
(3)その眼鏡のデータを顔のデータに合わせ、PC画面上でフレームの横幅、鼻幅、レンズと目の距離や角度、テンプルの長さ、色などを決定し入力
(4)画面上にそのサイズの眼鏡をかけた姿が表示される
(5)数週間待つと自分だけの眼鏡が出来上がる

このシステムにより、

「この眼鏡がもっと横幅が広かったら……」
「鼻の高さが合わない」
「フロントとテンプルの色が違うものがあるといいな」

など、デザインが気に入ってもサイズが合わない、あるいは好みの色がないといった理由で諦めていた眼鏡でも、自分の好きなようにカスタマイズして合わせることができるのです。

すごいですよね。

タブレット端末と3Dプリンターでセミオーダーする時代がやってきた

数年前から、眼鏡業界でも3Dプリンターを使用し、作成したフレームは発売されていました。

プラスティック素材の眼鏡は、一枚の板から削り出し、製作する方法が主流です。そのため、1本の眼鏡を製作する際に、素材の9割以上が廃棄となるのです。9割以上とは驚きですよね。

その点、3Dプリンターで製作すると、ゴミが出ないという大きな利点があります。加えて一点一点製作するため、生産段階ではロット数の縛りもなくなります。ブランド側としては在庫を抱えなくてもいいというプラス面もあります。

これらの長所から、ここに来て眼鏡業界においても3Dプリンターは注目のアイテムになっています。

しかし、まだまだ細かいフィッティング(ユーザーの顔に合わせて眼鏡を曲げたり伸ばしたりして快適に眼鏡をかけられるようにすること)ができなかったり、色のバリエーションが少なかったりといった点で、3Dプリンターによる製作は浸透するところまでは至っていません。

昨年2015年には、専用の機械を使用して顔をスキャンして、その人に合わせた眼鏡を作るセミオーダーの3Dプリンター眼鏡が発表されました。まだ実際に店舗に導入という段階までは至っていませんが、顔をスキャンすることにより、懸念されていたフィッティングの問題が少し改善できるという大きな前進がありました。

そこから1年が経過し、今年2016年はタブレット端末を使用し、顔をスキャンできるシステムが開発されました。その影響もあって、SILMOの会場内はこのようにタブレット端末を使用した3Dプリンターで製作する、セミオーダーができるブランドが数社出現していたのです。

顔をスキャンするための専用の大きな機械が必要だった1年前は、多くの眼鏡店に導入するのは難しいと考えられていました。しかしタブレット端末を使ったシステムであれば、店舗での3Dプリンターによるセミオーダーは比較的容易に実行できます。店舗で簡単に顔のスキャンができるとなると、一気に導入できるお店は増えるでしょう。

ただ私の感覚では正直、どこまで快適性の高いセミオーダーフレームが出来上がるかはわかりません。

まだまだスタート地点ではありますが、このシステムで眼鏡を販売するのも当たり前になるかもしれない。そんな気配を感じました。

近い将来、眼鏡店には眼鏡はほとんど並んでおらず、タブレット端末と3Dプリンターを使ったセミオーダー方式で眼鏡を販売する形式になるかもしれません。

それはそれでさみしい気もしますが、時代の変化は、こうして始まるのかもしれませんね。

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