話せばわかるものなのか。

第6話 クリスマス・シケテマス

文:ひきた よしあき / イラスト:もとき 理川 12.22.2016

「若い人たちがわからない」若手とのコミュニケーションに悩む大人世代は数多い。名スピーチライター・ひきたよしあきさんが贈る、コミュニケーションのヒントたち。今回は、シケテルけどイケてる、不思議に面白いクリスマスパーティーの話。(カンパネラ編集部)

クリスマス近くの休日に、一軒家に集まる。
ガリレオの異名をとるデザイナーが自分で建てた家だ。
20年も前に、同じクリエイティブ・チームにいた。
そこに関わったクリエーターやスタッフの男女7人が、
だらだらあつまり、夜遅くまで奥様の手料理やみんなが持ち寄ったものを
食べながらひたすらしゃべる。

集まり始めた当初は、ただ会社帰りにおしゃべりをするだけだった。
同じチームなので話が濃い。
ついつい、うわさ話や、愚痴でうっぷんを晴らしてしまいがちだが
結局は後味が悪い
あるときガリレオがこう語った。

「グチもうわさ話もいいけれど、なんか
 楽しくねぇよな。こうやって傷なめあうより、
 なんかもうちょっと軽い飲み会にしたいよな」

彼の案はこうだ。
グチやうわさ話をなくしてしまうとつまらない。
しかしそれが、誰かの悪口やネガティブな方向に
ならないようにしたい。

「話の最後にさぁ、『シケた話だよなぁ』
 ってつけて終わるくらいでいいよ。
 暗く、重くしないのもセンスだよ」

みんなが話を聞きおわったあと、

「シケてんなぁ!」

と言って笑う。悪口をシケたオチの落語にしてしまう
話術の会に変えようというのだ。

会の名前は「シケ会」となった。

それぞれがシケたネタを持ち込んで披露する。
それを聴いて
「シケてんなぁ」
と言って笑い、飲む。
これを数年続けているうちにあることに気づいた。

悪口やうわさ話は、組織が変わり、
チームがバラバラになると面白味がなくなる。
立場が変わり、生活が一変すると、
もうつきあえなくなる。
しかし、シケた話は物語だ。
仕事や生活を軸とした落語なのだ。
環境変化とは無縁の強いチームになっていった。

女性の中には一般職から総合職に変わる人がいた。
結婚して子どもができた人もいた。
シケた話の中に、子育てが混じったりするうちに、
その旦那も仲間に加わった。
大学時代から知っている女性が世代を超えて入ってきた。
その子が結婚すると、夫婦で参加するようになる。

年に一度、クリスマスのときに
ガリレオ宅に集まる。
奥様の手料理を運んだ小学生の子が、今や大学生だ。

赤ちゃんが寝ている。
新婚が並んでいる。
歌い、飲み、床に寝転がって
話し込み、腹いっぱいに食べて、
大きなクリスマスツリーの前で、
毎年、記念写真を撮る。

「メリー・シケテマス!」

と声を出す仲間は、同僚をはるかに超えて、
今や親戚同然。
悩んでも愚痴にならず、
変化にもうわさ話に陥らず、
「シケてんなぁ」
でニコリと笑う仲間とは、
きっと死ぬまでのつきあいになるだろう。

もうすぐクリスマスがやってくる。

今年また、
メリー・シケテマス!

ひきた よしあき

1960年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学法学部卒業。博報堂クリエイティブプロデューサー、スピーチライター。学生時代から第8次「早稲田文学」学生編集委員、NHK「クイズ面白ゼミナール」のクイズ制作などで活躍。84年(株)博報堂入社。クリエイティブディレクターとして数々のCM作品を手がける。また、明治大学をはじめ多くの大学で講師を務める。15年、朝日小学生新聞でコラム「大勢の中のあなたへ」、コラム「机の前に貼る一行」を連載。著書に『あなたは言葉でできている』(実業之日本社)、『ゆっくり前へ ことばの玩具箱』(京都書房)がある。