イングレスで町おこし

これは意外!スマホゲームと地域おこしの組み合わせ

イングレスでたどる歴史の旅:津久井街道を歩くパート1

文:伊藤 学 10.29.2015

スマートフォンを利用した拡張現実ゲーム「イングレス」を使った、地方の史跡巡りが注目を浴びている。江戸時代の人々が歩いた叙情あふれる街道を、現代のスマホユーザーたちがたどる旅。2回にわたりレポートする。

いま、世界各地でスマートフォンを片手に街中を歩き回るゲーム「Ingress(イングレス)」で遊ぶ人が増えている。

このIngressは拡張現実(Augmented Reality)技術を利用したオンライン位置情報ゲームだ。Googleの社内スタートアップの取り組みとして始まったもので、2015年8月にGoogleからの独立を発表したNiantic Labs(ナイアンティックラボ)が開発・運営している。

Ingressの最大の特徴は、ゲーム内の世界と現実空間が結びつけられていること。Ingressでは現実空間(世界の各地)に「ポータル」と呼ばれるチェックポイントが複数設定されている。プレーヤーは2つチームあるうちのいずれかを選択。チームごとにポータル同士を「リンク」でつなげ、「コントロールフィールド」と呼ばれる三角形の自軍陣地を形成し、その面積の大きさを競う。

プレーヤーは自分たちのコントロールフィールドの面積を相手のチームよりも大きくすべく、スマートフォン片手にポータルが設定されている地点を歩き回ることになる。ゲーム内に作られた仮想空間と現実空間を相互に行き来しているような体験ができる。これが拡張現実技術を使ったゲームの面白さである。

日本国内、そして海外の各地でIngressの大会が行われている。一度世界大会を行うとなれば、このゲームのために5000人、6000人ものプレーヤーたちが各地から集まってくるというのだから興味深い。8月時点の発表では、Ingressのアプリケーションは世界で1200万件ダウンロードされているという。

2015年の秋で3年目を迎えるこのゲームは、日本国内でもコンビニエンス・ストアチェーンや飲料水メーカー、大手銀行が関与するほどに注目を浴びている。例えばコンビニエンス・ストアチェーンはプロモーション効果や集客を狙い、各地のコンビニ店舗をポータルに設定した。

最新ゲームを用いた地域活性イベントの試み

そのIngressで、1年ほど前に「MISSION(ミッション)」という機能が追加された。この機能に、地方自治体や地域の商店街などが少しずつ注目し始めており、各地でIngressを使った地域活性イベントが増えつつある。

今回は、筆者が企画し提案した地域の歴史を再発見するウォーキング企画と、実際のイベントの様子について報告する。

津久井街道

舞台となるのは「津久井街道」だ。現在の東京都世田谷区三軒茶屋を基点に、登戸から西へ生田・柿生・鶴川に向かい、鶴見川の上流に沿って橋本・津久井地方へと通じている。

この街道は、東京・四谷から甲斐国(現・山梨県)へと伸びる甲州街道の裏道として、江戸時代に活用されていた。主に津久井・愛甲地方で生産される絹や鮎(アユ)、麻生地区の特産品である禅寺丸柿、多摩丘陵の森林でつくる黒川炭などが、この道を経由して江戸に送られたことから栄えた道である。

現在の津久井街道は戦後の人口増加と自動車の普及に対応すべく整備され、「東京都道・神奈川県道3号世田谷町田線」という名前になっている。しかしこの世田谷町田線を地図でよく見ていくと、昔の街道跡や当時の人々による生活の跡が残っていることに気づく。

こうした街道跡や生活の跡を、先に述べたIngress内のミッションという機能を使っていわゆるウォーキングコースとして形成し、「旧道を再発見しよう・歩こう」という企画にまとめ上げた。さらには川崎市北部周辺でIngressをプレーするプレーヤーもこの企画に加わり、合同企画となった。

10月4日(日)、本企画を記した筆者の解説を加えつつ、実際にみんなで歩いてみようというイベントが開催された。当日の様子を交えながら紹介していこう。

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