ミシュラン三つ星をほぼ食べ尽くした男の忖度のない美食論

バルセロナの新三つ星「アバック」のスペシャリテ、マグレ鴨のローストに大満足

第4回 フジヤマの「ミシュラン三つ星を追いかけてスペインとフランスを巡る旅」その1

文・特記なき写真:藤山純二郎 06.12.2018

世界中のミシュラン三つ星レストランを追い求め、旅を続ける藤山純二郎さん。2018年6月までに、すでに120軒を超える三つ星を制覇しています。その藤山さんに肌で感じたミシュラン三つ星の魅力を語っていただく本連載。第4回は、2018年版のミシュランで新たに三つ星を獲得したスペイン・バルセロナの「アバック」(ABaC Restaurant & Hotel)を訪問したときのエピソードを披露してくれます。

今年のゴールデンウィークに、スペインとフランスを巡る7泊9日の旅に出かけた。目的は、2018年版のミシュランで新たに三つ星を獲得した3軒のレストランを訪問すること。スペイン・バルセロナ市内にある「アバック」、スペイン・セビリア郊外の大西洋岸のエル・プエルト・デ・サンタマリアにある「アポニエンテ(Aponiente)」、そしてフランス南東部の地中海沿岸の都市トゥーロン郊外ル・カステレにある「クリストフ・バキエ(Christophe Bacquié)」である。今回から3回続けて、これらの新三つ星レストランについて、私なりの美食論をお届けしようと思う。

ミシュラン三つ星の定義は、「そのために旅行する価値がある卓越した料理」。今回、最初に訪問した新三つ星レストランは、バルセロナ市内北部にある小規模な豪華ホテル(レストラン)の「アバック」だ。

アバックは地下鉄ティビダボ(Tibidabo)駅地上出口の真ん前にあった。15室だけの小さなホテルのレストラン。三つ星レストランがメインで、泊まれる部屋もあるオーベルジュという表現が正しいだろう。

上から、アバックの外観、中庭、ホテルのエントランス

約100年前の建物を改修したスマートでモダンな内装が目を引く。部屋には高級ベッドやシックなバスルームなど贅沢なアイテムを備えている。小ホテルでは珍しく、フルサービスのスパや温水プールも併設されている。

いきなりシェフのジョルディ・クルス氏と対面

じつは、アバックについては今回の旅で2回訪問した。4月29日日曜日の朝食と翌4月30日月曜日の昼のコースを堪能した。アバックは大都市の三つ星レストランとしては珍しく、昼・夜ともにまったく無休。28日の土曜日にスペインに着くので、できれば日曜日のお昼に行きたかったが、満席で予約が取れなかった。地元の人は土日に行きたいわけで、特にスペインは、明らかに夜よりも昼のほうがメイン。ここがフランスやイタリアと違うところだ。

余談だが、スペイン人は朝のスタートが遅い。スペイン人の一日の食事の中で一番ウエイトを占めるのはお昼。アバックの昼のコースの予約は午後1時からだが、スペインの他の店は大体1時半からが普通だ。

若手カリスマシェフのジョルディ・クルス氏と厨房にて

話をもとに戻そう。30日の月曜日に、アバックの昼のコースを予約できたので訪問する。シェフに会いたいとリクエストをしたところ(もちろん予約時にお願いしておく)、厨房に通され、若手カリスマシェフのジョルディ・クルス氏と写真を撮らせてもらった。とても気さくなイケメンのシェフだった。

シェフとの面会をリクエストした予約客に対しては、完全に流れができているようだ。最初に厨房に案内し、シェフと対面。そこで3つの前菜を提供、それからメインダイニングに誘導する。そのあとはもうシェフのクルス氏はテーブル席には出てこなかった。厨房でいきなり客と対面してサプライズをプレゼントするという趣向なのだろう。

アバックのメインダイニング。窓がとても大きく、中庭の美しい緑を満喫できる窓際の席に座った