ミシュラン三つ星をほぼ食べ尽くした男の忖度のない美食論

なぜ僕は、世界のミシュラン三つ星店を98%以上制覇するほどの美食家になったのか

第1回:フジヤマの生い立ちと食べ歩き人生のはじまり

文:藤山 純二郎 / 写真:長坂 邦宏(特記なき写真) 01.11.2018

2017年版のミシュラン三つ星レストランは、世界に119軒。そのうち117軒を28年の歳月をかけて自費で食べ歩いたのが、藤山純二郎さんです。この「偉業」のためにつぎ込んだお金は総額6000万円。本連載では、藤山さんが肌で感じたミシュラン三つ星の魅力を語っていただくとともに、その磨き抜かれた舌にかなった『「三つ星」基準ではないけれども、十分楽しめる日本のお店』を紹介していたただきます。

『世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行』(KKベストセラーズ)
単行本:258ページ
価格:1250円+税
発売日:2017/9/27

僕の名前は藤山純二郎。都内に勤務する普通の会社員である。ひとつ特徴を挙げるとすれば、この28年間で約6000万円をかけて世界のほとんどのミシュラン三つ星店を食べ歩いたことだろうか。

2017年版のミシュラン三つ星レストランは世界で119軒あり、僕はそのうち117軒を制覇した。実に98%以上の達成率。ミシュラン三つ星店の料理を食べることはもはや僕の「生きがい」なのだ。

もちろん店までの旅費も、飲食費もすべて自腹。だから店の評価について“忖度(そんたく)なく”ものが言える。この連載では、僕がこれまでの人生でいろんな店を食べ歩き、磨きをかけてきた(肥やしてきた?)舌でもって、おいしいと思える料理店を紹介していこうと思う。

だがその前に、「本当にミシュラン三つ星店をほとんど食べ尽くしたの?」と疑う人もいるだろうから、なぜ僕が世界のミシュラン店を食べ歩く美食家になったかについて簡単にお話ししておこう。

年末年始は「川奈ホテル」が常宿だった子ども時代

幼少時の僕は、祖父と一族で年末年始に名門クラシックホテルの「川奈ホテル」に宿泊するのが定番だった。特に大みそかの夜は、川奈ホテルのメインダイニング(フランス料理だったと思うが、定かではない)で毎年ディナーを食べた。長時間に及ぶ食事は、幼いころの僕には苦痛だったが、それも徐々に慣れていった。

川奈ホテルが常宿? そう聞いてただならぬ気配を感じた読者の中には、藤山愛一郎という名前を聞いてピンとくる人がどれくらいいるだろうか。今の安倍晋三・内閣総理大臣の祖父、岸信介内閣で外務大臣を務めたのが、藤山愛一郎(1897〜1985)、僕の祖父だ。

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川奈ホテルで大みそかから正月の数日間を一族で過ごす時の祖父のうれしそうな顔は今でも忘れられない。僕にとって藤山愛一郎は厳しい顔つきの政治家のイメージはない。ものごころついた頃には、すでに白髪に眼鏡、優しいまなざしの、いかにも品のいい好好爺だった。

川奈ホテルだけではない。僕は祖母や両親にいろんなところに連れて行ってもらった。よく行ったのは、飯倉片町のイタリアンレストラン「キャンティ」。ホテルオークラや帝国ホテルにもよく食事に出かけた。10歳前後でこうした店に出入りできたことは、僕のその後の人生に大いに役立ったのはまちがいない。