インタビュー 情熱と挑戦の先に

ラップを愛する人が増えれば世界は変わる──晋平太

晋平太 ヒップポップ・アーティスト(後編)

文:十代目 萬屋五兵衛 / 写真:山田 大輔 12.14.2017

実力派ラッパー・晋平太(しんぺいた)。MCバトルの世界で数々の勝利を勝ち取ってきた。「ラップは誰にでもできる表現方法」と断言する晋平太は、企業や子供たちにもラップを広めようと活動する。ラップの可能性を信じる“ラップの伝道師”、晋平太の道程をたどる。(後編、敬称略)

(前編はこちら

1年間のトレーニングを積んで挑戦した、2度目のMCバトル大会「ULTIMATE MC BATTLE(UMB)」。晋平太は順調にその東京予選を勝ち抜き、本戦へ進む。

1回戦は、関西で頭角を現していた若手MCの「R-指定」だった。そのバトルは、延長のまたその延長にもつれ込む。今でも名勝負と言われる大接戦になった。

「年下で、すごくうまいやつだということは知っていました。でもまさか、そんなR-指定と初戦で対決するとは思ってもいませんでした。

実は、試合が終了した時点では勝利の手応えを感じていました。しかし、蓋を開いてみれば引き分けの延長戦でした。そういう時の精神的ダメージは、やはり大きいです。やばいなぁというイメージを残したまま、延長戦に突入しました。

実は、バトルをやりながら、負けたと思っていました。それだけR-指定の表現は、僕を翻弄していたんです。

努力してもダメなことってあるんだな、とステージの上で思っていたら、結果は、何とまた引き分けだったんです。有り難い!生き残った!とホッとしたのと同時に、新しいスイッチが入りました。

R-指定はおそらく勝ったと思っていたのだと思います。明らかに落胆しているのを感じました」

延長に継ぐ再延長の末、晋平太は強豪を倒し、そして、その勢いのまま目標だった優勝を手にする。

「R-指定とのバトルを勝てたことが大きかったです。ここぞという一瞬をモノにできた感覚はありました。その一瞬がなければ、日本一にはなれませんでした。今も郵便局員のままだったかもしれません」

2010年、晋平太はUMBで優勝し、最強のラッパーとしての栄誉を手に入れた。翌年2011年のUMBでも勝利。2連覇で晋平太は波をつかんだ。

「5年ほど勤めていた郵便局を辞めました。もう、ここまで来たらもっと振り切ってやってみようと思えたんです」

本格ラッパーとしての人生がスタート

UMBの2連覇で、晋平太は誰もが一目置く存在になっていた。そして、自身も本格的なラッパー生活にシフトした。

また晋平太はMCイベントの司会として、全国各地を回る役割を託されるようにもなった。いわば裏方の役割を担いながらも表に出て活動する格好だ。

「僕は、プレーヤーとして、また司会者として、数え切れない試合を経験し、その空気を感じられる場所にいることができました。改めて、ヒップホップは面白いしラップ自体はかっこいいと再確認できた経験でした」

そんな中、前述したテレビ番組「フリースタイルダンジョン」が2015年にスタート。冒頭に述べたように、晋平太は2年後にここで初の完全勝利を収めることになる。

実は、番組が始まった当初、晋平太は審査員席に座っていた。晋平太はわざわざプレーヤーとして戻った格好である。その理由を晋平太は次のように語る。

「UMBで勝ってから5年以上が経過していました。その間にUMBで4年間司会をさせてもらう中、新しいMCバトルの流れを感じていました。

新しい世代の人たちは、5年前の僕のことなんか知らない人もいます。そういう変化を感じながら、今の自分がどこまで通用するのか、自分のスタイルをもう一度、提示してみたかった。

また、自分のその先にある姿を明確にしていくためにはどうしたらいいかと考えた時、フリースタイルダンジョンがその機会になると思ったんです」

決して引退をしたわけではないが、審査員として一歩離れた立場にいた晋平太。そんな晋平太は、MCバトルを見ながらプレーヤーとしてのモチベーションを刺激されていたのだろう。

晋平太が出場したフリースタイルダンジョン決戦の映像を観ると、激しいのせめぎ合いが確認できる。それぞれのMCが背負ってきたプライドや感情のぶつかり合いとも言える。収録会場のオーディエンス、番組のファン、業界関係者たちを興奮させた。

「MCたちはそれぞれ、MCとしてのマニフェスト(公約)のようなものを心に秘めて活動していると思います。それを、対戦相手にぶつけ合ったような試合だったと思います」

番組そのものは複数回分に編集されており数週にわたって放送されたが、実際には、ステージに登場する晋平太は一度もステージから降りず、5人のモンスター(対戦相手のMC)たちと対峙(たいじ)した。

推進力となったのは、晋平太の中にある、ラップに対する純粋な思いだ。

「僕は、ラップは不良だろうが、ストリート育ちだろうが、引きこもりだろうが、ニートだろうが、中年だろうが、老人だろうが、子供だろうが、誰にでもできる表現方法だと思っています。自分は、そんなラップに救われてきました、だからこそ、ラップやMCバトルで教わった、ラップの可能性やそのすばらしさを伝えたいと思っています」