ミッドナイト・インタビュー

「社長の戦略が分からない」と言われて マネーフォワード辻庸介社長・前編

聞き手:カンパネラ編集部/文:西本 美沙 /写真:的野 弘路 05.23.2017

おいしいお酒を酌み交わしながら、注目企業の社長の本音に迫る「ミッドナイト・インタビュー」。今夜はマネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介氏です。「マネーフォワード」は、2012年に誰でも簡単に自動で家計簿が付けられるサービスとしてスタート。現在、利用者は500万人を超えています。また、企業向けのクラウドサービスの「MFクラウドシリーズ」も提供。金融機関との提携も積極的に進めています。
辻氏は大学卒業後、ソニーに入社。その後、マネックス証券にてマーケティング部長を歴任し、2012年に6人でマネーフォワードを設立。そんな辻氏の素顔に迫ります。

― まずは乾杯。

― ここは行きつけのお店なんですか?

辻:そうですね。ここ美味しいんですよ。お酒が本当に美味しい。会社も近いのでよく使っています。

社員の経営に対するアンケート、「見るのはめっちゃ嫌」

― 美味しいですね。マネーフォワードって今社員は何名でしたっけ? 急激に大きくなっているので会社の仕組みづくりとか大変じゃないですか?

辻:今、230人ぐらいです。仕組みづくりに関しては意外と大丈夫ですよ。人事部長はじめ、当社人事部がすごいんです。結局、自分たちが何のためにここに集まっているのかというミッション、ビジョンの共有が重要。そのために社員ときちんとコミュニケーションをとって、月に1回、一対一で必ずミーティングをしています。

あとは半年に一度、定点観測的に全社員に無記名で会社や経営陣に対してどう思うかなどアンケートをしています。たくさん項目があって、それを5点満点で評価してもらいます。そうすると会社に足りていない部分と評価が良い部分が出てくるので、その弱い部分にテコ入れをしていきます。アンケート結果は半年でかなり変わりますね。

半年に1回、社員総会もしていて、そこでは、僕や各事業の責任者が話します。それも評価対象になります。僕のセッションが分かりにくかったといったコメントもオープンにします。

正直、経営陣に対するアンケートって見るのはめっちゃ嫌です。今までのアンケートで「社長の戦略がよく分からない」というのを見た時は一番へこみましたね。あれだけ言っても伝わらないのかと、とにかく猛省です。

「上司はしゃべるな、部下の話を9割聞け」

― なかなか辛辣ですね。経営陣が社員に評価されるのは怖いですね。逆に社員の人たちを評価する時はどうですか?

辻:僕らって起業した時、人に評価されるなんて嫌だと思う人ばかりだったんですよね。いい仕事をしているかどうかは自分が分かるから、自分の評価は自分で決めるという感じでした。でも社員が50人くらいになったときに、「辻さんの目が届いてない」「自分がどう評価されているか分からないから評価体系が欲しい」と言われました。

その時に評価って何だろうという議論をしたんです。上から評価されるってどこか嫌なイメージがあるじゃないですか。でも本来は、人のいいところを評価して、褒めて、課題を改善することが重要なわけです。奇麗事に聞こえるかもしれませんが、評価は人を成長させる仕組みのはず。だから、エバリュエーション(事後評価)ではなく、「マネーフォワードグロースシステム」と名づけて、成長につながるアドバイスをしています。

結局、ベンチャーは人がすべてです。採用は頑張るのに入った後で野放しになって人が辞めてしまう。いろんな原因がありますけど、よくあるのは上司と部下で評価の乖離(かいり)があることですよね。上司は「部下はできてないのに頑張っていると思っている」と言い、部下は「こんなに頑張っているのに評価してくれない」と言う。上司が期待している部分とずれているんですよね。

それってどちらにとっても不幸ですよね。だから月に一度、重点項目を3項目挙げて、それに対しては何を期待しているのか、実際の評価を書いて、それを基にどうだったかを話し合う。これを毎月すると互いの目線が合ってきて、月を経るごとに会話が深くなっていきます。

部下とよく話すと言っている上司って、仕事のやり取りをしているだけで一対一で真剣に部下の話を聞いているわけじゃない。だから僕は「上司はしゃべるな、部下の話を9割聞け」と言っています。でなければ、部下は話をしにくい。日本の古い企業になればなるほど「お前、言わんでも分かるやろ」という暗黙の了解もありますからね。