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脱サラして「イチゴの神様」になった男

トップパティシエが絶賛する、野口圭吾さんの“ストロベリー・ドリーム”

文/写真:須田 泰成 06.16.2016

栃木県宇都宮市にあるユニークなイチゴ農園「ハート&ベリー苺」。オーナーの野口圭吾さんは、国内のトップパティシエに「イチゴの神様」と呼ばれるほど。その栽培法とビジネスに迫る。

イチゴ生産高日本一を誇る栃木県の宇都宮市で、「とちおとめ」を始めとしたイチゴの生産と販売を行う農園「ハート&ベリー苺の楽園」。ここを経営する野口圭吾さんは、35歳だった17年前、年収1000万円を超える待遇を捨て、脱サラの道を選んだ。

「東京の自宅を売って栃木に来ました。農業関係の知り合いが一人もいなかったため、一からのスタートでした」

全国的に農業従事者の高齢化が進む中、都会からの移住者は有り難い存在。しかし、田舎での新規就農は、理想と現実のギャップが大きく、挫折に終わるケースも少なくない。

キャプション:野口圭吾さん。農園の前で

しかし、野口さんが10年以上かけて培ったイチゴの生産と販売のスタイルは、閉塞感の漂う現状を打開する新しいモデルである。

そのイチゴビジネスは、例えば、こんな一皿に象徴される。

冷製フォアグラのフランのイチゴ添え、蜂蜜のクレーム、白トリュフオイル風味

「これは、冷製フォアグラのフランのイチゴ添え、蜂蜜のクレーム、白トリュフオイル風味を盛りつけた一皿。30年近い歴史を誇る正統派フレンチの最高級店、有楽町の『アピシウス』で、私のイチゴを材料に作っていただいたものです。世界の美食を経験している方も、あまりの美味しさにうなっていましたね」と、野口さん。

フォアグラが3層になり、その一つにイチゴの味が練り込まれている。それぞれの味を楽しめるだけでなく、3種類の味覚が舌の上で溶け合い、食した人を、めくるめく味覚の世界の高みへと誘う。

「アピシウスは、帝国ホテル東京と並び、うちの業務用のお客様としては最もお付き合いが長いレストランです。高品質のイチゴをつくり、わかる人に届け、イチゴの可能性を高めたい。それだけを考えて、日々、研さんに励んでいます」

野口さんが抱く“ストロベリー・ドリーム”に迫る。