イノベーションこそが老舗を支える

「なだ万」の日本料理×ワイン、新しいおいしさに感動!

「渋谷 なだ万茶寮」料理長兼ソムリエが創る新たなマリア―ジュ

text by 源川暢子 photo by 山出高士 11.05.2015

“老舗はいつも新しい”というコンセプトの下に、伝統を守りながら常に進化を続けている日本料理店「なだ万」。今回は「イノベーションこそが老舗を支える」第3弾として、ソムリエを兼務する「渋谷 なだ万茶寮」の剱持慎(けんもち・まこと)調理長に、進化を続ける日本料理とワインのマリアージュについて取材した。提案いただいたマリアージュは、まさに驚きの世界だった。

日本料理に合わせるお酒といえば、日本酒やビール、焼酎などが定番だが、それに加えて、ここ数年じわじわと人気が高まっているのがワインだ。「日本料理にワインは邪道」と言われたのは、もはや昔の話。最近ではむしろ、日本料理の新しい楽しみ方として、ワインとのマリアージュが注目されている。日本料理店や寿司店でも、多彩なワインをそろえるケースは少なくない。

日本料理の伝統を守りつつ、絶えず進化を続けている「なだ万」は日本料理の新しい魅力を追求し続け、ワインとのマリアージュを早くから提案してきた。そこで今回は、「渋谷 なだ万茶寮」(東京・渋谷)で調理長兼ソムリエとして腕をふるう剱持慎氏に、日本料理とワインのマリアージュについて取材。そのお勧めのマリアージュを、実際に体験させていただくことになった。

渋谷・東急百貨店本店8階にある「渋谷 なだ万茶寮」。親しい仲間との食事にはもちろん、個室も用意されているため接待などにも利用される

剱持氏は、帝国ホテルの「東京 なだ万」で10年修業の後、商品開発部門を経て現店の調理長に就任。途中、フランス料理店でも2年ほど調理の経験を積んでいる。「日本料理だけでなく、フランス料理も勉強することで自身の料理の幅を広げたかった」と話す剱持氏。フランス料理を手掛けるうちにワインの魅力にはまり、独学でソムリエの勉強を始めたという。同店でも「ソムリエ調理長おすすめ」と銘打って、剱持氏が料理に合わせてワインをセレクトするサービスが評判となっている。

「今日は、洋風のテイストを加えた料理や、『なだ万』の看板料理をアレンジした一品など、当店らしい味わいとワインの新しい出合いを楽しんでください」。剱持氏のそんな言葉に、取材を進めながらマリアージュへの期待は一段と高まる。そしていよいよマリアージュの体験、となった(以下、いずれの料理も「渋谷 なだ万茶寮」でのみ提供)。

フレッシュな素材を引き立てる、白ワインのミネラル感!

「ズワイ蟹と榎本農園トマトカッペリーニ」1500円(税込み1782円)

最初の一品は、フランス料理のオードブルを思わせる「ズワイ蟹と榎本農園トマトカッペリーニ」。みずみずしく、ほどよい甘酸っぱさが特徴の榎本農園(埼玉)のトマトは、剱持氏のお気に入りの素材。このトマトを主役に、旬のズワイ蟹と、大葉の香りやだいだい酢のフレッシュな酸味がきいたソースで和えたカッペリーニ(細いパスタ)を合わせた軽やかな一品だ。

榎本農園のトマト。カッペリーニの主役になっていた「ぷちぷよ」は、まるでサクランボのような味わいだ

料理に合わせて剱持氏がセレクトしたワインは、ソーヴィニヨン・ブラン100%の「サンセール」(パスカル・ジョリヴェ)と「セラー・セレクション・ソーヴィニヨン・ブラン」(シレーニ・エステート)。「ソーヴィニヨン・ブランの青っぽいハーブのような香りは、和のハーブでもある大葉の香りやだいだい酢の柑橘系のフレッシュ感、トマトのほどよい酸味とよく合います」(剱持氏)。

こうした剱持氏の説明を受けて実際に食してみると、1品目から絶妙のマリアージュ。トマトやズワイ蟹、カッペリーニなど、料理に入っているものそれぞれの味わいが、サンセールのすっきりとした香り、ミネラル感と合わさることでより引き立ち、奥行きが増してくる。なんとも不思議な世界に引き込まれたよう。

数々の料理人を取材してきたライター源川も、最高のマリアージュに笑みが……

カッペリーニソースに加えられた、カリカリ梅の食感と甘酸っぱい風味もほどよいアクセントで、これもワインとすっとなじんでいくような味わい。まさに、互いに邪魔せず、味に広がりが出るという関係。次の料理への期待感が、大きくふくらむ。

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