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スマホ参加型テレビCMで「キリン のどごし」クーポン6万本が20分で払底
【特集】テレビは沈みゆく船か(前編)

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  • 2017年7月21日 金曜日
  • 中村 勇介=日経トレンディ

スマホ利用の拡大で視聴時間は減少する一方だが、いまだリーチ力を無視できないテレビ。視聴データに基づく広告配信など、テレビ活用の最先端を追った。

 「想定を超える早さで配り終えたため話題が継続せず、Twitterの話題のキーワードランキングで上位に入れなかった」。キリンビールマーケティング本部マーケティング部メディアグループの波多野潤リーダーは、驚きと無念さが入り混じった顔で語る。

キリンは「だるまさんが転んだ」にスマートフォンで参加できるテレビCMを6月20日に放送した

 同社は6月20日に、新ジャンルビール「キリン のどごし スペシャルタイム」の参加型テレビCMを放送した。CMの最中にスマートフォンでキャンペーンサイトを訪れ、CM内のゲームに参加することで、無料でビールを1本引き換え可能なクーポンをもらえる企画だった。用意したクーポンは6万本分。それが20分で底をついた。本来なら放送後も話題が続き、キャンペーンがTwitterで話題のキーワードのランキングの上位に入るはず。そう目論んでいた。それによりブランドとの接点の拡大を狙っていた。ところが、異例の早さでクーポンがなくなり、ランキングは13位にとどまった。

 これはテレビのリーチ力が健在であることを端的に表す事例だが、そのテレビは今、苦境に立たされている。スマートフォンの普及、ソーシャルメディアの利用拡大、アプリを軸とした新興メディアの勃興──。メディアやサービスの間で可処分時間の奪い合いは熾烈を極めている。

 博報堂DYメディアパートナーズが6月20日に発表した「メディア定点調査2017」では、メディア別1日当たりの接触時間で、若年層を中心に多くの性・年代でスマホによるネット利用時間がテレビの視聴時間を上回る。

 例えば、女性20代のテレビ視聴時間は10年前(2007年)の147.1分から21.9分減少して、2017年は125.2分になった。一方で、携帯電話からのネット利用時間は2007年の25.1分から、2017年には7倍超となる179.2分になり、テレビ視聴時間より54分も 多くなっている。

 こうした環境の変化を好機とみたネット広告事業者は、テレビに使われていた広告予算を虎視眈々と狙う。ある広告関係者はこう明かす。「グーグルを6番目の“局”と見て、そこに広告を出稿してくださいという謳い文句で、広告主に営業している」。「YouTube」を中心としたグーグルの持つリーチ力を生かし、CMに使われていた広告費を奪おうというわけだ。

 だがテレビは本当に沈みゆく船なのか。6月、米民泊大手のAirbnb(エアビーアンドビー)が国内で初めてCMを放送した。住宅宿泊事業法案(民泊新法案)の成立に合わせてCMを放送し、一気にサービスの認知拡大を狙う。世界的なネット企業の雄がテレビを使う。それこそが、国内でテレビがいまだ大きな訴求力を持つ証左に他ならない。

 もっとも、録画視聴や見逃し放送の利用が広がる中、単に放送しただけでは従来ほどの威力は発揮できない。テレビをより効果的に使う上で、いかにデジタルを有効活用できるかが肝になる。テレビとデジタルは二項対立の関係ではない。それぞれの強みを組み合わせることで、その効果は大きく増幅される。冒頭で紹介したキリンビールの事例は、デジタルを活用してCMに全く新しい価値を付加した先例と言えよう。

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