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全てのマーケティングは体験型へシフトする
――1-10design CEO(最高経営責任者) 小川丈人氏インタビュー

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  • 2017年2月17日 金曜日
  • 安倍 俊廣

VR(仮想現実)やAI(人工知能)といった先端技術を活用したブランディング施策などを多く手がけるクリエイティブエージェンシー、1-10design(ワン・トゥ・テン・デザイン、京都市下京区)。同社を率いる小川丈人CEO(最高経営責任者)に、急激に変化しているマーケティングの今後について聞いた。

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ワン・トゥー・テン・デザイン Chief Executive Officer/Executive Creative Director 小川丈人氏:1997年、東急エージェンシー入社。様々な企業のデジタルコミュニケーション企画/制作に従事。国内外の広告賞を受賞。2011年ビルコムのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターに就任。2014年にカンヌライオンズ受賞。2014年1→10ホールディングスに移籍。最高執行責任者を経て、2016年から現職。

デザイン系のクリエイターもいればエンジニアもいる。御社を一言で表すと、どうなりますか。

 当社は、企業のブランドコミュニケーションを、そのブランドの意思を感じ取ることができるコンテンツ(ブランデッドコンテンツ)制作で支援する会社です。

 グループにはほかにも、商品やサービスの開発コンサルティングを手掛ける1-10drive、「Pepper」の会話エンジン開発を手掛けた1-10Robotics、空間エンターテインメントを得意とする1-10imagineといった会社があります。

 私は広告代理店出身ですが、1996年からネットに触れていたことで、黎明期からデジタルコミュニケーションに携わってきました。マス広告がメーンストリームの時代でしたが、「カンヌライオンズ」など欧米の潮流を研究することで、必ずデジタルが中心となる時代がくると確信していました。実際、私が2014年にカンヌライオンズでブロンズを受賞した事例も、体験型のコンテンツとWebサイトを掛け合わせた施策でした。

 こうした流れがあるため、企業が自社のブランド資産を理解することが大切になっているのですが、自らそれを見つけるのは、困難な場合が多いのが実情です。

ブランド資産とは、具体的にはどのようなものですか。

 企業の目指すブランドイメージと、生活者の抱くブランドイメージとの乖離を埋められる、「事実に基づく文脈」のことだと考えています。

 例えば当社のクライアントである日本IBMにとって最大のブランド資産は、コンピューターの歴史を創造してきたヘリテージ(遺産)と、Watsonなどの先端技術によるイノベーションです。しかし同社のターゲットの1つである若年層はそのヘリテージを理解していません。そのため、イノベーションの部分を敷衍(ふえん)するブランデッドコンテンツによって、乖離を埋めるコミュニケーションが必要になるわけです。

 これからのマーケティングは、消費者の気持ちをもっと深く理解することが大切になります。例えば、動画サイトで見たい本編が始まる前に流れるプリロール広告は、恐らく多くの人にとって“邪魔な”存在。わずか数秒ですが、広告が終わるのを多くの人がイライラしながら待っている。こうした広告枠に出稿することが自らのブランドにとって良いことなのかどうか。

 私自身は、そうした枠に出稿するくらいなら、動画そのものを制作し、そこで自社のブランドメッセージを伝えることに注力したほうが良い結果につながると思います。

ブランド価値は、なぜ自分では見つけにくいのでしょう。

 例えば「あなたの長所はなんですか?」と問われた本人が「誠実さです」と答えたところで、その人が本当に誠実かどうかは、初見の他人は判断できません。

 企業は、ブランド資産に基づくブランドとしての姿勢や意思を証明し続ける必要があります。それができてはじめて、消費者とブランドとの間に相互理解が生まれるのではないでしょうか。

その相互理解を深めるためには、どのような施策を実施する必要があるのでしょう。

 カギになるのは顧客体験です。今後は、あらゆるマーケティング施策は体験型にシフトしていくと思います。

 生活者はスマートフォンとSNSを活用し大量の情報から自らに必要な情報を取捨選択し続けています。その際に触れる情報が「事実に基づく文脈」を有していないと一方的なメッセージとして捨てられやすい傾向にあるのは間違いありません。そうした点からも企業は自社のブランド価値と顧客体験とは何かを改めて考えてみる必要があるでしょう。

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