日本でESG投資が拡大した。世界最大の機関投資家GPIFの動きや国策が後押しする。投資家の狙いを見定め、適切な情報開示で投資を呼び込むチャンスが到来している。

 「環境・CSR関係の質問書が投資家や取引先から多数送られ、1年の前半は回答に追われている」「質問書に答え、統合報告書も作成しているが、投資家は本当に読んでくれているのか」「CDPで良い評価結果を得たが株価が上がらない」…。そんな声を企業から聞くようになった。

 企業の環境や社会、ガバナンス(ESG)の取り組みを評価して投資判断に生かす「ESG投資」が日本で急速に拡大してきた。2013年の投資金額は1兆円に満たなかったが、2015年には26兆6873億円に跳ね上がり、2016年には57兆567億円とさらに倍増した(下のグラフ)。サステナビリティ経営に取り組む企業にとっては歓迎すべきことである。

■ 日本のサステナブル投資の金額
出所:日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)
注:「サステナブル投資」の大半がESG に配慮した投資。2013年と2014年の数字は公表されていないため公募のSRI 投資信託とSRIハイブリット型投資信託、社会貢献型債券の合計。2015年と2016年はJSIF による日本の機関投資家へのアンケート結果の合計

 にもかかわらず、投資家と接することの少ない環境・CSR部は、ESG投資の伸びを実感できていない。自分たちの回答や報告書作りは徒労に終わっていないか、不安にかられることもあるという。

 しかし、心配は要らない。労力をかけた回答や報告書は確実に投資家に読まれ、評価に活用されている。ただし投資家の狙いを知り、ツボを押さえて発信するワザも必要だ。

 この特集では、ESG投資の最前線をイチから分かりやすく解説する。経営層を筆頭に環境・CSR部、経営企画室、IR部が連携してESG投資を大いに活用できるよう投資家へのアピールポイントなどを紹介する。

経営層も投資家にアプローチ

 日本のESG投資はこの2年で急激に伸びたことは前述した通りだ。その牽引役となったのが、約130兆円という世界最大の公的年金基金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の動きだ。2015年9月に国連がサポートする「PRI(責任投資原則)」に署名した。PRIはESGに配慮して投資するイニシアチブだ。「巨鯨」がESGに舵を切った瞬間だった。GPIFは約130兆円の資産のうち約30兆円をESGに配慮しながら国内株式に投資する。

 ではどのようにしてESGに配慮するのか。まず乗り出したのが「エンゲージメント」という方法だ。投資する企業と対話をし、ESGの課題に意見を述べたり進言したりすることでESGの取り組みを促進する。GPIFはこの1年間、委託する運用機関を通じて幅広く日本企業にESGエンゲージメントを行ってきた。

 そして、次の一手も打ち出した。ESGに優れた日本企業を構成銘柄とする株価指数(インデックス)を新たに作り、そうした企業への選択的な投資に乗り出す。早ければ2017年3月に開始する。いよいよ本格的なESG投資を実施するわけだ。

 巨鯨が動いたことで日本企業へのESG投資は一気に加速した。GPIFから委託を受けた運用機関がESGに配慮した投資を進めたのはもちろん、他の年金基金も追随したからである。例えば企業年金連合会が2016年5月にPRIに署名した。ESG投資が今後も拡大するのは必至だ。

 投資家の動きに、日本企業の経営層も敏感に反応し始めた。NECや富士通、三菱マテリアルは、投資家を自社に招いてESGの取り組みをアピールする説明会を開いた。2016年10月に開かれたCDP気候変動の日本報告会には、優秀企業(Aリスト)に選ばれた国内22社のうち18社の経営層が駆け付け、選定の喜びとともに温暖化対策の戦略を熱く語った。積極的にESGの情報開示を行い、投資を呼び込もうという気運が高まっている。

■ CDP気候変動の日本報告会に経営層が集結
機関投資家の賛同を得て企業に温暖化対策に関する調査を実施する「CDP気候変動」。2016年10月の結果報告会には、Aリストに選ばれた国内22社のうち18社の経営層が駆け付けた。企業の関心の高さを物語った