企業価値が問われる時代に

 ESG投資は企業の在り方にも大きく影響を及ぼす。世界的にESG投資が加速化したきっかけは2008年のリーマン・ショックだ。財務情報だけで企業価値を判断する限界が指摘され、ESGを含む非財務情報の重要性が語られるようになった。非財務情報は企業のリスク管理と事業継続性に直結すると強く認識された。ESG投資は企業の中長期的な価値向上と持続的な成長を促し、それによって投資家も安定した配当を得られると考えるようになった。

 日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)の荒井勝会長は、「企業に対する社会の見方が大きく変わった」と話す。企業の経営戦略は「CSR(企業の社会的責任)」から社会課題を解決する「CSV(共有価値の創造)」に変わり、企業の情報開示には「財務報告」から「統合報告」が求められるようになった。

 投資の流れも変わった。それまで環境や社会に良いことを行う企業へのSRI(社会的責任投資)はあったが、収益の出にくい投資だった。だが、「PRIの方針で通常の投資にもESGを反映させることになり、収益性とESGが融合された。ESGを入れないと企業を正しく評価できないという考えに変わった」と荒井氏は言う。根底に企業価値や社会的価値を重視する時代の変化がある。国連で2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)も同じ方向を目指すものだ。企業にはSDGsを見据えた事業活動や非財務情報の開示が求められる。

■ 企業に対する社会の見方の変化
出所:JSIF 荒井勝氏の資料を基に作成

 こうした世界潮流に加え、こと日本に関しては国策も後押しした。アベノミクスの第3の矢として民間投資を進めるため、金融庁がESG投資を仕掛けた。2014年に「日本版スチュワードシップ・コード」を策定して投資家に企業の非財務情報の把握を求める一方、2015年には「コーポレートガバナンス・コード」を策定して上場企業のガバナンス向上を仕組んだ。国がESG投資を呼び込むお膳立てをしたのだ。ここに満を持して動いたのがGPIFだった。

 ESG投資には様々なプレーヤーが存在する(下の図)。機関投資家が委託する運用機関は、企業の統合報告書や環境・CSR報告書の他、格付け・評価機関やインデックス会社、情報プロバイダーの情報を参考に、企業と対話して投資判断する。企業には各プレーヤーの特徴や狙いを基にした適切な情報開示が求められる。GPIFの30兆円、日本全体で57兆円に膨らんだ投資を呼び込むために、的を射た報告書作りや質問書への回答、対話の戦略が必要だろう。

■ ESG投資に関する企業と投資家、様々なプレーヤーの関係
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(日経エコロジー2017年1月号から転載)