国内外の両面から、人権が経営リスクになってきた。途上国の委託先工場、国内従業員、外国人実習生の問題が目の前に立ちはだかる。

 2017年11月、日本経済団体連合会は7年ぶりに企業行動憲章を改定した。その目玉となるのは、SDGs(持続可能な開発目標)の促進を前文に盛り込むことと、人権を国内外で尊重して経営に反映させることを1つの条文として新たに設けたことだ。人権配慮は経営の根幹に関わる重要な問題であるという日本の産業界の意思を表明するものである。

 途上国のサプライヤー工場における児童労働などの人権問題、国内従業員の長時間労働問題、そして国内下請け工場で働く外国人技能実習生の強制労働などの人権問題――。日本企業を取り巻く人権リスクは加速度的に高まっている。

 企業のグローバル経営が進み、サプライチェーンが世界中に広がったことで、サプライチェーン上の人権問題はここ数年一気に増えてきた。数年前まで人権問題といえばセクハラやパワハラが中心だと考えていた日本企業も、サプライチェーン上の人権問題で足元をすくわれかねない事態に遭遇するようになった。

 その対応策も道半ばのところへ、今度は電通社員の過労死問題をきっかけに国内の従業員の長時間労働などの問題が噴出。労働基準監督署から是正勧告を受ける企業が続出した。国内の下請け工場で働く外国人技能実習生の労働環境に関する問題も散見されるようになった。

■ 人権や労働に関する国内外の動き
青字は国内の動き
[クリックすると拡大した画像が開きます]

 こうした日本の人権問題に世界も懸念を示している。米国務省が2017年6月に発表した人身取引報告書は、日本の外国人技能実習制度が強制労働の温床になっていると指摘し、日本をこの人権問題における先進的な第1グループの国群から外した。

 ESG(環境・社会・ガバナンス)投資家もまた、日本企業の人権対策をみて投資判断に活用しようと目を凝らしている。世界最大の機関投資家GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2017年7月に開始した日本企業へのESG投資では、社会面(S)の格付けに際して、人権や労働への対応を評価した。インデックスを作った評価機関の1つ、FTSEの調査では、日本企業は総じてEのスコアは高いものの、Sのスコアは世界平均より低いという結果が出た。もう1つのインデックスのESG評価機関、MSCIでは、女性活躍指数の構成銘柄を選ぶ格付けに際して、人権や労働者権利に関する不祥事があった日本企業を22社除外した。

 関心を示しているのは国や投資家ばかりではない。日本企業が製品を納入する欧米の取引先は、日本企業に人権対応の情報開示を求める質問書を送り、取り組みを担保しようとしている。NGOもまた人権侵害を起こしている日本企業に目を光らせている。人権対策はまさに待ったなしの状態にある。

 足元で広がっている人権リスクを3タイプに分けて詳しく見ていこう。