企業と投資家の「対話」のツールとなるのが統合報告書だ。成長戦略をどう分かりやすく伝えるか、4社の事例に学ぶ。

 ESG投資では、投資家と企業のエンゲージメント(対話)が重要な役割を担う。投資家は企業の考え方や取り組みを理解し、企業は投資家のニーズを知ることによりESGの取り組みが強化される。企業にお金が回り、投資家はリターンを得る。ここで重要なのが、統合報告書だ。

 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、運用委託機関が選ぶ「優れた統合報告書」を公表している。選ばれた報告書のうち、オムロン、丸井グループ、味の素、大和ハウス工業の4社のケースを見ていこう。

オムロン:「ストーリー」を見せる

 オムロンは、2012年から統合報告書を発行している。投資家らの声を吸い上げながら年々進化し続けており、2017年8月に公表した「統合レポート2017」では、同社として初めて経営戦略に結び付けた非財務目標を設定した。2017年度から2020年度までの新中期経営計画「VG2.0」に基づくもので、国連のSDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献をうたっているのが大きな特徴だ。

 オムロンサステナビリティ推進室の平尾佳淑室長は、「非財務目標はこれまでもあったが、企業価値にどう関係しているかを示せていなかった」と話す。SDGsと関連付けたのは、グローバルで投資家とコミュニケーションを取る際、どんな社会課題の解決に取り組むかを分かりやすく伝えられる「共通言語」だからだ。

 「SDGsのマークを付けると腹に落ちやすい」(グローバルIR・コーポレートコミュニケーション本部の松古樹美ESG担当部長)

 VG2.0では、2020年度に売上高1兆円、営業利益1000億円を目指している。これを4つの主力事業ドメインごとに分解し、財務目標の達成に貢献する非財務目標を設定した。

非財務のKPIは柔軟に

 例えば、ファクトリーオートメーション事業では、制御機器事業の売上高目標を4800億円とし、非財務目標として「注力4業界におけるi-Automation!を実現する新商品の創出」を掲げている。「i-Automation!」はオムロンの戦略コンセプトで、独自のイノベーションでモノづくりの革新を目指すというもの。非財務目標は定性的なものでもよく、途中経過を計るものも認めるなど柔軟性を持たせている。

 オムロンが重視したのが、経営戦略に結び付けて社会課題を解決する将来像を、ストーリー性を持って示すこと。そのための工夫の1つが、すべてのドメインについて一貫したストーリーで語る手法である。「社会的課題の特定(どのような社会的課題に取り組むのか)」「オムロンの取り組み(提供する商品・サービス、実行計画)」「2020年度目標/KPI(定量・定性目標とKPIの設定)」「社会的価値(どのような価値を社会に提供するのか)」。統合レポートに掲載した各ドメインの戦略は、すべてこの流れで語られている。

■ オムロンは事業が生み出す価値を一貫したストーリーで説明する
主力事業ドメインの取り組みを記したオムロンの統合レポート(左)。主要製品(中)と本社ビル(右)
KPI:重要業績評価指標
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 サステナビリティ日本フォーラム代表理事の後藤敏彦氏は、「ESGの評価機関は大量の情報を網羅的に見て評価するが、機関投資家はそうではない。財務情報と非財務情報との統合が簡潔に分かるものが必要だ」と話す。構成に一貫性があり、内容が伝わりやすいオムロンの統合報告書は、その好例といえるだろう。

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