相馬 隆宏(日経エコロジー)

紙の需要減少が続く中、「総合バイオマス企業」を旗印に新規事業の開発を急ぐ。柱であるセルロースナノファイバーの量産を相次いで開始し、勝負に出る。

 日本製紙は9月26日、江津工場(島根県江津市)でセルロースナノファイバー(CNF)の量産設備(プラント)の竣工式を開いた。2017年、同社がCNFのプラントを稼働させるのは、石巻工場(宮城県石巻市)、富士工場(静岡県冨士市)に続いて3カ所目になる。

 CNFは、紙の原料と同じパルプに含まれるセルロースをナノメートル(ナノは10億分の1)単位まで細かくほぐしたもの。太さは髪の毛の約2万分の1と極細ながら、強度は鉄の約5倍とされる。

日本製紙は、セルロースナノファイバー(CNF)を新規事業の柱に位置付ける。2017年、石巻工場(写真右下)、富士工場(同右上)、江津工場(同左)で相次ぎプラントを稼働開始した。競争が激しくなる中、市場をリードしたい考えだ

 CO2排出規制の強化で、自動車や航空機の燃費改善が一層求められている。部材を軽量化できるCNFは燃費改善に寄与する。経済産業省は2030年に国内のCNF市場を1兆円に育てる目標を掲げており、そのうち4〜6割を自動車用が占める。

 ただし、CNFを自動車部材などとして普及させるためには、製造コストを大幅に下げる必要がある。経産省は、2030年に1kg当たり500円を目標に掲げるが、現在はまだ1桁多いとみられる。日本製紙が他社に先駆けて、数十〜数百t規模で量産を始めたのも、コスト削減へ向けて技術やノウハウを磨くためだ。

 江津工場での量産開始は、「エポックメーキングな年になる」(馬城文雄社長)と表現する2017年の総仕上げともいえる。CNF関連の設備に投じた金額は3工場合わせて31億円に上る。

 電子媒体への移行が進み、紙の使用量は減少傾向にある。日本製紙連合会によると、2016年の紙の国内需要はピークだった2006年から約2割減少。2017年も11年連続で前年を下回る見込みである。

 製紙会社は既存事業の縮小を補うため、新規事業の開発を急ぐ。日本製紙は、「総合バイオマス企業」を掲げて、紙の原料であるパルプの新たな用途を模索する。その筆頭に位置付けられるのがCNFだ。