斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

研究員として新製品開発、営業部署で欧州市場を開拓した。「SDGsの目指す社会は必ず実現できる」と笑顔で話す。

福田 加奈子(ふくだ・かなこ)
1965年東京都生まれ、88年関西学院大学理学部化学科卒業、同年住友化学入社、大阪研究所(現エネルギー・機能材料研究所)配属、2002年化成品事業部、2013年より現職

 住友化学の福田部長と言えば、いまや企業のSDGs(持続可能な開発目標)を語る上で欠かせない1人だろう。入社後は14年間、研究員としての生活を送った。最初は実験などをする合成研究のチームに配属されたが、手先が不器用だったため2カ月で応用研究のチームに配属替えになったという。

 新製品の開発がメインの仕事だ。研究所時代、3年かけて「ポリエチレンの劣化を防止する加工安定剤」を開発した。社内の研究所や工場の協力を取り付けながら進める仕事だったが、「この仕事をして何を目指すか、関係者と共有することをいつも心がけた」。

 2002年に化成品事業部に異動してからは営業の仕事に就いた。自身が開発した商品を含むプラスチック用酸化防止剤を、欧州市場などに営業する責任者になった。仕事が営業になり、現場が海外に変わっても関係者と目標を共有する姿勢は変わらなかった。こうした姿勢が共感を呼んだのだろう。就任中、当初ゼロだったプラスチック用酸化防止剤の海外での売り上げは大きく伸びたそうだ。

 成果を上げ充実した仕事をしていた時に、突然、CSR推進部長の辞令を受ける。専門家だった部署から、未知の分野への異動である。「自分にはやりたいことが何もないという焦りばかりが募った」と振り返る。「自分は分からないのだから、他人の力を頼ろう」。前向きに仕事に取り組めるようになったのは、この発想の転換だった。部下や国内外の関係者に学びながらCSRの仕事に取り組んだ。

 3万人を超えるグループ社員の気持ちを1つにしようと最初に取り組んだアフリカの学校への募金活動は、社員の共感を呼ばず失敗に終わった。だが、住友化学100周年の2015年、自分にできる社会貢献活動を行う取り組み「100年の感謝」が成功し自信を付ける。社内のウェブ上で活動の投稿を募ったところ、約3万2000件が集まった。

 これをもとに2016年、SDGsに貢献する活動や製品のアイデアをウェブ上で募る「サステナブルツリー」の活動に進化させた。他社に先駆けたこうした活動や同社が開発した工場用の網戸がマラリア撲滅に貢献していることなどが紹介され、住友化学のSDGsに対する注目が高まった。

 それに伴いシンポジウムなどに呼ばれる機会が増えた。SDGsを熱く語る姿に共感する人は少なくない。「どのようにすれば実現できるかみんなで考えよう、との目標の掲げ方は素晴らしいと思う」。スーパーポジティブとの自己分析の後には、「SDGsの目指す社会は必ず実現できるという根拠のない自信がある」と笑顔で話した。今後、ますますSDGsの伝道師としての役割が期待できそうである。