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インタビュー

2017年5月8日

エネルギー戦略研究所所長・山家 公雄氏「再エネ普及の本番は2020年の発送電分離後」

聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

電力自由化と再生可能エネルギーの普及で先行する欧州や米国を精力的に調査。発送電分離が実施され、卸電力市場が整備される2020年以降、日本も本格的な普及期に入ると説く。

山家 公雄(やまか・きみお)
1956年山形県生まれ。80年東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。電力、物流、鉄鋼、食品業界などの担当を経て、環境・エネルギー部次長、調査部審議役などに就任。2009年から現職。豊田合成取締役、京都大学大学院経済学研究科特任教授も務める。近著に『再生可能エネルギー政策の国際比較』『アメリカの電力革命』など
写真/中島 正之

――『再生可能エネルギー政策の国際比較』や『アメリカの電力革命』など、2017年に入って再エネ先進国の状況を紹介する書籍を相次ぎ出版しました。

山家 公雄氏(以下、敬称略) きっかけは2014年から5年計画でスタートした京都大学大学院経済学研究科の「再生可能エネルギー経済学共同研究講座」です。「再エネを専門に扱っている大学はない。京都大学が先行して取り組みたい」という植田和弘先生(2017年3月に京都大学を退官)の強い思い入れで開設した講座です。

――植田先生は、2012年の再エネ電力の固定価格買い取り制度(FIT)の導入に向けて、買い取り価格や期間を定めた調達価格等算定委員会の委員長を務めるなど、日本の再エネ普及に大きな役割を果たしました。

山家 この講座は、大学の研究者だけでなく、実際に事業をしている民間企業の人たちが参加する共同講座にしたことが特徴です。1カ月に2~3回のペースで集まり、研究を深めてきました。海外調査も1年間に1~2回実施しています。その大きな目的は、再エネに関する中立性の高い研究をすることです。『再生可能エネルギー政策の国際比較』は、その最初の成果物です。

――日本と欧米の違いが印象的です。日本では、太陽光発電のように出力が変動する再エネを活用するためには火力発電などのバックアップ電源の確保や蓄電池の整備が必要なためコスト高になるという意見が前面に出ています。しかし欧州などでは、卸電力市場の整備などで電力を柔軟に取引できるようにし、既存の系統を活用する制度設計に力を入れています。

山家 日本では、2014年の「九電ショック」に象徴される再エネの系統接続保留が問題になっていますが、それは技術的な制約ではなく、主に制度設計の問題です。欧州では、発電事業と送電事業を分離して、送電事業者が電力供給の責任を負う制度になっています。それを支えるのが柔軟に電力を取引する卸電力市場です。需要予測に基づいて前日に取引する1日前市場がベースにあって、その後のぶれを調整するための当日市場(時間前市場)があります。取引所と送電事業者は密接な連携の下で、混雑を回避し需給を一致させます。送電事業者も市場を通じて予備力を調達します。日本にも卸電力市場はありますが、電力全体の2~3%しかありません。ドイツや英国は半分を占めています。

 再エネの接続保留問題は、系統に対する考え方が欧州や米国とは根本的に違っていることも一因です。日本の電力会社がキャパシティーと言っているのは契約ベースの送電量であり、これには再稼働を待っている原子力発電や建設を予定している大規模火力発電なども含まれます。実際に流れている電力量ではありません。欧州や米国は、実際のフローをベースに前日市場、当日市場での需給に基づいて系統を開放し、系統を有効に使っています。さらに日本では、各電力会社の管内ごとに需給をバランスさせることが原則で、連系線を通じて電力が流通する前提で計算していません。電力会社の計算上は足りないけれど、本当に系統に余力がないのかは大きな疑問です。

1秒前まで取引できる

――市場で電力を売買するということが、なかなかイメージしにくいのですが。

山家 2017年4月にノルドプール(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークの北欧4カ国で運営する国際電力取引所)を取材してきました。発電事業者や送電事業者、小売事業者など電力取引の参加者に使いやすいサービスを提供して北欧から英国やドイツなどにも進出しています。驚いたのは、当日市場は1秒前まで取引できるようになっていることです。それまでは15分前まで取引できると聞いていましたが、ほとんどリアルタイムです。しかも、システムの使い勝手がとてもいい。画面を見せてもらいましたが、どのタイミングでいくらで入札するのかを自分で入力するのではなく、画面に表示されたいくつかの選択肢の中から選ぶだけで済みます。ドイツのように再エネの利用が進んでいると、出力の変動に対応するために直前まで売買できることは市場参加者にとって非常に大きなメリットです。市場のニーズに応えることで、事業領域を拡大しています。

――市場の整備と再エネの普及にはどのような関係があるのですか。

山家 卸電力市場での取引が活発になると、短期的な需要と供給の調整が可能になるだけではなく、競争が促進されて電力価格は下がっていきます。市場ではコストの安い電力から買い手がつきます。その結果、燃料費がかからず変動費の安い再エネが選ばれるので、再エネが自動的に市場の多くを占めるようになります。市場が整備されることは、再エネの普及にとって非常に効果的なのです。それに加えて、EU(欧州連合)では再エネのための系統増強投資をするとか、再エネを多く取り扱うように工夫させるといった優遇策を定めています。

 面白いことに、送電事業者にとって分散電源である再エネが増えた方が系統の利用率が高まるので、日本でいう託送料金を多く取れるようになり、利益率も高まるという状況になっています。ドイツのあるシンクタンクは、再エネを普及させるための最も重要なポイントは、送電事業者の分離であると主張しています。日本の発送電分離は2020年まで待たなければなりませんが。

――日本では2016年の小売り自由化が騒がれましたが、電力料金はそれほど大きく変わりませんでした。本番は2020年なんですね。

山家 そうです。識者の間では日本の自由化は順序が逆だろうと言われていました。市場が整備され、送電事業が中立化されてこそ、小売り料金の自由化があり得るだろうと。2020年にどうなるのかを今からイメージしておかないと、従来型の電力会社は競争に取り残されてしまうでしょうね。実際、ドイツでは火力発電の稼働率が落ち、電力価格も下がって電力会社が窮地に陥り、再エネにかじを切っています。

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