聞き手/酒井 綱一郎(日経BP社取締役副社長)

アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)は、インドネシアに本拠を置くアジア最大級の総合製紙メーカーだ。森林の違法伐採を根絶するために地域コミュニティの自立に力を入れる。

SDGsはそもそも本業と合致する

――APPは最近、世界的サステナビリティ評価機関である仏EcoVadis社が実施した調査で最高ランクの「ゴールド」を取得されました。これはインドネシアと中国における事業に対しての評価ですが、どのような点が評価されたと考えていますか。

タン・ウイ・シアン
エイピーピー・ジャパン 代表取締役会長
1961年インアドネシア 北スマトラ州生まれ。86年Trisakti大学(ジャカルタ)経済学部卒。キャセイ・パシフィック航空を経て、93年シナルマスグループ アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)入社。96年から現職。2018年4月、在日インドネシア経営者協会代表理事に就任した

タン・ウイ・シアン氏(以下、敬称略) EcoVadis社は知名度の高い国際評価機関なので、本当にありがたい話です。APPとしては2016年に続く2年連続2回目の「ゴールド」受賞でした。APPは森林資源の責任ある管理とサプライチェーン周辺の地域社会再生に力を入れていますが、今回は労働慣行、人権、持続可能な調達、フェアトレードなども評価されており、評価対象が広がっています。インドネシアにおけるブランドバリューも2016年の80位から2017年は35位まで上昇し、実際に私どももそのことは実感します。

――2018年2月に持続可能性の報告に関する国際基準・GRIスタンダードを早期採用し、本年度のサステナビリティ・レポーティング賞(SRA)特別賞も受賞されました。

タン APPはグローバル企業ですので、サステナビリティレポートを重視しています。2012年6月に発表した「持続可能性ロードマップ ビジョン 2020」のアップデートや、2013年2月に立ち上げた森林保護方針(FCP)の情報開示、工場の作業能率改善など、持続可能性に関する情報を理解しやすい形で提供するため、GRIスタンダードに沿って環境報告書を作成しています。

 細かな項目が網羅されたGRIスタンダードを採用しているインドネシア企業は珍しく、作業も決して簡単ではありません。何年にもわたる積み重ねの成果が、今回の受賞に結びついていると考えています。

――APPはミレニアム開発目標(MDGs)の頃から積極的に取り組み、2015年のSDGsへと活動を継続させています。SDGsの17の目標で重視して取り組んでいる項目は何ですか。

タン SDGsの多くは、APPが以前から掲げていた目標と合致しているため、17の目標が出てきたときは正直に言ってうれしく思いました。

 2012年に「持続可能性ロードマップ ビジョン 2020」を発表して以来、APPは森林保護や持続可能な消費の維持、生産活動への影響に責任を持つべきだと考えていました。17の目標の中では、目標12「つくる責任、つかう責任」と目標15「陸の豊かさも守ろう」に、本業の視点からとくに重点を置いています。

 この2つから派生して、目標1「貧困をなくそう」、目標2「飢餓をゼロに」や、森林保護は気候変動に大きな影響があるので目標13「気候変動に具体的な対策を」にも間接的に関わっていきます。

■ APPのSDGsへの取り組み
2008年から国連のミレニアム開発目標(MDGs)への取り組みを開始し、 2015年からSDGsの達成に向けた活動を継続。現在は、自社の森林保護方針(FCP)実施計画を通じて、SDGsの17目標のうち14の目標に取り組んでいる
[クリックすると拡大した画像が開きます]

――APPの中で、SDGsの目標はどのような位置づけになっていますか。

タン SDGsはインドネシアでこれまであまり考えられてこなかった視点で、国全体として明確な仕組みはまだ出てきていません。しかしAPPはグローバル企業なので、MDGsのときから様々な活動に参画していたため、こうした取り組みに慣れていました。先ほども申したようにSDGsの目標の多くはそもそもAPPの本業と合致しているので、私たちにアドバンテージがあると捉えていますが、さらに政府の方針に沿って積極的に推進していきたいと考えています。

――SDGsやESGへの取り組みを含め、どのような形で情報開示していますか。

タン SDGsの取り組みは「持続可能性ロードマップ ビジョン 2020」と密接に関連しており、その内容を環境報告書で公表している他、SDGsに関連するすべてのCSR活動を網羅したCSRブックを作成してウェブサイトで公開しています。

 ESG推進に関わるリスク情報開示については、透明性を確保するために英国のNGO、TFTの協力を得ている他、コンサルタント、NGOなど多くのステークホルダーと協働して情報開示に取り組んでいます。