斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

輸入部で身に付けた粘り強い交渉は総務部へ異動しても役に立った。2003年からIRを担当、ESG投資を意識した発信に力を入れる。

高木 勢伊子(たかぎ・せいこ)
1967年神奈川県出身、91年東京外国語大学外国語学部アラビア語学科卒業、同年コスモ石油入社、輸入部、総務部、広報室、経営企画部IR室を経て2015年より現職

 大学でアラビア語を学んだ経験から、「中東の国と関わり、人の役に立つ仕事がしたい」とコスモ石油に入社した。花形ともいえる輸入部に配属され、希望通りの社会人生活のスタートを切った。

 5年間、輸入部原油グループで原油調達の実行計画を立てる仕事に関わった。石油メジャーや商社から原油を買う仕事をするなかで、「人間関係の大切さ、信頼関係を築く重要さが身に染みて分かった」と振り返る。入社5年目で初めて1週間、中東に出張した。カタールやオマーンなど4カ国を駆け足で回る旅だったが、一度会ったことで、その後の取引先の反応は大きく変わったという。無理なリクエストにも応じてくれるようになったそうだ。

 充実した日々を送っていたが、その翌年に待っていたのは総務部への異動だった。中東の石油関係者と渡り合っていた仕事から、社内の予算管理などの仕事へと大きく変わったのである。異動に納得できない日々を過ごしていた高木さんを立ち直らせたのは、「オフィス削減プロジェクト」だった。

 1996年に「特定石油製品輸入暫定措置法」が廃止され、石油元売り各社の経営は打撃を受けた。コスモ石油もコスト削減でオフィス面積を半減することになり、担当になったのだ。各部署の幹部社員と交渉し協力を取り付ける難しい仕事だ。「あきらめずに粘り強く交渉する」。輸入部で学んだ経験が生き、仕事への意欲を取り戻すことができた。

 2003年、経営企画部IR室の初代メンバーとして仕事を始める。この時、「2年上の先輩に、IR(投資家向け広報)で説明する財務関連の数字について厳しく指導され、仕事の基本を学んだ」と話す。その数字の背景にあるものは何なのか、数字の本質を見極めるために深く考える姿勢を教わった。

 2015年までIR専門の仕事に従事し、今もコーポレートコミュニケーション部長としてIRを所管する。当初は財務中心の情報発信だったIRも、今ではESG(環境・社会・ガバナンス)投資の流れを受け非財務情報の開示も重要になっている。

 コスモエネルギーグループは2016年から統合報告書を発行し、ESG投資を意識したIRに力を入れ始めた。2017年の統合報告書では、冒頭に「持続可能な発展をめざして」と題した図を作り、「低いエネルギー自給率」などの4つの社会的課題を示した。さらにグループの事業や製品・サービスを通して、「安定的なエネルギー調達先の確保」など6つの社会的価値を生み出すことを明示している。

 「ESG投資を意識したIRに力を入れれば時価総額の増加という形で、会社にもメリットをもたらすことができる。今後も企業価値を大きくすることで貢献していきたい」と力を込めた。