橋爪 麻紀子/日本総合研究所

SDGs活用の第一歩は、自社の取り組みと17の目標や169のターゲットとの紐付けだ。その先は、SDGsを軸にした大胆な事業構造の転換も視野に入る。

 ビジネスと金融におけるSDGs(持続可能な開発目標)の主流化が加速している。海外で先行していた潮流が、国内でも鮮明になってきた。ビジネス分野では、企業の本業を通じた社会課題の解決に様々な事例が出始めている。2017年10月には経団連もSDGsが示す方向性に合わせ企業行動憲章を改定した。

 金融分野では、2017年9月に日本証券業協会が、2018年3月に全国銀行協会がSDGsの推進を発表した。2018年2月には、SDGsに関連した国内初の金融商品も誕生した。ニッセイアセットマネジメントがSDGsをテーマにした公募投資信託を設定し、その銘柄選定ではSDGs達成に寄与し得る製品やサービスで成長が見込める企業に投資すると発表した。

 ビジネスと金融におけるこうした一連の流れは、SDGs達成に貢献し得る企業や事業に「資金使途を限定」した資金がより流れていくことを示すものだろう。

取り組みを紐付けする意義

 こうした流れに乗り遅れないよう、企業がまず手始めに取り組むべきは、SDGsの17の目標と自社の取り組みとの紐付け作業だ。取り組みがSDGsにどの程度関連があり、貢献し得るのかを明らかにする。

SDGsはターゲットレベルで紐付ける

 「17の目標は曖昧で分かりにくい」「具体的なアクションに落としにくい」という声がある。それならば、17の目標を分解した169のターゲットで考えることが有効だ。
 それぞれのターゲットには「SDGs Indicator」という評価指標が設定され、何をもってターゲットに貢献したと言えるかが明確だ。
 自社の取り組みにの目標のロゴを張ることは難しい作業ではないが、目標の達成に貢献し得るかを明確に示すには、ターゲットレベルでの検討が有効かつ適切だろう。

 紐付け作業の一義的な目的は情報開示である。年次報告書やCSR報告書で自社の取り組みとSDGsのロゴを紐付け、投資家や株主などにSDGs達成への貢献度を示す。これは、SDGsの169のターゲットの1つである「12.6 大企業や多国籍企業をはじめとする企業に対し、持続可能な慣行を導入し、定期報告に持続可能性に関する情報を盛り込むよう奨励する」にもかなうものだ。

 近年、海外のESG格付評価機関も、企業のSDGs達成への取り組み状況を評価するようになりつつある。企業の担当者からは、SDGsに関する何らかの開示をしなければ評価されなくなるのではないかという不安の声も聞こえる。しかし、情報開示のためだけの紐付け作業ではもったいない。

 2つ目の意義として、社内の意識改革がある。紐付け作業によって、従業員は自社がどの程度、社会課題の解決に貢献しているのかを理解できる。結果、従業員自身が自社の取り組みに意義を感じ、業務のモチベーションにつながる。とりわけミレニアルと呼ばれる1980~2000年生まれの世代は、環境や社会課題への関心が高く、自社の貢献に対する理解促進は、若手社員の仕事への意欲や会社へのロイヤルティ向上にも影響があるといわれる。

 3つ目に、新たなビジネス創出や事業構造の転換など、成長への足掛かりになることを挙げたい。自社の製品・サービスをSDGsと紐付ける発想から転換し、SDGsを起点に自社は何ができるかを考えることは、既存ビジネスの枠組みを超えたアイデア創出につながる。例えば、途上国の低所得者向けの商品開発を目的に自社リソースを補うためのオープンイノベーションを進めるといった事例は、まさにそうした発想だ。