聞き手/藤田 香

米国第2位の公的年金基金カルスターズは、日本企業との対話を強化している。TCFD開示に関する対話を進める一方、一番の懸念点はガバナンスだと言い切る。

――カルスターズ(カリフォルニア州教職員退職年金基金)は、米国で2番目に規模の大きい公的年金基金です。どんなESG投資をしていますか。

ブライアン・ライス
米カルスターズ ポートフォリオ・マネジャー
カルスターズのコーポレート・ガバナンス部門のポートフォリオ・マネジャー。カルスターズのガバナンス部門に13年間従事。サステナビリティを投資プロセスに組み込むことに注力し、ESGの機会とリスクの評価などを行っている。日本企業とのエンゲージメントにも携わる
写真/CalSTRS

ブライアン・ライス氏(以下、敬称略) カルスターズはカリフォルニア州の公立学校の先生たちの退職金を積み立てた基金です。運用資産は2200億ドル(24兆2000億円)。うち1100億ドル(12兆1000億円)を株式に投資しています。6割がパッシブ運用、4割がアクティブ運用です。私はポートフォリオ・マネジャーとして、すべての資金にESGへの考慮が組み込まれるように努めています。

 環境では2004年から温暖化に着目しています。水不足、廃棄物も重要ですね。社会的な問題では従業員の健康・安全、多様性。もちろん取締役会の多様性も重要です。医療用麻酔の使いすぎや依存、銃の問題も関心事になっています。

 先生たちの積立金ですから、彼らの関心事を理解しなければなりません。最近は銃の暴力への関心が高まっています。我々の義務はリターンを確実にすることですから、ESGに配慮しながら、退職した人々に年金を還元するという約束を果たさなければなりません。

企業には要求より対話で

――ESGに考慮して投資するため、企業とはどのような対話(エンゲージメント)をしていますか。

ライス 石油・天然ガスの企業とは、エネルギー消費量の削減について対話しています。採掘のために投資資金をどのように使っているか、その資金が温暖化にどう関係しているかを聞いています。飲料メーカーには水使用量の削減について聞いています。投資資金が座礁資産にならないかについて話し合います。

 他の投資家とも連携し、世界の主な石油・天然ガス会社と対話してきました。数十社に上るでしょうか。温室効果ガス排出量の多い企業を世界で100社強選び、賛同する投資家が共同エンゲージメントを行う「Climate Action 100+(CA100+)」にも参加しています。米国、オーストラリア、アジア、欧州でエンゲージメントを始めました。

――投資引き上げ(ダイベストメント)をしたことはありますか。

ライス 一部の業界の一部の企業にダイベストメントをしました。タバコや銃の製造会社が複数社。収入の50%以上を石炭関連事業から得ている企業からもダイベストしました。10社ほどあったでしょうか。リスク分析を行い、リターンよりリスクが大きいと判断した場合に投資を引き上げます。

――最近話題になっている気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のガイドラインに沿った開示を企業に求めていますか。

ライス 求めるというより、TCFDにもっとなじんでほしいと思っています。我々のスタンスは、企業に要求することではなく、企業と対話することです。今年、TCFDに関する対話を始めました。100社との対話を行います。年間20社ずつ対話していきます。TCFDになじんでもらい、それに沿った開示をするよう促すのが目的です。

 PRI(責任投資原則)は署名機関である投資家に対して、TCFDのガイドラインに沿った報告を求めています。我々もそれに沿った報告をしていきます。始まってまだ1年足らずなので、何が求められているか我々も理解に努めている段階です。