聞き手/望月 洋介(日経BP総研 所長)

石坂産業の取り組みにより、従来の産業廃棄物処理業のイメージが変わりつつある。これはESG経営を通じて企業の価値・業界の価値を向上させた、成功例と言えるだろう。

――1999年のダイオキシン報道で苦しい経験をされましたが、当時から今のESGにつながる取り組みを続けて来られました。

石坂 典子(いしざか・のりこ)
石坂産業 代表取締役
1972年東京都生まれ、92年父親が創業した石坂産業に入社、99年、埼玉県所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に「私が会社を変える」と父親に直談判、2002年社長就任、2016年、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」情熱経営者賞受賞
写真/川田 雅宏

石坂 典子氏(以下、敬称略) 産業廃棄物処理業は社会からマイナスの印象を持たれてきました。従来、「環境」といえばモノづくりの川上から語られることばかりで、川下の産廃処理には光が当てられなかったと思います。しかし大きな視点に立てば、廃棄物を減らし、資源を再生することで環境保護につながるのは明らか。つまり、産廃処理業者だからこそ社会に発信できることが、たくさんあるんです。

 そうした思いから当社では、環境教育を通じて社会に貢献しようと力を入れています。工場見学で広くお客様をお迎えするとともに、工場周囲の雑木林を保全・再生する目的で「三富今昔村(さんとめこんじゃくむら)」を開設し、地域のお子様や、ご家族連れの皆様にご利用いただいています。

 ここを訪れた人が、環境について考えるきっかけをつかんでもらえればと思いますし、同時に産業廃棄物処理業のマイナスの印象を払拭し、地域と共存できる事業であるという理解が広まればうれしいですね。

――業界全体のイメージを変えることにもつながっていると思います。

石坂 産業廃棄物処理業界はコスト競争に陥り、処理費用を下げるばかりの不毛な争いが常態化していました。そんなことを続けていても業界に未来はありません。事業者それぞれが自社のポリシーや独自性を大切にし、強みを前面に出すことで評価されるような業界に変わらなければなりません。

 一つの事業者が社会から評価されると、周りの事業者もそれを意識し始めますよね。意識する事業者が増えることで業界自体が変わり、マイナスイメージも改善されるだろう。そんな思いで続けてきました。