聞き手/酒井 綱一郎(日経BP社取締役副社長)

住友化学はその発祥から、ESG経営やSDGsへの貢献を深められる素地があった。社会との約束のもと、技術や製品の革新を通じて、地球規模の課題解決を目指す。

――2018年4月1日付で「サステナビリティ推進委員会」を発足させました。これはどのような組織なのでしょうか。

十倉雅和(とくら・まさかず)
住友化学 代表取締役社長 兼 社長執行役員
1950年兵庫県生まれ。1974年東京大学経済学部卒業、住友化学工業(現・住友化学)入社。経営企画部門やベルギー法人設立を経験。2003年執行役員、2008年代表取締役常務執行役員、2009年同専務執行役員、2011年4月より現職。2015年より経団連副会長。同社は2018年3月期の連結純利益が過去最高を更新する見通し
写真/木村 輝

十倉 雅和氏(以下、敬称略) CSRや環境、IR(投資家向け広報)の担当をはじめ社内の様々な部署がサステナビリティやESGに関わる取り組みを行っています。そのため会社全体として統一した見解を発信しなければなりません。

 住友化学のサステナビリティやESGの取り組みについて、全社的かつ地球や社会などのサステナビリティ的視点で検証し、今後の取り組みに活かしていくために設置したのが、サステナビリティ推進委員会です。各部門の代表と取締役、専務以上の役員が集まり、半年に1回程度の開催を考えています。

――御社は、ESG経営やSDGsへの貢献などに積極的に取り組んでいます。その背景にあるものを教えてください。

十倉 ESG、SDGs、CSV(共通価値の創造)など、近年様々な概念が提唱されています。いずれも新しい言葉ですが、私たちにとっては違和感なく取り組める分野でした。

 住友の事業精神の根幹には、「浮利」すなわち目先の利益を追わないという考えがあります。我々が手掛ける事業は住友自身を利するだけでなく、社会に貢献するものでなければならないという「自利利他 公私一如(じりりた こうしいちにょ)」の考えも、社内に浸透しています。

 さらには、住友化学は技術革新により、銅製錬で発生する有害な亜硫酸ガスから肥料を製造するという社会課題を解決する“ソリューション”から生まれた肥料製造会社として事業を始めました。その発祥から、我々にはESGに配慮し、SDGs、CSVに挑戦できる素地が整っていたのです。

技術で環境課題の解決に貢献

――御社ならではの取り組みの中でも、代表的な事例を教えてください。

十倉 SDGsの前身として、MDGs(ミレニアム開発目標)が提唱されてきましたね。その当時から、事業として継続してきたマラリア予防の蚊帳「オリセットⓇネット」も、防虫剤効果が長く持続し、アフリカの気候でも暑くないなど、様々な技術革新によるものです。

 現在は、タンザニアなどで工場を稼働させ、現地で生産しています。マラリア被害を減らすことに成功しただけでなく、現地雇用、特に女性の経済参画にも貢献していると自負しています。

――2016年に「スミカ・サステナブル・ソリューション」を始めました。

十倉 「スミカ・サステナブル・ソリューション」は温暖化対策、環境負荷低減などに貢献する製品や技術を社内で認定し、その開発や普及を促進する取り組みです。現在34の製品と技術を認定し、取り組みを進めています。認定製品の一つ「リチウムイオン二次電池用セパレータ」は、耐熱性や信頼性、安全性に優れており、これを使って高容量リチウムイオン二次電池が生産されています。電気自動車が普及すれば排気ガスも減りCO2削減にもつながることから、エコカー向けに需要が急増しているところです。

 また、必須アミノ酸の一種である「メチオニン」は、鶏などの家禽用飼料に加えると排泄物内の窒素量を減らすことができます。養鶏業者に導入いただくことで温室効果ガスの排出削減に効果を発揮します。

 当社が持つ革新的な技術や製品で、地球規模の課題の克服に貢献することが大きな目標です。私たちは材料メーカーですが、一歩進んで、素材を高付加価値化した「ソリューション」を提供する。それが、会社を持続的に成長させる点でも、重要だと考えています。