半澤 智

社外取締役の比率を増やし、取締役会の議長も任せる。「外部の声」を経営に生かすための体制強化が欠かせない。

 2018年3月6日、神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長(当時)は、厳しい表情で深々と頭を下げた。東京都内で開いた記者会見で、品質データ改ざんの責任を取り、自らの辞任を発表した。

品質データの改ざん問題で辞任を表明した川崎博也・前会長兼社長

 同社では、アルミ・銅事業部門で検査結果を改ざんする不正が行われていた。顧客の要求仕様に適合しない製品の納入を繰り返し、納入先は自動車メーカーや航空機メーカーなど600社を超えている。

 当初、鉄鋼製品についての不正が取締役会に報告されていながら「問題はない」と発表していたが、後に鉄鋼製品でも不正があったことが判明した。現場だけでなく、取締役会をはじめとする同社のガバナンス体制に疑問の目が向けられた。

 新社長は、副社長を務めていた山口貢氏だ。3月16日に開催した記者会見で山口社長は、「ガバナンスや企業風土の抜本的な改革を推し進めていくことが私の責務」と語った。

「縦割り排除」取締役会から

 ガバナンス改革として、取締役会に占める社外取締役の人数を3分の1以上にする。具体的には、16人いた取締役を1人減らして15人とする。そのうち社外取締役の5人は維持することで、3分の1以上にする。取締役会に「社外の声」を反映させやすくすることで、議論が社内だけの論理に偏らないようにする。

所信表明する山口貢・新社長

 また、これまで取締役会の議長は会長が務めていたが、会長職を廃止して社外取締役の中から取締役会議長を選ぶ。山口社長は、「しがらみがない社外取締役の目で、当社の良い所も悪い所も指摘してもらう。これが当社のプラスになる」と狙いを語る。社外取締役を議長に据えることで、予定調和型でない取締役会の運営を目指す。

 社内取締役は、事業部門のトップを取締役とする体制を見直し、部門を越えて業務を監督する体制とする。同社では、事業部門を越えた人事異動はほとんどなく、こうした縦割りで閉鎖的な組織体制が、不正を生む要因となっていた。

 これまでは、鉄鋼、アルミ・銅、建設・機械などの事業部門のトップが、取締役を務めてきた。新体制では、部門を越えて素材、機械、電力の3分野を統括する取締役を1人ずつ選ぶ。同社はこの3分野を、2016〜20年を対象とするグループ中期経営計画で、成長戦略として位置付けている。

 また、品質とコンプライアンスを担当する取締役をそれぞれ設ける。

 品質データの改ざんは、顧客仕様を多少逸脱しても安全性の問題はなく、出荷しても問題となることはないだろうという社員のコンプライアンス意識の低下が引き起こした。新たに「コンプライアンス統括部」を設置し、全社員を対象とした「コンプライアンス意識調査アンケート」を定期的に実施するなどして、コンプライアンスの徹底を図る。