相馬 隆宏

パリ協定に貢献する長期ビジョンを策定しているかどうかで企業の評価が変わる。イオンは2050年に店舗から排出するCO2を実質ゼロにする目標を打ち出した。

 イオンが2018年3月28日に発表した「イオン 脱炭素ビジョン2050」では、3つの柱で温暖化ガス排出量の削減に取り組む。店舗、商品の製造や物流で排出されるCO2を削減するとともに、環境配慮商品の販売や家庭での省エネの促進など顧客とも協力して脱炭素社会の実現を目指す。

■ 3つの柱で脱炭素社会の実現を目指す

社外の知恵を生かす

 注目すべきなのが、グループで2万1000店を超える店舗でのCO2削減だ。2050年までにCO2排出量をゼロにする。中間目標として、2030年までに2010年比で35%削減する。店舗のCO2排出量のうち約9割は電力の使用によるものだ。省エネを進める一方、再生可能エネルギーを大規模に利用する必要がある。

 店舗など自社の施設に太陽光発電システムを設置する他、再エネ発電事業者から直接電力を購入する。さらに、再エネ由来の電力メニューを選択したり、再エネを利用したと見なされる「証書」を購入したりする。

■ 店舗やオフィスビルで再エネを積極的に活用
2018年3月16日に開店したショッピングモール「イオンモール座間」では壁面や屋上に総発電出力1000kWの太陽光パネルを設置した
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千葉市にあるイオンの本社ビルは、消費電力をすべて水力発電による電力で賄う
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 再エネ100%の事業運営を目指す国際イニシアチブ「RE100」にも、日本の大手小売業として初めて参画した。再エネを積極的に導入すると社外に宣言することで、企業や自治体から新技術などの提案を呼び込むのが狙いだ。再エネの導入にはまだコストがかかるため、社外の知恵を生かしてコストを抑える。

 イオンは、グループの電力使用量が年間74億kWhで日本全体の0.9%を占めていることも公表している。グループでこれだけの電力を使う企業が再エネを導入しようとしていると分かれば、設備メーカーや電力事業者が関心を持つ可能性が高い。そうした企業の提案の中からより低コストで再エネを導入できる方法を見いだしたい考えだ。

 イオンがコストを余計に負担してでも再エネを導入し、脱炭素社会の実現を目指すのはなぜか。背景には、パリ協定が発効し、国際社会が今世紀末までにCO2排出量を実質ゼロにする目標に合意したことがある。イオングループ環境・社会貢献部の金丸治子部長は、「再エネの導入には大きな投資が必要だが、地球環境が維持されないと事業の成長・発展の機会はない」と言い切る。