自動運転を実際に利用するうえでは、リアルタイムに道路情報を把握する必要がある。これに自動車の位置情報、地図情報を合わせることで、経路を選んだり、危険を回避したりといったことが可能になる。そのプラットフォームづくりが急ピッチで進んでいる。

完全自動運転の世界では、走行する道路の地図情報の精度だけでなく、走行エリアの交通規制や混雑情報も重要となる。事故が起こって渋滞が始まりつつあるとき、事故地点に向かっている走行車両が事故情報をいち早く入手できれば、渋滞の列に追突する危険を回避することはもちろん、別の経路を選択することで渋滞を回避することもできる。

こうしたリアルタイムの道路情報を走行車両に提供するために、走行車両のセンサー情報をオンラインで収集し、それをクラウドでビッグデータ解析することによって各エリアの交通規制や混雑状況をほぼリアルタイムで分析・通知する取り組みが始まっている。

ここで重要なのは、クラウドと自動車が相互に連携する「Cloud-to-Car」の仕組みを多面的に構築し、できるだけ多くの走行車両からセンサー情報を収集する体制を整備することだ。この体制整備を急ピッチで進めている企業の代表例と言えるのが、欧米中心にクラウド地図を基盤とする位置情報サービスを提供するドイツHEREである。

同社はリアルタイム性の高い道路情報と高精度の3次元デジタル地図を組み合わせた「HERE Open Location Platform」の構築を急いでおり、2016年末から2017年にかけて、多くの企業と資本提携を含む関係構築を進めた。Cloud-to-Carによって進化する位置情報サービスの未来を、HEREのMandali Khalesi(マンダリ・カレシー)氏(HERE Japanオートモーティブ事業部APAC市場戦略本部統括本部長)に聞いた。

――2016年末から2017年にかけて、出資企業が4社増えた。今の持ち株構成を知りたい。

HERE Japanオートモーティブ事業部APAC市場戦略本部統括本部長のMandali Khalesi氏


カレシー 現在、HEREの株主は7社ある。まず、2015年12月にHEREをフィンランドNokiaから買収したAudi、BMW、Daimlerのドイツの高級車メーカー3社。次に、中国のクラウド企業大手のTencent、中国の地図情報企業NavInfo、シンガポール政府の投資公社であるGICの3社。この3社は2016年12月にHEREの持ち株の10%を共同取得することで、HEREと合意した。そして2017年1月、米IntelがHEREの株式の15%を取得することで合意した。

この結果、現時点のHEREの株主別の持ち株比率はAudi、BMW、Daimlerがそれぞれ25%、Intelが15%、Tencent/NavInfo/GICが3社で10%となる。出資者を増やすのは、HEREに対するAudi、BMW、Daimlerの影響力を小さくし、オープンで中立的な企業にするためだ。さまざまな産業の発展を支える会社を目指している。

――新たな出資企業と事業面での連携はあるか。


カレシー Intelとは、高精度地図をリアルタイムでアップデートするアーキテクチャの設計やテストなどで連携することを決めた。Intelは自動車がIoT(モノのインターネット)の対象となると見ている。自動運転とIoTの両面でのアーキテクチャを議論することになるだろう。

NavInfoとは、共同事業を推進するためのJV(共同企業体)を中国に設立することにした。もともとNavInfoとは10年以上の付き合いがあり、以前もJVを作った経験がある。TencentはSNSの大手。メッセージングプラットフォームの世界的リーダーだから、そこと組むことで互いにグローバル化を進められる。

――中国関連ではAlibabaやBaiduとも協業している。


カレシー Alibabaとは、HEREが持つ地図情報、交通情報、経路案内情報などの位置情報サービスをAlibabaのクラウド経由で世界のユーザーに提供するという提携関係にある。同様に、2017年1月にはBaiduとの協業関係を拡大し、中国国外の地図をBaiduユーザーに提供することにした。我々の地図情報を求める企業とは、幅広く協業したいと考えている。AlibabaとBaiduはお客様であり、その意味でTencentだけと協業するわけではない。

――HEREが対象とする地図のエリアはどこか。


カレシー 欧州と米国を中心に整備を進めている。中国と日本については、パートナーとの協業を発表した。日本に関しては、2017年2月にパイオニアと提携し、パイオニアの子会社のインクリメントPとの間で、双方の地図の相互利用を検討する。