公共交通と言われながら、自治体の関与は薄かった都市部の路線バス。マイカー依存が強い地方都市では利用減が減便・廃線への悪循環を招くことが懸念される。それを食い止める狙いで2年半前に中心部の幹線でBRT(バス高速輸送システム)の運行を始めたのが、新潟市だ。BRTと路線バスを組み合わせた公共交通に未来はあるのか――。今後を展望する。

全長18mの2両編成で朱色の車体の連節バスが、JR新潟駅万代口の乗り場に滑り込んでくる(写真1)。BRT(バス高速輸送システム)の萬代橋ラインだ。2015年9月、新潟市が公設民営方式で導入し、運行事業者として選定された地元のバス会社である新潟交通が運行を担う。

(写真1)BRT(バス高速輸送システム)の萬代橋ラインを象徴する連節バス。新潟市が4台を購入し、運行事業者の新潟交通に無償貸与する(写真:茂木俊輔)

BRTの運行開始から2年半。市によれば、BRTと路線バスの合計利用者は運行開始2年目で前年に比べ約2.5%増加し、約2349万人に達したという。

運行区間は約7㎞。新潟駅前を発車すると、中心市街地を通り抜け、市役所前を経由する。JR白山駅と接続した後、高校や病院が立地する市街地を抜けると、イオン新潟青山ショッピングセンター前の終点に到着。中心部の幹線とも言える道筋だ。

それだけに便数は多い。時刻表上では、平日朝夕の時間帯は3~5分おきに発車し、起点と終点の間を30分前後で結ぶ。連節バスを用いた快速運行なら停車するバス停は半分以下だが、同じ時間帯の通常運行に比べた所要時間の短縮幅は1~2分にとどまる。

同じ新潟交通が運行する路線バスとの違いは、車両やBRT駅に統一コンセプトに基づくシンボルカラーの朱色やシンボルロゴ「NIIGATA CITY BRT」が使用されている点(写真2)。BRTのシンボルとも言える連節バスでなくても、見た目には区別できる。

(写真2)BRT萬代橋ラインには従来の車両にBRTのロゴを付けたものも混じる。運賃はどの車両も共通。新潟駅周辺の100円区間を除き、運行区間内は一律210円だ(写真:茂木俊輔)

路線バスとの違いは、運行面にも表れる。新潟交通が公表するデータ「『時間通りに走る』バスへの取り組み」によれば、定刻通りに運行されないという印象が強い路線バスの中でBRT萬代橋ラインは健闘している様子がうかがえる。

このデータは、「定時性率」と「目標達成率」という2つの指標を、集計対象の40路線ごとに原則として月単位で公表するもの。定時性率とは、発車時刻データの平均値と時刻表掲載時刻との時差が1分未満だったバス停の割合を、目標達成率とは、これらの時差が定時運行に向けた達成目標として掲げる3分未満だったバス停の割合を示す。

2017年11月後半のデータによれば、BRT萬代橋ラインの定時性率は46.3%で集計対象の40路線中2番目、目標達成率は93.0%で同じく3番目に位置する。集計対象路線全体の平均は、定時性率で27.2%、目標達成率で80.0%だから、中心部の幹線で運行される路線としてはまずまずの数値と言えそうだ。

ただ、BRT専用走行路が用意されているわけではない。車両は路線バスと同様に一般の車線を走る。ICカードは導入されているものの、運賃収受の方法は路線バスと変わりない。走行時間や乗降時間の短縮を可能にする特別な仕掛けはない。

中心部には路線バスの集約効果

それでも定時性を比較的高く確保できている理由を挙げるなら、運行区間が約7㎞と短いことが一つ。新潟市都市政策部新交通推進課課長補佐の小林久剛氏はさらに、「もう一つ、路線バスの集約効果も考えられる」と指摘する。

いまBRT萬代橋ラインが走行する中心部の幹線にはもともと、新潟交通が運行するバス路線がいくつも重なっていた。新潟駅万代口発着の路線バスの多くが、そこを走行していたからだ。市によれば、同名のバス停が1カ所に固まり、乗車密度の低いバスが集中したり、行き先が分かりにくかったりするなど、運行の非効率さが目立っていたという。

中心部でそうした問題を引き起こしていたバス路線が、BRT萬代橋ラインの導入に伴い整理・集約された(図1)。市によれば、BRTの運行開始後、萬代橋上を走行する路線バスの便数は1日往復約2000本から約1300本に減少したという。便数は35%ほど減少したわけだ。

(図1)BRTの運行開始前は、新潟駅にバス路線が集中していたため、中心部では運行の非効率さが目立っていた。その一方、バス利用者の減少が運行の減便・廃止につながる悪循環に陥る懸念があった。中心部の一部区間をBRTに置き換えることで、乗り継ぎの必要性は生じるものの郊外部との間を結ぶバス路線の増便・新設が可能になった(資料:新潟市)

半面、郊外部との間を行き来するには、BRTと路線バスを乗り継ぐ必要が生じることになった。BRTの走行区間は中心部の幹線にあたる約7㎞に限られ、この区間と郊外部との間、つまりBRTという幹線に接続する支線にあたる部分は、路線バスしか走行していないからだ。BRTの運行区間内に置かれた4カ所の交通結節点での乗り換えを前提にした交通システムなのである(写真3)。

(写真3)BRT萬代橋ラインの交通結節点の一つである「市役所前」。写真左は、新潟駅からのBRTとバス路線との間の乗り換えターミナル。乗降口は、手前の左右と奥の左右、合計4カ所にある。写真右は、新潟駅に向かうBRTとバス路線との間の乗り換えターミナル。どのバスにどこで乗り換えればいいかは、案内板に表示される(写真:茂木俊輔)

BRT萬代橋ライン導入の狙いは、こうしたバス路線の整理・集約にとどまらない。「それによって郊外部との間を結ぶバス路線の新設や増便を可能にし、郊外部の衰退を防ぐ」と、市新交通推進課の小林氏。郊外部もにらんだ公共交通システムの再構築なのである。

実際、BRTの運行事業者である新潟交通と市は協議を重ね、BRT萬代橋ラインの導入に伴い、既存のバス路線全体を再編した。市によれば、2017年3月のダイヤ改正時点では、路線バス全体の運行本数は再編に向けた計画が提案された2012年12月時点に比べ、平日1日当たり309増便されているという。

市が公共交通システムの再構築に乗り出した背景には、利用減という課題がある。

新潟市で公共交通と言えば、新潟交通が運行してきた路線バスだ。同社の資料によれば、その利用者数は年を追うごとに減り続け、例えば1980年は年間約9500万人だったが、1990年は約6900万人、2000年は約4100万人、と落ち込んでいた。