「横浜をスポーツ産業のシリコンバレーに」――。本拠地を置く横浜のまちづくりに期待を寄せるのは、プロ野球・横浜DeNAベイスターズ代表取締役社長の岡村信悟氏だ。「スポーツ・健康」をコンセプトに掲げ、民間との連携の下で進めようとする横浜市の拠点開発プロジェクトにも、強い参画意欲を見せる。地方創生や都市再生の観点からも関心を集めるスポーツを核にしたまちづくり。横浜ではどのように進んでいくのか。

まちづくりにおけるスポーツの可能性は、エンターテインメントとしての集客力と産業としての成長性にある。スポーツを核にまちづくりを展開することで、人を呼び込み、関連産業の集積を図る。それが、大きな狙いだ。

横浜市が主導する拠点開発プロジェクト――JR関内駅近くに立地する横浜文化体育館の再整備事業と市庁舎街区の活用事業でも、そこに目を向ける(図1)。

(図1)横浜市が関内地区を中心にまちづくりの方向性をまとめたもの。横浜スタジアム、市庁舎街区、横浜文化体育館が、大きく3つの拠点を形成している(資料提供:横浜市)

JR関内駅を中心とする一帯は歴史ある建築物が残る旧来の市街地で、中小の事業所や店舗がひしめく。しかし1990年代以降、同じ市内のみなとみらい地区が成長をみせる一方で、従業者数や商品販売額で地盤沈下の傾向が表れる。

さらに追い打ちを掛けるのが、市庁舎の移転である。市は隣のJR桜木町駅近くに新庁舎を建設中。JR関内駅前の市庁舎と周辺の民間ビルに就業する約6000人もの市職員が、2020年6月までに新庁舎に移る予定だ。

こうした背景からエリアの将来に危機感を持つ市が、衰退に歯止めを掛け、再生を図ろうと打ち出したのが、横浜文化体育館の再整備と市庁舎街区の活用である。

文化体育館の再整備は、築50年以上の施設を建て替えるにあたって、はす向かいに位置する市立高校の移転跡地と一体的に開発するもの。2020年9月までに高校移転跡地に2500席規模のサブアリーナを、2024年1月までに文化体育館解体跡地に5000席規模のメーンアリーナを、PFI事業として建設する。これとは別に、同じ事業者が2つの街区にそれぞれ民間収益施設も整備する計画だ。

市は2016年5月に民間事業者を公募したものの、名乗りを上げた事業者が建設工事費の高騰などで応札価格が予定価格に収まらなくなったことを理由に応札を辞退。市は公募の枠組みを見直したうえで、2017年3月に再公募に踏み切った。同年9月には、提案内容と応札価格を総合評価し民間事業者を選定する予定だ。

「スポーツ・健康」の背景にDeNA

市庁舎街区は、市役所機能が新庁舎に移転した後、旧庁舎が建つ約1.6haの街区を民間事業者に貸し付け、活用を図るもの。市が2017年3月に策定した活用事業実施方針では、国際的な産学連携機能や観光・集客機能の誘導を打ち出している。同時に示した事業スケジュールによれば、2017年度に民間事業者の公募に向けた準備を進め、翌18年度に公募に乗り出す見通しだ。

この2つの拠点開発プロジェクトに共通するコンセプトが、「スポーツ・健康」である。スポーツ施設である文化体育館の再整備はともかく、市庁舎街区の活用でもコンセプトの一つに「スポーツ・健康」が打ち出されたのには理由がある。

市都市整備局都心再生課長の村上実氏は「2017年3月には、ディー・エヌ・エー、横浜DeNAベイスターズ、横浜スタジアムのDeNAグループ3社との間で包括連携協定を結び、横浜スタジアムからはスタジアム施設の増築・改修計画が提案された。これらの動きを見据え、このエリアのまちづくりの方向性の一つとして『スポーツ・健康』を打ち出した」と、背景を明かす。

包括連携協定は、(1)参加型スポ―ツの振興、(2)子どもの体力向上や健全育成、(3)福祉や行政課題解決、(4)新たな人の流れ創出・まちづくり、(5)市民の健康、(6)東京2020大会における横浜での競技開催を契機とした機運醸成、(7)地域経済活性化に向けた施策――と多岐にわたるもの。まちづくりに関しては、観戦型・参加型の両面から市民参加型イベントやパブリックビューイングなどによる施設活用を含めた新たなまちの活性化や、参加型スポーツを通じたエリアの結び付き強化と誘客に取り組む方針を明らかにした。

スタジアム施設の増築・改修計画は、横浜スタジアムが約85億円を投じて、(1)収容人数を2万9000人から約3万5000人に増席する、(2)公園との一体化を図る回遊デッキを外周部に新設する、(3)スロープやエレベーターを新設しバリアフリー化を推進する――というもの(図2)。2020年開催の東京五輪時には野球・ソフトボールの主会場になることが決定したことを踏まえ、施設の老朽化と収容人員不足という課題に対応する。増築・改修計画では、工事期間として2017年11月ごろから20年2月ごろまでの約2年を見込む。

(図2)横浜スタジアム増築・改修計画案。右手に個室観覧席や屋上デッキ席を新設するほか、左右両翼の外周にも座席を増設する(画像提供:横浜DeNAベイスターズ)