開放された緑の芝生広場とおしゃれなカフェレストラン――。東京都豊島区の南池袋公園は2016年4月の全面オープン以来、その居心地の良さで話題を呼んでいる。それはどのような仕組みの下で維持されているのか。財政事情から都市公園に持続可能な運営・管理がますます求められていく中で、この事例に都市公園のこれからのあり方を見ることができる。

はだしになる、ごろりと寝転ぶ。思わずそうしたくなる屋外の空間と言えば、白い砂浜か緑の芝生くらいだろう。東京都豊島区の南池袋公園は、その緑の芝生広場を中心にすえる。手入れの行き届いた美しい芝生広場の上には、多くの若者や子連れの家族らが、腰を下ろし、くつろぐ。

場所は、巨大ターミナルの池袋駅の向かいに広がる繁華街の一角。都会の真ん中だ。周囲にはサンシャイン60ビルやとしまエコミューゼタウンなど超高層ビルを仰ぎ見る。広さは約7800㎡。上空から見下ろすと、繁華街のビル群の中で公園用地が隣接する寺院の敷地とともにぽっかり口を開けているようだ。

この公園は地元豊島区が総額約5億7000万円を投じて、2016年4月に全面オープンした。手入れの行き届いた緑の芝生広場を開放し、公園施設の一部をカフェレストランに充てた点が、開園当初から話題を呼び、多くの人を引き付けてきた(写真1)。園内ではマルシェなど各種のイベントも開催される。

(写真1)池袋駅周辺のビル街に囲まれた南池袋公園。周囲はフェンスで囲まれ、夜10時から朝8時までは公園全体が閉鎖される。園内左手に見える建物が、カフェレストラン「RACINES FARM TO PARK(ラシーヌ ファーム トゥー パーク)」に一部使用されている公園施設 (写真:川澄・小林研二写真事務所、画像提供:ランドスケープ・プラス)

収益施設を誘致し、それをにぎわいの核とする――。時代の流れに乗った、いまはやりの都市公園だ。ただこの公園では、区が管理する公園として地域との関係性を重視し、価値を持続させる仕組みを整えた点でも、先駆性を持つ。

この仕組みは、「南池袋公園をよくする会」と名付けられた南池袋公園の運営組織である。地元町会や商店会の代表者、隣接する寺町関係者、学識経験者、豊島区、カフェレストランの事業者代表の6者で、2016年4月に正式に発足した(図1)。

(図1)南池袋公園は再整備事業の前後で異なる管理・運営形態を取る。「南池袋公園をよくする会」という多様な主体で構成する運営組織が、持続可能な公園経営を実現するという(資料:ランドスケープ・プラス)

「よくする会」では発足以来、会合を毎月開き、公園運営に地元の意向を反映させる一方で、芝生の種を公園利用者に配布し、まいてもらうイベントや、サンマ1000匹を無料配布する「秋サンマ祭り」などを企画・開催してきた。2017年度に入ってからは、公園管理業務を区から受託する西武造園も正式にメンバーに加わった。

活動費は、収益施設であるカフェレストランの事業者が負担する「地域還元費」で賄う。その額は売り上げの0.5%という仕組みだ。

価値を持続させる仕組みを提案

「よくする会」の立ち上げは、南池袋公園の総合プロデュースとランドスケープデザインを担当したランドスケープ・プラス代表取締役の平賀達也氏が提案した。空間づくりだけでなく、仕組みづくりまで提案したのは、同社の基本姿勢という。

「都市公園を空間として整備して引き渡すだけでは、差別化を図れない。どういう価値を提供できるか、その価値を持続させるには、どのような運営・管理が必要か――。そこまで踏み込み、仕組みづくりまで提案することを心掛けている」

南池袋公園が空間と仕組みの両面にわたってこうした独自性を打ち出すことができたのは、その整備事業が区にとって特別な重みを持っていたからでもある。この公園がどのように整備されてきたのか、経緯をざっと振り返っておこう。

元は戦災復興の土地区画整理事業で昭和20年代に整備された公園だ。東京電力が地下に変電所を設置することになったため、2009年9月以降、区は公園を一時閉鎖。設置工事が終わるのを待って、再整備事業に乗り出した。

閉鎖前は区民の誰もが利用するような公園ではなかったという。区都市整備部公園緑地課課長補佐の平井努氏は「樹木がうっそうと生い茂り、暗く、汚いイメージで見られていた。とりわけ夜間は区民から敬遠された。閉鎖前と同じ状態に戻ってしまわないようにするにはどのように再生すべきか、意識せざるを得なかった」と明かす。

区がカフェレストランの導入を決めたのは、そうした思いからだ。日常はにぎわいの核になる施設を整備すれば、人の目を確保できる。災害時は帰宅困難者の炊き出し支援の拠点として機能させることも可能だ。延べ床面積約440㎡の公園施設を区が建設し、その一部にあたる約228㎡を民間事業者に使用させることを決めた。公園施設には区が管理する備蓄倉庫も併設する。

使用料は、固定分として月・坪当たり1万5000円、歩合分として月・坪当たり25万円を超える売り上げの10%という条件だ。区公園緑地課によれば、競合施設が多い立地環境の中で民間事業者の応募を促す狙いから、相場より低めに設定したという。

公募に応じた、民間事業者は5社。その中から区職員で構成する選定委員会が選んだのは、池袋を中心に飲食事業を展開するグリップセカンドである。公園施設の貸床部分を向こう10年間にわたって飲食店や都市公園法に基づく教養施設として使用する。