ICTの進歩や社会情勢の変化とともに、働き方を見直す動きが活発化している。単純なところでは、モバイルワークや在宅勤務、企業・組織の壁を超えた共同作業が、一般的になっていく。では、そのときオフィスはどんな姿になっているだろうか。あえてオフィスに出向くなら、出向く意味のある空間であることが望ましい。答えの一つは、人の創造性を引き出してくれるオフィス。人工知能や各種センサーの浸透とともに、そうした空間を実現されていくかもしれない。


「○○さん、何かコメントしたいことがありそうですが、いかがですか?」
「どなたか、違う見方をしている方はいませんか?」
「今のディスカッションの関連情報を見つけました。壁のディスプレイを見てください」

これは、未来のオフィスのワンシーンである。これだけなら、ごく普通の議事進行に見えるだろう。では、このファシリテーションをしているのが、オフィスにあるテーブルだったらどうだろうか。

(写真1)オフィス自体が会議の進行役を務めるようになるかもしれない
写真はイトーキが作成した動画「2016ITOKI Presentation Prototype」から引用

会議室内にはマイクやカメラが埋め込まれ、ディスカッションの内容をモニタリング。共有している資料などを含め、議事内容は自動的に記録される。人工知能(AI)がその内容を分析し、例えば議論が煮詰まっていたり、あるメンバーがコメントを躊躇していたりといった様子がうかがえたら、テーブルに埋め込まれたディスプレイに、コメントを促すメッセージを表示する。

つまり、各種のセンサー類とAIを駆使することで、会議室そのものが書記やファシリテーターの役割を果たすわけだ。議題に関連する情報を自動検索して、関連情報を壁面のディスプレイに表示するなど、ディスカッションを促す材料を提供する役割も果たす。IoT(Internet of Things)やAI、ビッグデータといった先端技術を活用した、未来志向のオフィスだ。

サイバーとフィジカルをつなげる

こうした未来のオフィスをプロデュースしようとしている企業の一つに、オフィス家具大手のイトーキがある。同社が研究開発を進めているのが「アサッテのオフィス」だ。将来のオフィスのあり方、あるべき姿を想定し、これからのオフィス像を描いている。以下で、未来のオフィスの一例として見ていこう。

もともとイトーキは、オフィス家具だけでなく、オフィス空間そのものやワークスタイルのデザインを手掛け、事業展開してきた。そうした空間プロデュースの一環として、2014年に未来のオフィスロードマップを描き、プロトタイプづくりを始めた。基本コンセプトは、「人の創造性を引き出す空間」である。

モバイル環境が充実するとともに、働き方改革が一つのムーブメントになっている中で、在宅勤務、コワーキングスペースでの作業など、遠隔での業務遂行は次第に日常的なシーンになっていく。そうなると、オフィスに人が集まってくるようにするには、なんらかの動機付けが必要になる。そこでイトーキでは、「オフィスはワーク・パートナーになる」というビジョンを掲げ、そこに行ったほうが作業効率が上がるようなオフィス像を考案した。

未来のオフィスのイメージづくりは、今後の技術のロードマップからのバックキャストに基づいた。技術動向を考えると、IoTやAIが浸透していくことは間違いない。これらを活用し、様々なデータがあるサイバー環境と、フェース・ツー・フェースでディスカッションする物理的な環境を融合させれば、人の創造性を引き出す空間を実現できるはず。現状のようにスマートデバイスやPCを立ち上げて操作しなくても、オフィスが考え、業務のスムーズな遂行を支援してくれる。そんな環境を目指した。