私たちの生活に忍び寄る世界的な食糧不足。そんななかでも、みんなが楽しみながら、健康を保てる食生活を実現したい――。そんな夢を掲げて、食のプラットフォーム改革に挑もうというベンチャー企業がある。大切なのは、多様な食の考え方と、身体にやさしく、安全な食を実現できる多様な食材や加工技術を受け入れ、自由に選び、楽しめる社会にしていくこと。それを事業として推進していこうというSEE THE SUN(シーザサン)の金丸美樹社長に、その思いを聞いた。


――まず、貴社の事業について教えてください。


金丸 一言で表現すると、「食のプラットフォーム再構築」に向けた商品/サービスの研究、企画および販売です。そうした事業を手掛けようとしている人たちの支援や、ケータリングなどのメニュー提案も請け負います。


――食のプラットフォームですか。


金丸 はい。加工食品や代替食品、飲料、その食材や原材料、食の場づくりに関連するモノ、メニューなど、私たちの食生活を支えるもの、構成するものの企画や研究を幅広く手掛けます。

元々、食は、気候や自然環境、土地柄、宗教、そして時代によって考え方が違っていて、ものすごく多様性があります。最近の健康食ブームのような人々の気持ちや趣味の変化の影響も受けます。そんな中で、みんなが健康でいられて、みんながおいしく食事をとれる、加えて地球にもやさしい、そんな食文化を醸成していきたい。そう考えています。

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SEE THE SUNの金丸 美樹社長

今の「食」に関する意識を変えたい


――壮大ですね。加工食品や代替食品というと、具体的にはどのようなものですか?


金丸 いまのところ、力を入れているものの一つは大豆由来の疑似肉、「ZEN MEAT」です。チーズのような豆乳発酵食品「SOY CHEESE」や、カカオの香りがするカカオニブティーもあります。それから、ZEN MEATを使ったレトルトカレーなど、加工食品も販売しています。

一部の商品は小麦粉や卵、乳も使わないようにして作ってあり、それらのアレルギーを気にせずに召し上がっていただけます。アレルギーを懸念している場合はもちろん、マクロビオティックのように健康を意識した食事法を好む方やグルテンフリーを好まれる方が増えていますが、そういった方でも大丈夫な商品を開発しています。また、ZEN MEATはベジタリアンの方でも問題ないだけでなく、畜産肉に比べて食卓に届くまでに使用する水資源の量が少なくて済むため、環境負荷も低いというやさしさがあります。世界人口増によって不安視される世界食糧でのタンパク質不足の解決にもつながります。そうした食にまつわる様々なテーマに向き合いながら、できるだけたくさんの人がストレスなく、楽しんで過ごせる食生活を目指しています。


――大豆由来など代替食品を手掛ける企業はほかにもあります。なぜ、そういった食品を手がけるビジネスを始めたのでしょう?


金丸 私たちは大豆由来の代替食品だけを提供したいわけではありません。特定の技術や素材を前提とした商品を提供するというよりも、私たちの生活になくてはならない「食」について、人々の意識を変え、ライフスタイルを変えていくこと、提案していくことが狙いです。そのために、“Healthy Lifestyle in Union”を創造していくつもりです。

世界は食糧危機に直面しています。日本にいる方々の多くは、日頃意識することはほとんどないと思いますが、世界、特に一部の新興国では深刻な課題です。しかも、人口はまだまだ増え、2050年には今よりも15億人ほど多い90億人まで増えます。その人々の食を支えるには、食材や食文化、あるいは生産方法などを見直していく必要があります。その新しい食材・食文化を受け入れる、いわゆる受容性を高めていくことも大切です。

一方で、食生活は次第に進化しています。近年は、人々の健康意識が高まり、ビーガン、マクロビオティック、スローフードなど、新しい考え方と食事法が生まれました。最近注目されている糖質制限ダイエットもその一つでしょう。ただ、人々の食生活を見ていて、実はそうした食事法にちょっとした違和感を抱くようになりました。それが意識を変えたいと考えた根本的なところです。


――どのような違和感を抱いているのですか?


金丸 食材や食事法に何を選ぶかは、人々の好みによります。例えば体重をコントロールしたい場合にカロリーを抑えたり、糖質・脂質を控えたり。ビーガンやマクロビ、スローフードなども同じです。それぞれに狙いや思想があって、それぞれ共感できるものを選んでいくわけです。

何を選ぶか、それを自分の食生活にどのように取り入れるか。自分が納得して自分に合うものを選んでいれば、何も問題はありません。ところが世の中では、必ずしもその通りにはなっていません。例えば、一つの食事法を選ぶと、それ以外のものを食べてしまうことが罪であるかのようにストイックに貫いたり、場合によっては、それを他人にも強要したり、自分が選んだもの以外の食事法を批判したりといったことさえ起こります。

まじめに取り組むことは悪いことではありませんが、やり過ぎは逆効果になることもあります。思想を追求することで、必要な栄養素やカロリーを摂取できなくなるケースは珍しくありません。突き詰めるあまり、精神的に追い込まれてしまう可能性もあります。これでは、楽しく健康な生活を支えるためのものであるはずの食が、逆に人の健康を損ね、おいしさを損ね、楽しさを損ねることにつながりかねません。

これ、何かおかしいと思いませんか。本来は、健康な身体をつくり、楽しい時間を過ごすための食が、まったく逆の事態を生み出すことがある。さきほども言いましたが、食は元々、人種や民族、地域、気候、思想などによって多様なものです。それを受け入れて、その中で個々のスタイルや好み、状況に合わせて食を選んでいけばいいはずです。一つに固執したり、他人にそれを強要したりするものではありません。

ですからSEE THE SUNでは、グルテンフリー、アレルギーケア、ビーガンなどに配慮した食材を使ったメニューを提案し、配慮が必要な方もそうでない方も一緒に楽しんで食べられる食事や場を作りたいと考えています。「ユニバーサルフード」ですね。

普通の食事でも、和食、中華、韓国、イタリアン、フレンチなど選択肢が広いほうが食を楽しめますよね。そうやって、人種や思想、地域の壁を越えた「おいしい」コミュニケーションを活発化させたい。一つの考え方にこだわるのではなく、こうした「おいしい」コミュニケーションを楽しむ環境こそが、人の健康を後押してくれるのではないかと思っています。